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206話目

ほのぼの回。

「ありがとな。皆、怪我はないか?」



 ゴブリンを倒した後、動物達に他の面々を呼びに行ってもらった俺は、その場に残っていたウサギ達へ話しかける。

 後ろ足で立って前足をしゅたっと挙げているのは俺達を呼びに来てくれたウサギで、その背後でウサギらしからぬ雰囲気を漂わせているのが残ってゴブリンと対峙したウサギ達のリーダー格で、彼なりの大丈夫だというアピールなんだろう。

「ぢゅっ」

 テーミアスが良くやったと話しかけてるが、たぶんこのテーミアスは森の小さいもふもふ勢のまとめ役なんだろう。

 探す時もずっと俺の肩の上でナッツ食べてたし。

「ぴゃ」

 思わず肩の上のテーミアスを見つめてそんなことを考えていたら、照れるだろみたいな反応をされて、もふもふな尻尾で顔面を叩かれた。


 ……まとめ役だと思ったのは俺の気のせいかもしれない。


 俺がテーミアスと戯れていると、動物達に頼んで呼んできてもらった捜索別働隊のアーチェさん達と待機組のソーサラさん達がほぼ同時に到着する。

「ジルヴァラ! 怪我は……っ!?」

と、同時に俺は駆け寄って来たソーサラさんにしっかりと抱き締められる。

 前回その豊かな胸で窒息させられたが、それで力加減を覚えてくれたのか今回は窒息する心配は無さそうだ。

「俺よりググル誉めてやってくれよ。あー、でもその前に単独行動怒られるのか?」

 あんまり怒らないでやって欲しいなぁという気持ちを込めて、上目遣いでソーサラさんを窺い見ると何かダメージを食らわせてしまったぽい。

 かなりの子供好きなソーサラさんには、俺の上目遣いでも少しはダメージがあったらしい。

 口元を手で覆ったソーサラさんは、もごもごと何事か覆った手の平の下で何かを言ってるが、俺に聞き取れたのは「食べちゃいたいわ」ぐらいだ。

 ちょっと色んな意味の身の危険は感じるが、ソーサラさんは俺の嫌がることを本気でしないと思うので大人しく抱き締められたまま、仲直りをしている三人組の方を顔だけ動かして見ていると、ちょうどこちらを見たググルと目が合う。

 俺が日本人の性でへらっと笑いかけると、ググルは一瞬目を見張った後、困ったような笑顔を浮かべて口を大きく動かした。

 その口の動きは音こそなかったが『悪かった』と動いていて、俺はまたへらっと笑ってぶんぶんと首を横に振る。

 初対面は最悪だったけど、三人組と仲良くなれそうで嬉しい。

 少しイキがりたい年頃だっただけで根っこは素直でいいヤツなんだろう。

 ウサギ達からは『そいつ俺ら庇おうとしてた』という証言があるし。

 別働隊のピースも、かなり心配そうにググルを探していたと小鳥達が教えてくれた。

 パジもしっかりとソーサラさんを守りながら、ずっとググルを心配していたらしい。

 さっき通りすがりのモグラ(?)が教えてくれた。

 お礼を伝えた後、目見えてるんだ、と思わず失礼な突っ込みをしてしまったが、気にした様子もなくふっとニヒルな笑い方をして格好良く去っていった。



「──森の危険性はよーくわかったな?」


「「「はい!」」」



 ソーサラさんに抱き締められながら動物達とのやり取りを思い出してほっこりしているうちに、三人組へのお説教は終わったらしい。

 ソルドさんの締めの言葉と、揃った元気のいい良い子な返事が聞こえて来て、俺は慌てて「はい!」と遅れて返事をしておく。

「あら、ジルヴァラは良いのよ?」

「森の危険性はよくわかっているでしょう?」

 そんな俺に対してソーサラさんとアーチェさんが甘やかすような発言をしてきたので、俺はぶんぶんと首を横に振る。

 せっかく三人組と仲良くなれそうなのにここで俺が甘やかされてたら、反感を持たれてしまうだろう。

 というか、俺が向こうの立場だったら絶対ムカついてる。

「俺だって連帯責任だ。ググル止められなかったし」

「もう、ジルヴァラは真面目ね。じゃあ、罰として帰りはあたしに抱っこされて帰りましょ」

「それ、罰なのか?」

 人によってはご褒美だよな、と口から出そうになった言葉を飲み込んでおく。

「ソーサラがジルヴァラを抱っこしたいだけでしょう? でも体力は大丈夫ですか? いくらジルヴァラが軽くても、そこそこ距離がありますが……」

 アーチェさんが苦笑い混じりで突っ込むと、ソーサラさんはいい笑顔で腕をグッと曲げて力こぶを作る真似をして見せる。

「ジルヴァラをずっと抱っこするために、最近鍛え始めたのよ」

「そ、そうですか……」

 ソーサラさんの努力の方向が間違ってる気はするが、本人は楽しそうなので俺から特に言うことはない。

 アーチェさんもそう思ってるのか、苦笑いを浮かべて引きつり気味の相槌を打っている。

 ソルドさんの方はと言うと、すっかりキラキラとした尊敬の眼差しで見上げてくる三人組に色々話してあげているようだ。

 冒険者としての秘訣でも話してるのか、ソルドさんは声を潜めて三人組と顔を寄せ合って何かを話している。

 何話してるんだろと興味を惹かれた俺が耳を澄ましていると、足元にいたウサギ達がアピールを始める。

 自分達が聞き取った言葉を教えてくれるそうだ。

「んー、しょうかん……いいおんな……みわけかた?」

 ウサギ達の心遣いに遠慮なく甘えて、教えてもらった話の内容を反芻していると、アーチェさんから肩を掴まれる。

「ジルヴァラ……それは、ソルドが?」

「え? うん、ウサギ達が聞き取って教えてくれた……」

「そう、ですか。へぇ……」

 俺の答えを聞いたアーチェさんの目は徐々に据わっていき、良い笑顔を浮かべたかと思うとすたすたとソルドさんへと歩み寄り、思い切りその後頭部を張り倒した。

「わっ! なんだよ、アーチェ!」

「いたいけな子供達に、何を教えてるんでしょうか、あなたは」

「な、なんで、バレたんだ!?」

 叩かれた後頭部を押さえながらこちらを見たソルドさんに対して、ウサギ達は揃って後ろ足で立ってドヤ顔して見せている。

 うん、可愛い。

 ウサギと俺という取り合わせで、ソルドさんは俺がウサギから聞いた話を伝えたと気付いたのだろう。

「ウサギ……そうか、ジルヴァラだな、アーチェへ告げ口したのは……」

 本気で怒ってる訳ではないが怒ったような口調で怒る真似をするソルドさんに、俺もノリ良く怖がっておくことにする。

「ソルドさん怖い……」

 わざとらしく弱々しい声を出して、相変わらず俺を抱き締めたままだったソーサラさんの胸へと顔を埋めるようにして隠れてみる。

「ソルド! ジルヴァラをいじめないで!」

 ソーサラさんもノッてくれて……あ、なんかバチバチいってる? これヤバいかも?

 俺がそう思ってソーサラさんを止めるより、ソーサラさんの魔法の発動の方が早かった。



 つまりは──某ラブコメ漫画の主人公みたいな感じにビリビリなう。



 まぁ、ソルドさんだから、大丈夫だったぽい。

 しばらくしたら何事もなかったみたいに復活して、三人組の尊敬の眼差しを集めてた。

 で、またアーチェさんからちくちくちく言われてたけど、へらへら笑って後頭部を小突かれていた。

 三人組とはまた違う仲良しなソルドさんとアーチェさんをぼんやりと見ていたら、ソーサラさんからギュッと抱き締められる。

 何だろうとソーサラさんを見上げたら、真剣な顔でじっと見つめられて、

「ジルヴァラ、さっきソルドが言ってた事は覚えちゃ駄目よ? 特にあの方の前では絶対に言わないこと」

と、念押しされた。

 あの方って主様かなぁと思いながら、俺がコクリと頷くと、いい子いい子と頭を撫でられる。

「ジルヴァラに妙なことを吹き込んだなんて知られたら、ソルドはあの方に殺されかねませんからね」

 ソルドさんの後頭部を叩き終えたアーチェさんも戻り、そんな軽口を言いながら俺の頬へ軽く触れ……ようとして、肩の上にいたテーミアスの尻尾で払いのけられていた。

 アーチェさんがソルドさんの頭を叩くところを見たので、俺にも何かするのではないかと思って守ってくれたらしい。

「ぢゅっ!」

「……僕、何かしましたか?」

 クールな見た目に反して可愛い物が嫌いじゃないアーチェさんは、もふっと膨れて警戒態勢なテーミアスを見て困ったような顔で助けを求めるように俺を見て首を傾げている。

「ううん。ほらアーチェさん、さっきソルドさんの頭叩いてただろ? だから、俺の頭も叩くんじゃないかって心配してくれてるんだよ」

 俺がさっき内心で考えていたことを口に出して説明すると、アーチェさんはさらに困ったような顔になってしまう。

「僕はそんなに怖い顔をしているように見えるんでしょうか」

「アーチェさん、主様系というか綺麗な顔立ちだから、ちょっと警戒させちゃうのかも。……ほら、アーチェさんは俺を叩いたりしないから、な?」

 まだ警戒心バリバリのテーミアスに、懐柔のためのナッツを渡しながら話しかけると、やっと納得してくれたのか「ぢゅ」と念押しの一鳴きをしてアーチェさんを睨んでからナッツを食べ始める。

「あら、あの方は動物達に警戒させちゃうのかしら」

「んー、というか、ちょっと怖がられてる? 得体がしれないみたいで」

 主様と動物達とのある意味可愛らしいやり取りを思い出しながらくすくすの笑って答えたのだが、アーチェさんが浮かべたのは何とも言えない表情だ。

「あの方なら仕方ないですね」

 アーチェさんの苦笑い混じりの呟きにつられて頷くソーサラさんも、何とも言えない表情で口を開く。

「それもそうね。あれだけの魔力だもの。敏感な動物達には恐ろしい生き物に見えるんだわ」

 結構可愛いんだけどなと思ったが、主様の可愛い所をあまり教えたくない狭量な俺が顔を出したため、俺はそれ以上何も言わず、へらっと笑って誤魔化しておいた。

いつもありがとうございますm(_ _)m



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