171話目
そろそろ日常回終えて冒険者として活動開始……予定です(*´Д`)
プリュイに仕上げを任せたハンバーグは何だったら俺が仕上げるよりばっちり仕上がっており、主様も気に入ってくれたようで多めに作ったハンバーグは一つも残らなかった。
作った身としては嬉しくて、へらへらと笑いながらプリュイと並んで夕ご飯の片付けをしていく。
「ジル。ハンバーグもスープも、美味シかったデス」
「そっか、よかったー」
さらに追加でプリュイからの嬉しい言葉もあり、俺は笑みを深めて遠慮なくプリュイへと抱きつく。
で、踏み台に乗っていたことを忘れて落ちかけてしまい、プリュイから「めっ、です」と叱られてしまった。
プリュイは俺を叱りながら触手で俺の体を持ち上げ、天板の上へとしっかり戻してくれる。
「はぁい」
俺は首を竦めて良い子な返事をすると、途中だった洗い物を再開する。
再開すると言ってもプリュイが手伝ってくれるおかげで、洗い物もあっという間に終わるので残りは少ない。
その残り少ない洗い物を洗い終わる頃になると、キッチンの入り口辺りでうろうろする人影が一つ。
人影なんて遠回しな言い方したが、俺とプリュイは並んで洗い物してるし、フュアさん達は先日帰ったのでもういない。この家の中に俺達以外で残るのはただ一人。
「ロコ」
まだ終わらないの? と言わんばかりの表情で俺の名前を呼んだ主様は、首を傾げてじっと俺の答えを待っているようだ。
「ジル。アトはワタクシめへオ任セくだサイ」
わざとらしく大仰な物言いをしたプリュイに、俺は思わずぷっと吹き出してしまう。
「ふはっ、ならここはプリュイにお任せしようかな」
「ハイ」
一瞬プリュイに乗っかって偉ぶった口調で答えようか悩んだが、すぐ側にプリュイの本物の主人である主様がいるのでさすがに気恥ずかしくもあり俺は普通に答えて踏み台を降りる。
タオルで手を拭いてパタパタと主様へ駆け寄ると、流れるような動きで脇の下へ手を差し込まれて抱き上げられる。
「今日は大丈夫です?」
間近になった主様から主語のない問いかけと共に顔を覗き込まれ、咄嗟に意味がわからなかった俺は数度瞬きを繰り返して主様の不可思議な宝石色の瞳を見つめ返す。
「お風呂です……」
俺が理解出来なかったことに少し凹んだ様子でぽやぽやを薄れさせながら、主様が拗ねたような声音でポツリと洩らす。
「あー、そういえば昨日までずっとプリュイと入ってたな」
ドリドル先生からはいつまでという指示がなかったので、具合が良くなっても何となくプリュイとの入浴が続いていたが、そういえばもう平気だろう。
「というか、俺一人でも平気……」
そもそも俺は一人でも入浴可能だし一人でも入浴をしてたので心配してくれなくても、という意味で言いかけた俺の台詞は、ガーンッとショックを受けたような表情になってしまった主様に気付いて飲み込まれる。
「いやー、今日は主様と入れて嬉しいなぁ」
慌ててそう言ってみたのだが、本心なはずなのに慌てたせいかかなりの棒読みになってしまって、キッチンの方からプリュイの生ぬるい視線が刺さってくる。
「そうですか」
主様は気付かなかったのか気付いても流してくれたのかはわからないが、何処か嬉しそうにぽやぽやして頷いてくれて、ゆったりとした足取りで歩き出す。
主様が着替えとか用意してくれてるとは思えないので、主様の肩へと顎を乗せる体勢になった俺は先に部屋へ寄ってくれと言おうとして、背後でイイ笑顔で頷いたプリュイに気付いて笑顔で頷き返しておく。
さすがプリュイだ。言わなくてもわかってくれたらしい。
これで着替えとかの心配はなくなったため、俺はおとなしく主様の肩へと顎を乗せて運搬されていく。
「ロコ」
あまりにもおとなしくし過ぎたのか、歩いている最中何となく責めるような口調で名前を呼ばれて苦笑いを浮かべる。
「抱き上げたのが主様だから抵抗しないのであって、知らない人とかには抵抗するからな?」
たぶんこの件だろうな、と予想して答えたのだが正解だったらしい。が、結局主様からは本当に? と言わんばかりの眼差しでずっと見られていたのは理不尽だろ。
元はと言えば何も言わずに抱え上げた主様にも問題あると思うんだけど。
「……ロコは皆にほいほいと抱き上げられ過ぎです」
心の中で反論していたら、主様が何か恨めしげに言ったのを聞き逃してしまった。
「主様? なんか言った?」
声音が恨めしげだったのが気になり聞き直したが、返ってきたのは無言の圧力ならぬ首筋への無言の甘噛みだ。
夕飯食べ足りなかったか? とかなりずれた突っ込みを脳内に流しながら、俺は無言で運ばれていくしかなかった。
●
「いい湯だな、主様」
「ええ」
本日は氷風呂になることもなく、いつも通り主様の足を跨いで向かい合わせで乗せられながら浴槽に浸かり、のんびりとそんな会話する。
最初は恥ずかしかったり落ち着かなかったりしたこの体勢も、すっかり慣れたものだ。
主様の綺麗過ぎる顔面には未だに慣れる気配も、見飽きることもないけどな。
美人は三日で飽きるってよく聞くけど、こんな美人さんを見飽きる訳ないよなぁ。
そんなどうでも良いことを考えながら、ボーッと主様の顔を眺めてふにゃふにゃしてると、心配そうに頬を撫でられる。
「ロコ?」
「んふふ、主様って何処から見ても綺麗だよなぁ」
心配そうに名前を呼んでくる主様へ、一歩間違わなくても変態っぽい台詞を含み笑い付きで返すと、妙な笑い方をしていたせいかのぼせて来ていると判断されたらしく抱き上げられて浴槽から出されてしまう。
そのまま抱かれた状態で脱衣所へと連れて行かれ、プリュイによって体を拭かれて服を着せられてほかほか状態のままこちらも服を着終えた主様へと引き渡される。
ほかほか状態で主様に抱かれ、このままだと流れで一緒に寝ることになりそうだと察した俺は、何でもない感じでサラッと主様へ言ってみることにする。
「あ、今日は一人で寝るからな?」
「え」
あまりにも見事で絵に描いたような二度見をされてしまい、俺は今日も一人で寝られないかもなとちょっと思ってしまった。
主様の綺麗な二度見のおかげで、かなり決心が揺れてしまったが、何とか一人で自室のベッドへと入った俺は、プリュイが暖めておいたくれた布団の中でぬくぬくさせてもらう。
うつらうつらし始めた頃、ほんの少しだけ人肌恋しい気もしたが、それは快適な温度に保たれて暖かい布団のおかげであっという間に掻き消えてしまい──。
そんな感じで一人寝余裕だぜと眠りへと落ちたはずの俺だったが、快適な眠りからパチッと目を開けた先に待っていたのは眠っていても完璧な美貌で。
どうやらまた夜中に抜け出して、主様のベッドへと潜り込んでしまったらしい。
このクセは治した方が良いよなぁと思いながら律儀に俺を抱き締めて眠っていた主様の腕から抜け出して、一人廊下を洗面所へ向かう。
途中プリュイに出会ったというか埋まったので、先程考えてた治したいクセの件を伝え、
「俺が寝惚けて主様のベッドへ潜り込むために廊下歩いてるの見かけたら止めてくれよ?」
とお願いしてみたのだが、返ってきたのは……。
「わかりマシタ。──ジルが一人デ歩いテたら止めマス」
という少し気になる点のある一言だった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
ジルヴァラは夢遊病的なものだと思ってますが、まぁ原因はねぇ、な感じです。
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