226話目
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ロック鳥……うん、ロック鳥なんです、これも。
量的に夕暮れ前に終わるか心配だったが、動物達が張り切ってくれた上、アシュレーお姉さんも採集の手伝いをしてくれたので予定より早く採集は進み──、
「えぇと、これで植物系は全部揃ってますよね?」
「ちょっと待って……えぇ、これで全部ね。さすがジルちゃんね」
「動物達とアシュレーお姉さんが手伝ってくれたからですよ」
採集した品を確認して、アシュレーお姉さんへへらっと笑いかけると、アシュレーお姉さんは困ったような笑顔で背後を振り返る。
「──あとは、この子に尾羽根をもらえば終わりね」
アシュレーお姉さんがそう言って示したのは、動物達と一緒に採集した植物を確認している俺達を眺めている巨大な白い鳥──ロック鳥だ。
森のくまさんの歌詞よろしく、歩いていたら出会った、とかではなく、採集の途中姿を消していたテーミアスがドヤ顔して連れてきたのだ。
そしてロック鳥は、大きい体を何とか縮こめてどてどてと──歩いてきた。
別にダチョウとかドードーみたいな体型な訳ではなく、猛禽類系なシュッとした体型で、ただ飛ばずに歩いてきたのだ。
まぁ、鳥は飛ぶのに大変なエネルギーを使うので、実は歩く方が……みたいな話は前世の某ようつべさんで見た動画のコメントで見た気がする。
「歩くロック鳥……」
アシュレーお姉さんが隣で衝撃を受けてたので、異世界ではかなり稀な光景みたいだけど。
確かにこの巨体だと、襲われても即座に飛び上がれないだろうから野生では危険だよな。
「くぁ」
この呑気な顔した巨鳥を襲う生き物がこの森にいるのかは別として。
テーミアスに呼ばれてのこのこやって来てしまうような呑気なロック鳥は、もふっとしてその場に待機して俺達の採集が終わるのを待っていてくれたのだ。
「という訳で、羽根を一本もらえるか? 我儘聞いてもらえるなら、尾羽根で」
どんな訳だ? という突っ込みはロック鳥からはなく、代わりに「尾羽根一本で良いのか」というありがたい答えが返ってきた。
「そりゃ、尾羽根貰えると嬉しいけど、抜くと痛かったり、飛ぶのに支障出たりはしないのか?」
「くぁくぁ」
「ないのか……でもなぁ……」
痛くないし支障ないと即答されても俺が遠慮してると、焦れたらしく男前にブチッと嘴で自ら尾羽根を抜いて、ぐいぐい俺へ押しつけてくる。
「男前だなぁ……女の子だけど。真っ白くて綺麗な羽根をありがとう」
お礼代わりに本人(鳥)が掻きにくい箇所を、アシュレーお姉さんに手伝ってもらってカリカリと掻いてやると、気持ち良さそうにしてたので良かった。
けど、その際に掻いてやって抜けた羽根まで貰ってしまったので、結局お礼にならなかった気がする。
「くぁ〜」
またねぇと呑気な鳴き声を残して、ロック鳥は来た時と同様にどてどてと歩いて森の奥へと消えていった。
最後まで颯爽と飛ぶ姿は見れなかったのは、ちょっと残念だったが、アシュレーお姉さんの、
「ロック鳥の羽ばたきって、かなり強力なのよ?」
との言葉から、吹き飛ばされることほぼ確定な俺や小動物達を慮ってしてくれたんだろうと悟って、気遣いの出来る良い女なロック鳥の去った方へ頭を下げる。
「ぢゅ」
そして、何故テーミアスは自分の女みたいな顔をして「いい女だろ」と言ってるのか。
さらにそしてだけど、テーミアスは今日も俺についてくる気らしい。
彼女らしきテーミアスと何か会話してたから、このままお別れだろうと少し寂しく思いながら帰る準備してたら、慌てて俺の肩へと戻って来た。
「ぴゃあ! ぢゅーっ!」
なんで置いてこうとしてんだよと前足で耳を引っ張って抗議される俺を、アシュレーお姉さんが微笑ましげに見ている。
「ちょうど良かったわね」
アシュレーお姉さんの笑い声混じりの声で、俺は最後に残っていた依頼の件を思い出して、テーミアスへ『お願い』をするためにナッツを差し出したのだった。
●
「ただいま戻りましたー」
笑顔で挨拶をしながらアシュレーお姉さんと手を繋いで冒険者ギルドへ入ると、何故か中にいた人達の視線がバッと俺へと集中する。
これが初冒険者ギルドなら「テンプレきたー!」となるところだが、もちろん初めてな訳はなく、こちらを見ているのも顔見知りが多い。
「アシュレーお姉さん、相変わらず人気者ですね?」
隣にいる麗人に丸投げしてみたが、向けられている視線は明らかに俺の方を見ている気がする。
「……ジルちゃん、なにかしたのかしら?」
「アシュレーお姉さんと採集しかしてないです」
困ったように微笑むアシュレーお姉さんに、握り拳を作って無実だとアピールしていると、ネペンテスさんがカウンター内から手招きをしている。
すでに和解は済ませてたので、警戒することなくネペンテスさんの元へ近づくと、
「これに見覚えは?」
と採集依頼書をカウンターに乗せて見せ……てくれようとしたようだ。
「あら。これ、ジルちゃんがさっき持っていた依頼書の控えね」
「え?」
ぴょこぴょこと跳ねてカウンターの上を覗き込もうとしていると、アシュレーお姉さんがくすくすと笑いながら抱き上げてくれる。
「あー、確かに、俺が受けた採集依頼の一つですね」
「……そうきたかぁ」
俺が頷いたのを確認すると、そう言ってネペンテスさんは頭を抱えて天を仰いでしまった。
「ネペンテスさん?」
「あたしが悪かったのよね。油断してカウンターに置きっぱなしにしてたから、あの子……いえ、連れていた男達よね、きっと」
天を仰いでブツブツと言い出したネペンテスさんを、アシュレーお姉さんが可哀想な子を見るような眼差しで見つめている。
「……何かあったのかしら?」
「奥でお話させてもらっても? 納品もそこでしてもらうんで」
ネペンテスさんはハッとした表情になると、俺とアシュレーお姉さんを奥へと誘う。
「行きましょうか、ジルちゃん」
「はい」
特に断る理由もなかったので、俺とアシュレーお姉さんは頷き合い……俺はアシュレーお姉さんに抱き上げられたまま、冒険者ギルドの奥へと足を進める。
ネペンテスさんに案内されて通されたのは、そこそこの広さで長机の並べられた会議室のような部屋だ。
初心者講習で座学とかもあるらしいから、ここで受けるのかもしれない。
物珍しさからきょろきょろとしていると、先客がこちらを睨みつけていることに気付く。
目が合ったのでへらっと笑いかけると、ギロッと睨み返されて何かを言おうとしたようだが、反応はそこで止まってしまう。
まるで怖いもので見たように固まったのだ。
まさか俺ってことはないだろうし、ネペンテスさんの可愛らしい睨みではそこまで迫力ないだろうし、じゃあなんだろうと俺を抱いているアシュレーお姉さんを振り返ると──般若がいた。
「……あら、ジルちゃん、何かしら?」
俺が見てることに気付いたのか、般若だったアシュレーお姉さんの表情はきゅるんっといつもの優しい笑顔に変わる。
あまりの変わり身の早さに、俺が先程見たのは幻覚かと思ったほどだが、ちらりと先客であるお兄さんに目を移すと……。
お兄さんは未だに固まったままガクブル進行形なんで、どうやら幻覚ではなかったらしい。
さすがアシュレーお姉さん、A級冒険者は伊達じゃないなぁと感心しながらも、見覚えのある気がするガクブルお兄さんを何処で見たのか、俺は一人悩んでいたのだが、それは次のネペンテスさんの一言で解決してしまう。
「すみません! あたしがきちんと見ていなかったせいで、この人達、スリジエ用の採集依頼をジルヴァラくんの分へ混ぜてしまったようで……」
「あー、あの時の!」
思い出せてスッキリした俺は、ネペンテスさんが言った内容を数秒遅れて理解して、瞬きを繰り返すことになった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
シマエナガか! ってぐらいに、ぼふっとしてジルヴァラと小動物の採集風景を眺めてたりすると萌えますよね(え)
ジルヴァラ幼年編、いつ終わって少年となり、青年となれるのか……。
幼年編が楽しすぎて進まない(笑)
どうせなら学園にも通わせてあげたいですが、某あの方が駄々をこねる未来しか見えない←
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