21話目
本日2話アップの1話目ですm(_ _)m
内容がもだもだ続くので、少しでもストレス軽減のため、書き溜めてました(ノ´∀`*)
スパッというか、お馬鹿というか、こう決めたらやっちまうぜな主人公。
対するは、初めての感情に振り回されてる駄々っ子です。何となくぽやぽや言い切れば、ロコは言う事聞いてくれると学習してきそうです。
「俺、本当の年齢はわかんない訳だし、十歳だって言い張れば……」
「無理でしょうね」
なかなかの妙案だと思った俺の提案は、微笑んだドリドル先生から即却下されてしまった。
ここに来てまさかの年齢制限とは……。
「騎士見習いなら、とくに年齢制限はないぞ?」
しゅんとした俺を見て、フシロ団長はフォローのつもりなのか本気の勧誘なのかわからない誘いをかけてくるが、主様が無言でぽやぽやして断ってくれているようだ。
「騎士見習いになれば、オズワルドとずっと一緒にいれますよ」
「オズ兄と?」
今度はドリドル先生が別の切り口から誘いをかけてくる。
なんかそれはヒロインちゃんとの遭遇率高そうで嫌だな、と思って呟いただけだったのだが、俺の腰を掴んだままだった主様の手に力がこもる。
「俺は自由に動ける冒険者になって、主様やソルドさん達みたいにあちこち旅してみたいんだ。だから、騎士になる気はないよ」
「そうか。ま、ジルヴァラならいつでも歓迎するぞ」
ポンポンと頭を撫でられるが、俺はせっかくファンタジーな世界に産まれ直したんだから、この世界をもっと自由に旅してみたい。──許されるなら、主様とずっと。
別れの時が近いせいか、少し感傷的になってるかもしれない。
今の状況は、それ以前の問題だが……。
●
「通行証を。……おや、お帰りなさい、フシロ団長。お早いお帰りでしたね」
俺の年齢が冒険者に登録出来る年齢に達していなくとも馬車は進んでいき、今は検問を受けて街の中へ入ろうとしてるところなのだが、門番をしている兵士さんはフシロ団長の顔を知っていたようだ。なんて当たり前か。
こちらは一般用ではなく貴族とか騎士団とか用の門らしいし。
おかげでちょっと行列してる隣とは違い、並ぶことも待ち時間もなかった。
フルメタルアーマー……じゃなくて、フルなんとかアーマー? だっけ。よく飾ってある勝手に動き出しそうな鎧を着込んだ兵士の姿が気になって、こっそり窓から覗いていた俺は兵士さんとバッチリ目が合ってしまった。
「子供……ですか?」
「ちょっと保護してるだけだ」
チラチラと俺を見て、そんな感じの会話をしてるっぽいのでへらっと笑って手を振り、兵士さんへ愛想を振り撒いておく。
子供好きな人だったのか、怪訝そうだった顔が笑顔になったので、愛想振り撒きには成功したようだ。
「こら、ジルヴァラ、あまり目立つようなことはしてはいけませんよ?」
張り付いていた窓から引き剥がされ、俺は座席の真ん中辺りに座らされる。
話が終わったのかフシロ団長が戻って来て、馬車は門をくぐり抜けて街の中を進んで行く。
「……俺でも出来る仕事とかあるかな」
「住む所が決まらなければうちへ来ればいい。仕事は……そうだな、うちの妻の手伝いでもするか? ちょうどジルヴァラより一つ上の息子もいて、遊び相手には困らないぞ?」
出鼻を挫かれまくって、半ば拗ねたような気分で足を揺らしてると、肩を揺らして笑ったフシロ団長がそんな提案をしてくれる。
フシロ団長もナチュラルに俺と主様がここで別れるって思ってるんだな、と他人事のように思いながら、フシロ団長の提案について考える。
騎士見習いではなく、手伝いというか居候させてもらって、十歳になったら冒険者登録して独り立ちして色々返していくとか、良い考えかもしれない。
フシロ団長の側にいれば、他の攻略対象者の情報とか……いや、そもそも俺、主様とオズ兄以外の攻略対象者思い出せてなかったわ。
俺はヒロインでも攻略対象者でも、悪役ですらないんだからそこまで気にしなくてもいいよな。
「ジルヴァラ、そうしませんか? この王都で一人暮らすなんて、あなたは幼すぎます」
うーんと声に出して悩んでいると、心配そうな顔をしたドリドル先生からもそう言われてしまう。
俺は思わず横で黙ったままの主様を窺いかけるが、返ってくるのはよくて「良かったですね」ぐらいの反応だろうし、下手すれば「そうですか」の一言でぶった切られるのは目に見えてる。
「そうだよな……俺、無一文だから、宿屋とか泊まれないし、こんな街中じゃネズミとか猫ぐらいしか獲れないよな?」
「心配しなくとも、騎士団団長の給料はなかなかいいからな。ジルヴァラ一人増えたとしても問題ない。……今日からうちの子になるか?」
そこまで深刻な話ではなく、しばらくの宿とさせてもらおうかな、と軽い気持ちで頷こうとした俺の体は、横からぐいっと引っ張られて、気付いた時には主様の腕の中に収まっていた。
「主様?」
「ロコは私についてくるのでしょう?」
きょとんとして瞬きを繰り返す俺の瞳を、主様の宝石のような瞳が覗き込んで来て、心底不思議そうに尋ねられる。
「え?」
「何故無断で私から離れるんです?」
ぽやぽや笑ってるのに、やけに迫力のある表情に呑まれそうになり、俺は思わず視線を外してしまう。
「いや……」
「私よりあの緑色がいいんですか?」
「なんでここでオズ兄? そりゃ、俺としても主様といたいけど、まだ冒険者登録出来ないんだぞ? このままじゃ、ただの足手まといの幼児じゃん」
「何か問題でも? ロコは何処から見ても幼児です」
「そりゃ、六歳児だからな! って、そうじゃないから……」
先程までのシリアスな雰囲気は裸足で逃げ出してしまい、段々コントじみたやり取りになってしまい、俺は一気に脱力してしまう。
そんな俺達のやり取りを、フシロ団長は真顔……ではなく、明らかに笑うのを堪えている顔で眺めている。
「フシロ団長……笑うなら笑えよ」
「無理にすぐ決めなくてもいいんじゃないか? 幻日はどうせ城へ顔を出さないといけないからな。しばらく王都から離れられないんだ。その間に決めればいい。俺の方からも一応、冒険者ギルドへお伺いを立ててやろう」
「……ありがと、フシロ団長。とりあえず、何日か泊めて「ロコは私と泊まります」……もらわなくて大丈夫みたいなんで、いざという時はお願いするよ」
フシロ団長の心遣いにため息を吐いた俺は、俺を抱き締めて……というか捕獲してぽやぽやしてる主様を見やる。
なんだろう、この駄々っ子なモードな主様。
まさか、冒険者になったらお別れだよな、とか考えたのがバレてた? だとしても、引き留められるとは思わなかったけど。
少しでも俺と離れがたいと思ってくれての行動なら嬉しいけど、ぽやぽやしてる主様の本心は未だに読めそうもない。
主様が馬車を停めてくれと指示した場所は、宿屋とかではなく住宅街から少し離れた場所にポツンとある二階建ての一軒家だった。
「ジルヴァラ、何かされたらすぐに私に言うんですよ? 私は昼間ならほとんど騎士団本部にいますから」
ずっと険しい顔をしていたドリドル先生からは、別れ際重々しい声音の注意の言葉と共に抱き締められた。
ドリドル先生から見える主様は、一体どんな風に見えてるのか、確認してみたくもあるが聞くのが怖くもある。
「俺の屋敷にも遊びに来い。待ってるからな」
豪快に笑ったフシロ団長からは、そんな温かい言葉共に大きな手でぐりぐりと頭を撫でられる。
「私の方も、何もなくても会いに来てくださいね。あと、傷跡が痛むとか、何か体に異常を感じたら、すぐ騎士団に連絡をください。──わかってますね」
ドリドル先生の最後の一言は主様へ向けてだったらしく、鋭い眼差しで主様を睨んでいるが、主様は気にした様子もなくぽやぽやしている。
「あー、あまりジルヴァラを放置しているようなら騎士団権限で、ジルヴァラを保護することになるが」
「わかりました」
そっちは聞くんだ、と食い気味の返事をした主様に驚いたりしつつ、俺は去っていく二人へ手を振る。
「フシロ団長、ドリドル先生、ここまでありがと! 本当に会いに行くからなー」
「……行きますよ?」
去っていく馬車へいつまでも手を振っていたら、脇腹辺りを掴んだ主様からひょいと持ち上げられ、俺はそのままの体勢で家の方へと運ばれることになった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
主様にやる気はないです、たぶん。
ロコは悲しくて泣くより、感情高ぶりすぎて涙腺ぶっ壊れて泣くタイプです←




