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22話目

ご注意ください。本日2話投稿の2話目です。


内容がもだもだなので、ストレス軽減のため、溜めて一気に投稿してますm(_ _)m


大人げない大人がいます。

「ここ、借りてるのか?」

 脇を持たれてそのまま荷物のように屋内へ運ばれ、やっと降ろされた先はソファとテーブルのみが置かれたシンプルな居間だ。

 落ち着いた色調の内装は高そうだが、花瓶とか絵画とか鹿の頭とか虎的な毛皮とか、定番ぽい飾りは全くない。

 人気はなさそうなのに、室内にはすでに明かりが灯されていて、あたたかい光で照らされている。

「買いました」

「へ? 主様の持ち家ってことか?」

 俺の問いに部屋並みにシンプルな答えが返ってきて、部屋を観察していた俺は暖炉へ火を点けてる主様の背中を見ながら、さらに問いを重ねる。

「ええ。宿屋では不便なので……」

「へえ」

 暖炉に火が点いたのか、俺を振り返ってぽやぽや頷く主様は、何処となく嫌そうな顔をしてたので、美人な有名人だから何か色々あったんだろうな、と幼児らしからぬ想像で察してしまい、それ以上追及せず室内へと視線を移す。

「家の中見てきてもいい?」

 俺は好奇心に勝てず、ワクワクして主様を仰ぎ見て尋ねたのだが、返ってきたのは言葉ではなく伸びて来た腕だ。

「主様?」

 また荷物のように運ばれた先は、今度はソファの上だ。暖炉の側なので暖かく、揺れる火を見ているとなんか落ち着く。

 ここでじっとしてろってことか、と大人しくしていると、ふかふかのソファと暖炉の暖かさにちょっとうとうとしかけた。

 俺が微睡みと戦っていると、俺の隣へ腰かけた主様からひょいと膝の上へ乗せられる。

 あまりに自然な動作だったので、戸惑う間もなく俺は主様の上に腰かける体勢になっていた。

「え? え?」

 俺がキョドって、え? と連呼してると、主様の手が俺の頬を包み込んで、両側からむぎゅと潰される。

「ふぁに?(なに?)」

 本気で潰されてる訳ではないので痛みはないが、とても喋りにくい。というか、主様が本気で力を込めたら俺の頭なんかミカンぐらい簡単にブシャッとかなりそうだ。

「話が途中です」

「にゃんにょ?(なんの?)」

 俺の顔をへちゃむくれにしたまま、主様はぽやぽや微笑んで、有無を言わせぬ口調で簡潔にそれだけを口にする。おかげで俺はなんの事かわからず、瞬きを繰り返す羽目になる。

「何故、ロコは私から離れようとしていたか、です」

「だっひぇ、みょくてぇきち、ちゅいた(だって、目的地、着いた)」

 まだ納得してなかったのか、と内心で驚きつつ、俺は一番の理由になりそうな事を口にする。伝わってるかは分からないが。

「つまり、ロコは王都に来たかったから、私と共に来たのですか?」

 内容自体はきちんと伝わったらしく、常と変わらぬぽやぽやでさらに尋ねてくる主様の瞳は暖炉の炎のせいか、宝石のような輝きの中に妙な揺らめきが見える。

「ちあうよ(違うよ)」

 頬が固定されてるため、ほとんど動かせない頭を何とか左右に振り、俺は頬を潰されたまま笑って見せる。笑顔には見えないだろうけど。

「ロコは、何故私と共に来たのですか?」

 やっと俺が喋りにくいことに気付いたのか、俺の頬を挟んでいた手から力が抜け、その手はほぼ触れてるだけとなった。

「俺が、主様と一緒に……いきたかったから。俺みたいな子供が、何言うんだって話だけど」

 少し考えて、改めて口から出て来たのは俺の嘘偽りのない素直な気持ちで、それでさらに気持ちが固まった気がし、俺はいつも通りへらっと笑って頬にある手に自らの小さな手を添えて主様を窺う。

「では、今さら私から離れようとするのは何故です?」

 駄々っ子から、今度はなぜなぜだってちゃんと化した主様に、俺はどう説明したらと、添えていた手を下ろして視線をさ迷わせる。最終的に主様を見ていられなくて、視線を外してしまう。

「離れたいと思った訳じゃない。でも、俺はもともと無理矢理ついてきただろ? ここに来て迷惑ばっかりかけちゃったから、さすがに自分で自分に呆れたというか、その上、冒険者登録には年齢制限で引っかかるしさぁ」

「それで私と離れようとする意味がわかりません」

「いや、さすがに迷惑だろ。多少同年代より丈夫なだけのガキを連れて依頼受けるとか。かと言って、大人しく留守番してますー、なんて俺嫌だし」

「私も嫌です」

「だろ? だから、せめて冒険者になって、一緒に依頼受けられるくらいに……」

「嫌です」

「わかったって。ちゃんと冒険者になって、主様に会いに来るから。そしたら、また一緒に連れていって……いや、今度は自力でついていくからさ」

「嫌です!」

 冗談めかせていても嘘偽りない俺の決意は、ヤ○モンと化した主様から飛び出した出会ってから初めての大声に遮られ、俺は思わず目を見張って外していた視線を主様へ戻す。

「主様?」

 俺を見下ろす主様の宝石のような瞳は、暖炉の炎が反射してるのかゆらゆらと輝いていて綺麗だが、ぽやぽやしてる表情は何処か不安げだ。

「ロコが私へ教えたんです。……人があたたかいということを」

 頬に触れていた主様の手がゆっくりと下がっていき、止まったのはやっと傷が塞がった脇腹辺りだ。

「ロコ。私が怖くなったんですか?」

 上着の裾から入って来た主様のひやりとした手が包帯越しに傷の辺りへ触れ、俺は反射的に逃げそうになった体を意識的に抑え首を横に振る。

「違う。違うんだって! 主様を怖いなんて思う訳ない! 俺は主様と一緒にいたいです! もー、これでいいだろ? 今さら本当は社交辞令だったとか言っても無効だからな?」

 心からの本音のはずだが、何故か言わされた感を感じながら、俺は喧嘩腰に言い放って素肌へ触れている主様の手から逃れようと身を捩り……ちょうど玄関から入って来たところらしいフシロ団長と目が合った。



「……」



「……」



 俺とフシロ団長。しばらくお互い無言で見つめ合った後、どかどかとわざとらしく足音を立てて近寄って来たフシロ団長により抱き上げられ、俺はやっと主様の手から逃れられた。

「くすぐったくて大笑いして傷口開くとこだったぜ。ありがとな、フシロ団長」

「くすぐ……いや、そうか……なら良かった」

 脱力した様子で笑ったフシロ団長の顎髭が頬に当たってくすぐったくて、結局俺はくすくす笑う羽目になる。大丈夫、傷口は開いてない。

「ロコ」

 くすくす笑っていると、拗ねたような声が俺を呼んだ後、主様の手が脇の下辺りに差し込まれる。が、俺を抱えたフシロ団長の腕も外れない。

「とりあえず、このままこいつといるつもりか?」

 顎髭で頬をじょりじょりさせながら、フシロ団長が俺の耳元へ顔を寄せ、声をひそめてこっそりと尋ねてくる。

「心配してくれてありがと。とりあえず、現状維持、みたいな? 足手まといにならないよう、鍛えようとは思ってる」

「なら、俺の屋敷へ来ればいい。剣の基礎なら、俺でも教えてやれるからな」

 そんな会話を小声で交わしてると、フシロ団長の顎髭がくすぐったいし、主様の手が徐々に力がこもってきて地味に痛い。

「フシロ団長、大丈夫だから。主様、もうくすぐらないでくれよ?」

 主様へそう声をかけて、フシロ団長から手を離してもらうとほぼ同時に、俺の体は荷物のように主様の腕の中へと渡る。

「そう言えば、フシロ団長、主様に用事だったんじゃないのか?」

 ぽやぽやごねる主様の腕からなんとか降ろしてもらい、俺は首を傾げてフシロ団長を見上げ、今さら過ぎる質問を口にする。

 俺が聞かなければ、主様はそのままスルーし続けそうだし。

「あー、そうだった。驚かせようかと思ったら、まさかジルヴァラが早速食われかけてると思わなくてな。で、面倒な知らせが一つと、良い知らせが一つある」

 なんか前半色々とモゴモゴ言ってから、フシロ団長はニヤリと笑って指を二本立てて見せる。

「えー、なんだ?」

 ドラマとかで見るやつだ、とちょっと興奮して見上げてると、フシロ団長は懐からやたらと分厚い横長の白い封筒を取り出して主様へ渡す。

 それを心底嫌そうなぽやぽや顔で受け取る主様。

「まずは面倒なお偉いさんからの楽しくないお茶会のお誘いだ。ご高名な幻日様からオーガ退治のお話を聞きたいらしい。お連れ様もどうぞ、とのことだ」

 お疲れ様……違うな、お連れ様か。って、俺のことだよな? どう考えても。何処から情報漏れたんだろ……って、主様目立つもんな。隠す気もゼロだし。 

「断っておいてください」

 そしてこっちは受ける気ゼロの即答だし。

「だが、ここで良い知らせが関係する」

 勿体ぶって話すフシロ団長、ワクワクしてる俺、どうでも良くなって俺を奥へ連れて行こうとする主様。

「ジルヴァラに関係することだぞ?」

「俺に?」

「ロコに?」

 俺とほぼ同時に主様からも反応がある。俺の名前覚えたのか? と突っ込むと傷口を抉るので止めておく。

 たぶん主様は俺の名前に興味がないというより、他人の話す内容に興味を持てないのだろう。

 そんなことは今はどうでも良くて。

「そうだ。実はあのあとすぐに冒険者ギルドへ顔を出して、ギルマスと話したんだがな、ちょうど少し前に制度が少し緩くなったらしい」

「制度が緩くなった?」

 そう言えば、立ち話って訳にもいかなそうな話なので、俺と主様は並んで長いソファへ、フシロ団長は一人がけのソファに座って話を続けていた。

 ちなみに位置関係はアルファベットのLだ。暖炉の前に楕円のテーブル、暖炉と向かい合うように俺達の座る二人がけソファ、Lの縦棒の位置にフシロ団長が座っている。

「あぁ、よくわからんが、十歳に満たない少女がギルドへ来て、自分を冒険者にしなさい、とごねまくり、私はとても優秀で素晴らしいんだから冒険者にしないと損する、と宣ったそうだ」

「……ちょっと仲良くしたくないタイプだな」

「その頭のおかしな少女が、どうロコに関係すると?」

 俺が濁した感想を、主様が忖度なしで言い切ってしまったが、フシロ団長は苦笑いして肩を竦めただけだ。もしかしたら、フシロ団長も主様と似たようなことを思ったのかも知れない。

「少女とジルヴァラは関係ないが、少女がごねまくったおかげで、それを面白がった若手有望株な冒険者が『自分が専属でパーティーを組んで責任を持つ』と宣言し、ギルドも特例として認めたそうだ。まぁ、その少女が貧乏ながらも貴族だったのも効いたのかも知れないが」

「つまり、そんな少女が特例として冒険者になれるなら、ロコも特例で冒険者になれるのではないか、という話ですか……」

 真剣な顔で話すフシロ団長と、ぽやぽや頷く主様の話を聞きながら、俺はフシロ団長の話に若干嫌な予感を覚え、一人で首を捻っていた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


まとめて書いたため、前書きの内容が次の話の前書きになってたりしたら、申し訳ありません。

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