表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/399

幕の外4

本日都合により、2話投稿です。こちらは2話目です。どちらから先に読んでも大丈夫ですが、どちらを先に読むかで「あー」の感情が変わると思います←


タイトルからわかりますが、白いあの子の話です。


いい感じに熟成されてます←

「なんでストーリー通り行かないの? 確かに本編より少し前だけど、ほとんどのフラグは回収出来てるのに……」

 学園からの帰り道、自宅へは帰らず秘密基地代わりにしているエノテラの家へ来たあたしは、昼間の出来事を思い出して、もう! と地団駄を踏みながらブツブツと呟く。

 口に出すと色々と整理が出来るから、ついやってしまうが気をつけないと。

「スリジエ、大丈夫か?」

 エノテラは私にべた惚れだから心配そうな表情で話しかけてくるけど、これがグロゼイユだったら小馬鹿にされていたと思う。

 グロゼイユはフラグの立て方が少ないから、ゲーム本編みたいにあたしへでろでろに甘くはない。

 それでもあたしには特別優しいから、たぶんもう少しフラグ立てて、あたしがもう少し大きくなれば関係は変わると思う。

 今はそれより他の攻略対象者だ。

 爽やか系なオズワルドには未だに会えない。キーパーソンである町医者も見つからないし、正直手詰まりかもしれない。

 王子とは面識が出来たけど、何故か攻略対象者である第二王子のグラことグラナーダではなく、どのルートでも悪役となる第一王子なのは何でだろう。

 その第一王子を足がかりに会おうともしたけれど、腹黒ヤンデレ系な片鱗なのか警戒心が強く会ってもくれない。

 でも、あたしには名案があるのだ。グラは冒険者好きだから、あたしがもう少し冒険者としての名声を上げれば、グラの方から我慢しきれず声をかけてくるはずだ。

 で、結局エノテラとグロゼイユ以外で会えたのは、俺様系なナハトとその兄であるクーデレなニクス。

 その二人にはきちんとフラグを立てる行動をしたのに、その後のアクションはない。

 今日の昼間だって、きちんとナハトへ忠告してあげたのに!

 こちらも幼いからまだ駄目なのかもしれない。

 本命は『あの方』のつもりだけど、別に途中他へ声かけても問題無しよね。

 逆ハーエンドもゲームにはあったんだから。


 誰にも文句は言わせない。あたしは……。



「この世界の主人公(ヒロイン)なんだから」




 呟いて笑うあたしをエノテラが心配そうに見ていたが、大丈夫! と笑いかけたら誤魔化せてしまった。

 本当にエノテラはあたしのことが好き過ぎる。

 数日後、あたしは自身が気付いた事実に興奮しながら、自宅のベッドの上を転がり回っていた。

「やっと、わかったわ! 歪みの原因はあれだったのよ!」

 気付けたのは偶然……いえ、あたしのヒロイン力が惹き付けた幸運。

 学園でナハトと接触する機会を窺っていたら、たまたま聞こえてしまったのだ。



『ナハトにはニクス以外にもう一人の兄がいて騎士団に所属している。

 次期騎士団団長と噂される騎士の中の騎士で、ナハトの憧れの人物』



 それを聞いた瞬間、あたしも忘れていたゲームの設定を思い出したのだ。

 ゲームではあたしと出会う前に終わっていた出来事だったせいで、あたしの行動が早すぎて追い越してしまったのだ。

 それは、ゲームではモノローグだけなのにかなり重要な出来事。

「うふふふ。憧れの兄が犯罪者になって、お家が潰されればきっとあの二人はゲーム通りになって、あっという間にあたしの虜よ」

 父親である現騎士団長が生きているという誤差はあるけど、息子が無差別大量殺人なんてしたら、連帯責任で父親の首も飛ぶはず。

 そこまで行かなくても、社会的には死んだも当然。

 あたしはワクワクとしながら、日課だった冒険者ギルド通いも休んで、その事件が起きるのを待ち続けていたのに何も起きない。

 もちろん、ナハトとニクスの兄であるトルメンタの容姿性格行動パターンも調査済みで、事件を起こすであろう場所で待機していたのに何も起きない。

 焦れたあたしは、今回の件の黒幕であるゲース副団長に顔を隠して、接触してみた。

 顔を隠すのには、ゲーム内でなかなか便利な効果があるので一応手に入れておいたオペラ座の怪人めいたマスクが役立った。

 ゲーム内では気にせず着けられたけど、さすがに日常生活では着けられず捨てようか悩んでたけど、捨てなくて良かった。

 ゲームより小悪党で臆病だったゲースは、あたしがゲーム知識で本人しか知らないようなことを色々と告げると、神でも見るような目で見てきて、そのまま縋ってきそうだったから、占い師だと誤魔化した。

 貧相な中年男の相手なんてうっとうしいから立ち去ろうとしたあたしだったけど、ゲースの「私はこれからどうすれば! 私はどうしても騎士団長になりたいのだ!」という叫びを聞いて良い事を思いつく。

 黒幕が黒幕してくれないなら、あたしがけしかければ良いんだと。

 トルメンタは元々ゲームでは事件を起こして処刑されているんだから、心は全く痛まない。


 これは予定調和。


 全能の神とまではいかなくとも、狂った流れはあたしが戻してあげないと。

 そんな未来を思い描いてあたしは、トルメンタと接触するために待機していた路地裏で一人ひっそりと笑っていた。




 思いがけず絡まれたおかげでトルメンタと自然な接触を果たしたあたしは、怖がって抱きついたフリでトルメンタが腰に着けていた付与付きのアクセサリーをこっそり貰い、泣き落としでイヤーカフも貰う。

 攻略対象者の兄だけあってトルメンタはそこそこ格好良かったが、やはり攻略対象者である二人の弟達の方が華がある容姿だと思う。

 そんなことをあたしが考えてるとは全く思ってない様子で、トルメンタは可愛らしいあたしに見惚れていたみたい。

 これ以上接触して本格的に惚れられても困るので、あたしはちょっとだけ後ろ髪引かれている演技をしながらトルメンタを置き去りにして立ち去る。

 これで後はゲースが手配した魔法使いがトルメンタと接触して、トルメンタを魔法で操るだけだ。

 確実に処刑へという流れにするため、ゲースには魔法使いに依頼する時に『子供を優先的に狙うように』と言ってと付け加えておいた。

 別に具体的な目障りになっている子供がいて、その子供が殺されれば良いなんて思った訳じゃない。

 ただ子供なら抵抗も少ないだろうから確実に殺せるだろう。そう思っただけ。



 本当にそれだけ。



 でも、ゲースを通して、トルメンタは確実に魔法かかったという報告が上がってきたのに、いつまで経っても事件は起きない。

 無差別殺人に巻き込まれたら嫌だから、今日に限ってトルメンタの追跡をしなかったのが仇になった。

 気が小さいクセに大雑把なゲースは、あたしに聞くこともなく勝手に動いてしまい、自らの首を絞めてしまった。

 トルメンタが何も起こしていないのに、


『騎士団長の息子が街で暴れている』


だとか、


『気が狂ってたくさんの子供を殺めた』


だとか、



 挙げ句の果てには、それをわざわざ自分の部下に広めさせ、騎士団長の屋敷まで伝えに行かせてしまったらしい。

 もう怪しさ満点だ。

 疑ってくれと自ら言ってるようなものだとなんでわからないのか。

 まぁ、だからゲームでもラスボスではなく、その前の中ボス程度の扱いだったんだけど。

 あたしは早々にゲースに見切りをつけ、その関係を断ち切ってしまった。

 元々名前なんか名乗ってないし、素顔も見せていない。

 髪はゲースと会う時だけは染めてたから、性別ぐらいしかわからないはず。

 指示は全部口頭にしてたから、証拠になるような物も残していない。

 ゲースがこれからどうなるかは知らないけど、あたしが巻き込まれなければどうでも良い。

 便利に使える悪役がいなくなるのは残念だけど、まだゲーム内での悪役担当は何人かいるし、そっちを使えば大丈夫だろう。




 あたしは、ふふと笑い声を溢しながら、慣れ親しんだ言語で書いてあるノートから『ゲース』の名前を塗りつぶしておいた。

 誰にも読めないけど、念には念を入れないと。

 あたしって慎重派だから、ね。

 ゲースがどうなるか、ほんの少しだけ気にして過ごしていたある日、いつも使っている情報屋からとある情報が入ってくる。

 この情報屋には『幻日様の情報なら何でも買う』と前金を少し払い済なのもあるけど、あたしに好意を持ってくれてるのがバレバレで、幻日様の情報が入るとすぐに連絡をくれる。

 いつも大した情報じゃなかったから期待していなかったけど、今回のは大当たりだった。



『幻日様はやはり目立つ上におそろしく強いので、悪人からも煙たがられ怖れられている。

 倒すのはほぼ不可能と言われているので、こぞって弱点を探されている中、かなりの信憑性のある噂が流れている』



 これが今回の情報で、流れている噂があたしの胸を高鳴らせた。



「幻日様には溺愛している子供がいて、その子供の為なら何でもする、なんて……」



 自分で言ってドキドキしてきてしまい、あたしはそっと胸を押さえて周囲を見渡す。

 悪人達がこぞって幻日様の弱点を探していたのは、何としてでも幻日様を倒すためだろう。

 そして、今現在『溺愛している子供がいる』という情報が出回っているので、悪人達は血眼になってその子供を探している。



 理由は明白。



「ふふふ。その子供を捕まえて、幻日様への人質にしたいのよねぇ。そんなことしても、幻日様には敵わないってわからないなんて、可哀想よねぇ。幻日様なら子供を無傷で救い出して、犯人を消し去るぐらい簡単なのに」



 本当に可哀想。



 そう言いながらも、あたしの口元は、これから起こる楽しいことを想像して笑みの形に歪んでいく。




 あたしはその笑顔のまま、情報屋から聞いた『幻日様の溺愛する子供を探している』という男達のいる辺りへと突撃していく。

 そんな男達がいる場所がガラの良い場所であるはずもなく、あたしはあっという間に数人の男達に囲まれてしまった。



「おいおい、ここはお前みたいなお嬢ちゃんが来る所じゃ……」



「あれ? お兄さん達があたしを探してるって噂聞いたのに……」



 あたしが無邪気な子供を装って、笑顔のまま決まり文句のような男の台詞を遮ると、男達は目配せをし合ってニヤリと笑う。




「それはそれは、とても助かるなぁ」



「ちなみにどんな噂かなぁ」



 急に猫なで声になってニヤニヤ笑う男達の気持ち悪さを何とか我慢して、あたしはにっこりと笑って言い放ってやった。




「幻日様が溺愛してる子供を探してるって噂! それは、あたしのことよ?」




 こうして、あたしは騙されたフリをして、猫なで声の男達によってアジトへ運び込まれ、檻の中へ閉じ込められてしまった。






 予定通りに。





 これで幻日様の所へ脅迫状が届き、ぶち切れた幻日様があたしを迎えに来てくれて、ぎゅっと抱き締めてくれるはず。



 もしかしたら、キスの一つでもしてくれるかもしれない。



 思わず想像してしまった展開にくすくすと笑うあたしを、男達は「さすがあの野郎が可愛がるだけあるな」と誉めていて、あたしの笑みはさらに深くなるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


この子の頭には、捕まってひどい目に遭わされる、という考えはないのでしょう。

その前に、颯爽とヒーローが来て助けてくれる、または、あたしって強いし、と思ってそうですよねぇ。

見た目だけは可愛いから、ジルヴァラ以上に貞操の危機ありそうですが←


あ、私は主人公とお相手のラブラブ増す用途以外に、そういう無理矢理系アハンウフンは書きませんので!

そういうひどい目を期待してる方はすみません(。>﹏<。)

 

感想などなどありがとうございますm(_ _)m

反応いただけると嬉しいです(^^)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ