233話目
別作品にも、誤字脱字報告もありがとうございます(。>﹏<。)
やらなきゃやらなきゃと思いながら放置してたので、助かっておりますm(_ _)m
軽く死亡フラグが建ちそうな会話の後も主様は納得してくれてなかったようで、俺をトイレの時以外離そうとはせずぴたりとくっついたまま夕ご飯を食べ終えた。
そして、その状態のままお風呂の時間となり、服を脱ぐ時すら主様の腕の中から出してもらえなかった。
「だから、聖獣の森に帰りたい訳じゃなくて、様子が気になるからちょっと里帰りみたいなことをしたかっただけだよ」
浴槽の中で主様の足を跨ぐようにして向き合って、何度も繰り返した言葉をまた同じように紡ぐ。
「……本当に?」
疑わしげに見てくる主様に、へらっと笑いながらその首に腕を回してちょっとだけ大胆に抱き着いてみる。
「本当だよ。……主様は俺が帰って来たら嫌なのか?」
ここでヒロインちゃんなら、あざと可愛く潤んだ目で上目遣い……とか必殺技が出るんだろうけど、俺には無理なのでじっと見つめるだけに留めておく。
「嫌ではありません」
そう言いながらも、主様はまだ不服そうなぽやぽやで俺をじっと見つめ返して、瞬きもしない。
主様の美しさもあって、そうやって瞬きとせずじっと見つめられると精巧な人形と見つめ合っている気分になってしまい、少し落ち着かない。
しばらく見つめ合ったが、主様は本当に瞬き一つしないので、俺はやっと思いついたお互い譲歩して一番の解決になるであろう、思いつけば至極単純な解決策を口にする。
「……そんなに心配ならさ、主様もついてくればいいだろ」
主様は面倒がって来てくれないだろうなぁと思ったが、これが俺の思いつく精一杯だ。
「ついていっても、いいんですか?」
だが、予想外に主様から出て来たのは前向きな台詞で、明らかに嬉しそうな表情で先程までよりぽやぽやが増している。
え? これって最初から「主様、連れてってー」っておねだりするのが正解だったぽいってことか?
ま、今さら言っても仕方ないか。
「主様が連れてってくれるなら、俺は助かるし、主様と一緒に行けるなら嬉しい……」
のぼせそうだと思いながら、主様の首に腕を回してぎゅっとしがみついて素直な気持ちを吐露すると、よく出来ましたと言わんばかりの優しい眼差しで見つめられて恥ずかしくなる。
主様の優しい眼差しで余計にのぼせそうになった俺がはふと熱のこもった吐息を洩らすと、それに気付いた主様は俺を抱えて浴槽から立ち上がってくれる。
おかげでのぼせる直前でお湯の中から出られた俺は、脱衣所で待っていたプリュイによって拭き上げられて流れで服を着せてもらい、ほかほかのまま主様の腕の中へ返却される。
「へへ、今日も寒いから俺が湯たんぽだな」
「はい」
寒いとこの言い訳が出来て堂々と主様と寝られるので、少しでも寒い日が続くと嬉しい。
寒がりの主様も、お風呂上がりでほかほかな俺に大満足なのか相変わらずぽやぽや増量で微笑んでくれているから、今日も安眠出来そうだ。
●
「う……なんか、今日はやたら冷えるな……」
今日もバッチリ目覚めよく……布団から出たまでは良かったが、思いがけず肌を刺した外気の温度に俺は思わず首を竦めて出て来たばかりの主様の腕の中へ戻ってしまった。
そのまま主様が寝てるのを良いことに、しばらくうりうりと胸元へ額を寄せて温かい腕の中で甘えてから、気合を入れて布団から出る。
で、しばらく瞬きを繰り返す数度。首を傾げながら辺りを見回してみる。
何故か先程感じた肌を刺すような冷気を全くという程感じないのだ。
「あれ? もしかして、俺寝惚けてた?」
そういえばと、この家は主様の結界で守られていて、屋内の温度も主様の魔法で快適に保たれているのを今さらながら思い出して、俺はバツの悪さに苦笑いを浮かべながら頬を掻く。
前世の真冬の寒い部屋の記憶が蘇り、寝惚けていたせいもあってあの刺すような寒さを感じさせたんだろう。
人間は思い込みで、焼けてもない石で火傷とか出来る生き物だからな。
俺って結構頭いいーとか寝起きな思考で自画自賛しているとちょうどプリュイが来たので、ほんのり人肌より温かいプリュイに埋まって洗面所へ向かう。
プリュイは来たついでに部屋の掃除もしてくれるつもりなのか、体の一部をまだ主様が寝ている俺の部屋の中へと残したようだ。
その一部の方で主様へ何かしら声をかけたようだが、プリュイに埋まって移動していた俺には聞こえなかった。
たぶん朝の挨拶と、掃除するという報告だろう。
「寒イとジルがくっツイてクレルからトいっテ、冷やシ過ギルとジルは凍エてしまいマス」
俺がいなくなった部屋で、魔法人形による創造主へのそんな指導があったなんて、洗面所へ向かった俺は当然知る由もなかった。
●
朝食を終えて、書類仕事をする主様の膝上でまったりとしていた俺は、窓の外をちらつき始めた白いひらひらに気付いてバッと身を起こす。
そのまま主様の膝から降りようとしたのだが、主様は書類から目を離さず、ついでに俺の腰から手も離さなかったので、俺は主様の膝から降りられず恨めしげに主様を見上げる。
「主様、俺雪見たい。あと、雪で遊びたい」
「外は寒いです」
猫の子でも撫でるように俺の頭を撫でながら、主様が書類から目を離さずそう答える。
過保護だなぁと思いながら、俺は本棚の上で主様を警戒しているテーミアスを見て、思いついたことを口にする。
「テーミアスを懐に入れておけば温かいし、ちゃんと着込むから大丈夫だよ! 森ではもっと薄着だったし……」
「ぢゅっ!」
突然俺に話を振られる形になったテーミアスだが、相変わらず男前に一声鳴いて任せておけと答えてくれたので、俺はそれも踏まえてじっと主様を見る。
「…………今行ってもまだ全然積もってませんよ?」
しばらく無言になった後、主様から返ってきたのは至極真っ当な指摘で、俺は納得すると同時に肩透かしを食らった気分で主様の膝上で丸くなる。
「そっか……そうだよなぁ……」
森でだってそこまで急速に雪は積もらなかった。
いくらファンタジーな異世界でも、そこまで短時間では積もらないよな。
「テーミアス……雪積もったら……あそぼ……」
誰が悪い訳でもないが、童心にかえって雪遊びを楽しみにしていた幼児な部分の俺が全力で拗ねたので、主様の膝上で丸くなったままふて寝することにした。
●
「……コ、ロコ、ロコ」
思いがけず熟睡してしまったらしい俺は、主様の呼ぶ声に丸めていた体を伸ばしながら起き上がる。
主様が支えていてくれるのがわかってたので、膝上でも安心して伸びられた。
「ごめん……爆睡してた。そろそろお昼?」
ぐでんと伸びていると、微かに笑い声を洩らした主様が俺の脇の下へ手を差し込んで来て、軽々と体を持ち上げられる。
「はい」
主様が目線を合わせて頷いたのを確認して、俺は抱きかかえられながらへらっと笑って昼ご飯を何にしようか考える。
「寒いから、ちゅう……餡かけ丼にしよっかな」
こういう寒い日には、とろみのある熱々な食べ物が食べたくなるよなぁ。
主様もプリュイも好き嫌いはなくてたくさん食べるし、俺の素人料理でも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある。
「ちゅう……?」
主様は俺の言いかけたメニュー名を反芻すると顔を近づけてきて、何故か掠めるように唇を触れ合わせて満足げにぽやぽやしている。
「いや……まぁ、いいや……ありがと?」
たぶん俺の言いかけたメニュー名を「ちゅーしてぇ」的なおねだりだと思ったんだろう。
疑問形になりながらのお礼を口にして、俺は主様に抱えられたままキッチンへと向かう。
キッチンへ向かう道すがら、庭が見える廊下を通る時、俺はどれぐらい雪が積もったか庭の方を見て、しばらく思考が停止する。
「……え」
それもそのはず。窓の外に広がっていたのは、雪国も真っ青な雪景色だ。
いくら大雪が降っていたとしても、あの仮眠程度の時間でここまで積もるだろうか。
庭木の埋まり具合からすると、雪の深さは俺の首辺りまでありそうだ。
「え? ええ?」
きょろきょろと庭を見渡した俺は、さらなる異変に気付く。
庭一面を覆うよう綺麗に積もっている雪だったが、ある程度の所で突然少なくなっていて、まるで何かでこの庭にだけ雪をぶち撒けたような不可思議さがあるのだ。
そこまで考えて、俺はそんな事象を引き起こせそうな相手に思い至り、俺を抱いてくれているその相手へ視線を移す。
そこにあったのは見事なドヤッとしたぽやぽや顔で。
俺はほんの少しだけ脱力感を覚えながらも、それ以上に感じた嬉しさからへらっと笑って主様へお礼を伝えるのだった。
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