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190話目

感想ありがとうございます(^^)


指摘されてハッとしました。あっという間にメイン連載を追い抜いた上に、200話突破間近です←


パタパタと走り回るジルヴァラを追いかけてたら、こんな所まで来てしまいました。

「え? ええ〜………? どういう状況なんだ、これ……」



 ドヤ顔なテーミアスに促されて俺がこっそりと隠れていた場所から顔を出すと、グロゼイユさんとヒロインちゃんの二人と目が合って。

 ヒロインちゃんから流れるように罵倒されたかと思うと、魔法をぶっ放されそうになって。

 その瞬間、肩の上にいたテーミアスがバッとヒロインちゃんへ向けて飛び立ち、その顔面に貼りついたかと思ったらヒロインちゃんが倒れてグロゼイユさんに抱きとめられている。


 ……うん、整理してみたけどわからない。


「ロコ! 何故出て来たんですか!?」


 で、俺は声を荒げた主様から抱き上げられて、主様の腕の中という安全圏に捕獲されている。

「ごめん、外の様子が気になって……。動物達、怪我とかしてない?」

 ヒロインちゃんはグロゼイユさんが介抱してるから俺が心配しなくても大丈夫だろう。

 見たところ地面にそこそこ大穴は出来ているが、怪我をした動物はいないようだ。ついでにヒロインちゃんも無傷らしい。

「ぴゃっ」

 俺の肩の上に戻ってきたテーミアスが、やってやったぜと一鳴きしてるので何かをしてくれたらしい。

「スリジエに何をしたんだ?」

 ヒロインちゃんを介抱していたグロゼイユさんが、テーミアスの動きを追って問いかけて来たが、答えを持たない俺は首を傾げて主様を見ることしか出来ない。

「……その獣は幻を扱えて、夢を見せることが出来るらしいので、それで眠らせたのでは?」

「へ? お前、そういう意味でも『幻』の獣? 眠らせただけで害はないのか?」

 主様の説明を受けて俺がテーミアスへ確認すると、可愛らしいドヤ顔からぢゅっという元気の良い鳴き声が返ってくる。

「そっか。お兄さん、その子夢見てるだけみたいだから、しばらくすれば目が覚めるって」

「あ、あぁ、そうか。なら、今のうちに俺達は森から出よう。目を覚ましたらまたうるさ……元気が良すぎて扱いに困るからな」

 グロゼイユさんは俺の言葉を聞くと安心した様子で苦笑いし、ヒロインちゃんを抱き上げる。

 その手つきは優しくて、やっぱりグロゼイユさんはヒロインちゃんが好きなんだなぁと状況も忘れてほっこりする。

「お兄さん、その子のこと好きなんだね」

「え?」

 俺がそう話しかけるとグロゼイユさんは素で驚いた表情で返してきて、その後一瞬とても嫌そうな顔をしたが、すぐにへらりと本心を誤魔化すような笑顔になる。

「どうだろうねぇ。ま、おちび達のことは上手く誤魔化しておくよ。で、おちびは偽者……「違います」な訳ないよな」

 グロゼイユさんの軽口をぶった切った主様は、ジーッとグロゼイユさんを見つめ続けている。

「主様?」

 グロゼイユさんがいい男だから見惚れてる? それともまさかヒロインちゃん? と少しだけ不安になって主様を呼んでしまう。

「私のロコはロコだけですから」

 グロゼイユさんを見ていた瞳が俺を見てくれ、返ってきたのは何よりも安心出来る一言だ。

 宝石みたいな瞳に吸い込まれそうになってえへへと笑っていると、グロゼイユさんが深々とため息を吐いて、眠るヒロインちゃんを背負って何とかあの通り道を帰っていく。

 俺が何となくそれをずっと見送っていると、今度は主様から「ロコ」と呼ばれる。


「おう。……そういえば、あの人達、ここへ何しに来てたんだ?」


「……さぁ」


「ぢゅ?」


 答える者ない俺の疑問に、主様の足元へ集まって来た動物達も一様に首を傾げるが、特に答えは出ない。



 残されたのは疑問と、ヒロインちゃんが空けたそこそこ大きな穴だけだった。

[視点変更]



 白い髪をした少女を背負って森の方から現れた赤毛の青年を、門番達は「またか」と言わんばかりの苦笑いで迎えて「あんたも大変だな」の言葉つきで見送る。




「これじゃ、後見じゃなくてただのお守りだな」

 人通りの少ない道を歩きながら、背中ですーすーと寝息を立てる少女を振り返って苦く笑う青年の呟きが聞こえた訳ではないだろうが、少女が身動ぎして目を開く。

「あ、れ……? あたし、森にいたのに……?」

 少女が起きたことに気付いた青年は、胡散臭い微笑みを浮かべてしゃがんで少女を背中から下ろす。

 しっかりと少女が立てたことを肩越しに確認した青年は、微笑んだままで体ごと振り返って話しかける。

「森へ入ってすぐに倒れたんだ。……あー、顔に何か大きな虫が当たって驚いたみたいだったが……」

 青年の説明に、大きな瞳を瞬かせて考え込んでいた少女は、自らの顔へ触れて納得した様子で頷く。

「そう、いえば、何か茶色っぽい物が当たってきた気がするわ……あれ? でも、何か大事なことがあったような気も……」

「うなされていたようだから、悪い夢でも見たんだろ」

 心底気の毒そうに優しく告げる青年に、少女は首を傾げながらも心配されたのが嬉しかったのかそれ以上疑問を口にはしなくなる。

「そうよね……今日はもう森には行かないわ! 代わりに、そうね……カレーを作るわ! 屋台をしてもらってる兄弟に『これが正しいカレーよ』って教えてあげないと」

 代わりにその愛らしい見た目の口から楽しそうに飛び出してきたのは、また青年を振り回す新しい計画だ。

 本人的には『あたしの素晴らしい考え』なんだろうが、振り回されるであろう未来を思って、青年の貼りつけたような色気のある微笑みが少し引きつる。



「……俺はあまりお腹空いてないんだ。代わりにあの彼を呼んであげれば喜ぶんじゃないか?」



「そうなの? わかったわ! 確かにエノテラなら、たくさん食べそうだから、ちょうど良いわね」



 せめてもの抵抗で一番被害があるであろう味見(どくみ)役を他人に押しつけ、青年は楽しげな少女に気付かれないようにそっとため息を吐くのだった。

 そうして呼びつけられて戻って来た家主でもある被害者と入れ違いに、赤毛の青年は「用事がある」と家を後にする。

 途中、少女が注文した食材を運んで来たらしい男とすれ違い、青年はちらりと出て来たばかりの家の方を振り返って微笑んだ。


「ま、愛情は何よりもスパイスになるだろ」


 そんな台詞を送られた被害者──エノテラはというと。



「う、美味そうだな」



 ぐつらぐつらと皿に盛られていても沸いている茶色い液体と、それを掛けられている同じく茶色い固体を前に引きつった笑顔を浮かべていた。

 少女の手料理が食べられると輝いていた顔は、調理が進むにつれてどんどん顔色が悪くなり、途中手伝うと強めに言った言葉はあえなく断られてしまい……。

 出来上がっていたのは目の前に置かれた謎の料理だ。

「もう! 何でカレー粉はあるのに、パキッて入れるだけのルーは無いのよ。おかげで結構大変だったわ。これじゃあ、普通の人にはあたしの求めるカレーが作れない訳よね。納得したわ」

 自信満々で出来上がった『カレー』を自画自賛している少女を、エノテラは『ナニヲイッテルンダ?』とばかりの目で見ているが、もちろん少女は気付かない。

「ちょっと見た目はいまいちだけど、味はばっちりだと思うから。ご飯もほんの少し焦げちゃったみたいに見えるけど、これはお焦げって言ってね、美味しいのよ?」

「あはは……そうか……」

 キラキラとした眼差しで自分を見てくる少女に逆らえず、エノテラは意を決した様子で少女がカレーだと言い張る料理へスプーンを入れて一匙掬い上げる。

 ゴクリと唾を一つ飲み込み、気合が入った表情でカレーだと言い張られている料理を口内へと入れるエノテラ。

 おや? と肩透かしを食らったような表情は、すぐに固まって動かなくなる。

「どう? あ、少し辛さ足りなかった? スパイス足す?」

「大丈夫……うん、大丈夫」

 少女の問いかけに対し、自分へ言い聞かせるように大丈夫と繰り返し、エノテラは口内の物を咀嚼して飲み下す。

「実はさ、買い食いしたばっかでお腹いっぱいなんだよ。……残りは後でもらう。せっかくのスリジエの手料理だからな」

 そのまま二口目へ行くかと思われたエノテラだったが、申し訳なさそうに笑ってスプーンを置いてスリジエを見ながらそんなことを言い出した。

「そうなの? なら仕方ないわね。今は味見だけで良いわよ。あ、でも、屋台を任せてる人達にも食べさせたいから、エノテラの分が……」

 仕方ない子ねとばかりに笑って答えた少女だったが、自らの作ったカレーと信じてやまない料理が入った小鍋を見て困り顔になる。

 エノテラの家にある鍋はこのサイズが一番大きく、皿に盛った分が減っているので中身は辛うじて二人分程度しか残っていないのだ。

 困り顔の少女に、エノテラは気にするなとニッと朗らかに笑って話しかける。

「俺はこれだけもらえれば十分だから、残りはそいつらに食べてもらって、スリジエの味を覚えてもらえばいいさ」

 その笑顔がとても安堵して見えることに少女は気付くこともなく、エノテラの提案にパァッと表情を輝かせて一も二もなく頷いていた。

「そう? ありがとう、やっぱりエノテラ優しいから大好き! カレー、ゆっくり食べて! お鍋は今度返すわね!」

 嬉しそうにエノテラへ抱きついた少女は、エノテラが何か反応する前にカレーを名乗らされる料理が入った鍋を持って玄関の方へと駆け出す。

 少女が去った瞬間、笑顔だったエノテラの表情が引きつり、テーブルの上に置いてあった水差しからコップへ水を入れてがぶ飲みし始める。



「これが貴族様の味か……」



 ここはエノテラの借りた家でエノテラしかおらず、ある意味美徳なエノテラのポジティブな勘違いを訂正する人間はいない。

 そして、カレーもどきは皿に盛られている分だけになっていたが、何故か茶色く炊き上がったご飯と、少女が勝手にエノテラ宅へツケにして買った食材の支払いがあることをエノテラはまだ気付いていなかった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなどいただけたら嬉しいです(^^)


以前も書きましたが、喜び過ぎてネタバレとかしちゃいそうなので個別返信はしておりませんが、全て隅々まで読ませていただき、萌え燃料と心の栄養になっております(`・ω・´)ゞ

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