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17話目

感想ありがとうございますm(_ _)m


オズ兄、強く生きて!!

「大丈夫ですか?」

 盛大に噎せた俺は、心配してくれる主様に頷いて、汚れてしまった口元をタオルで拭う。

「うん、ちょっと急いで食べ過ぎただけだから」

 やっと呼吸が落ち着き、ゆっくりと瞬きをすると苦しさから生理的に滲んでいた涙が頬を伝うのがわかる。

「ロコ? 何故泣いてるんです?」

 俺の涙に気付いた主様は、驚いたのか目を見張って俺の頬を伝う涙を拭ってくれ、

「私の怪我はもう治りましたよ?」

と、泣き止ませようと的外れな慰めを口にする。

 主様の言葉に大泣きした時のことを思い出しかけた俺は、慌てて首を大きく横に振ると、へらっと笑って空の器を持ち上げて見せる。

「もうそれは忘れてくれよ。……今のは噎せたせいで、苦しくて出ただけだから。心配してくれてありがと」

「そういうことでしたか」

 安心したのかふわりと微笑む主様は、相変わらず神様かと思うほど綺麗で。

 俺はつられて若干ほわほわとしながら、夕食の後片付けをしていく。

 主様は手伝ってくれるつもりなのか、空になった鍋や皿を手に水場へ向かう俺の背後についてくる。

 俺が側にいれば主様へ声をかけてくる相手へ牽制出来るから、これぞwin-winってやつだよな、たぶん。

 ふんふんと鼻歌交じりに洗い物をしていると、近づいて来た足音が俺の側で止まる。

 牽制出来るからとか考えてたせいで、俺がフラグ建てたか、と冗談半分で思いながら足音の方へと視線をチラリと向けると、そこには普通としか言いようのない見た目の二十歳ぐらいの若い男が立っていた。

 中肉中背ってこんなもんかと思わせる体型まで普通な若い男は、この世界でよく見る茶色の髪に茶色の目の持ち主で、色彩まで普通かよ、と突っ込みたくなった。

「君、一人かい?」

「違うよ。連れと一緒」

 というか、あれだけ目立つ美人に気付かないって目が悪すぎるだろ、と俺が振り返った先に主様の姿はなかった。

「今、テントへ荷物置きに行ってるだけで、すぐ戻って来るよ」

 この展開に微妙に既視感を覚えつつ、俺は自信満々で頷いておく。

 しかし、地球より過酷で残酷な世界のせいか、こっちの人達は俺みたいな幼児が一人でいると不安になるのか、やたらと話しかけられる。

「君みたいな可愛らしい子を一人にしとくなんて、親御さんに一言注意しないとね」

 にこにこと笑う顔は普通な顔面のおかげで好感は持てるかもしれないが、俺は連れと言っただけで親とは言ってないんだけどな、と内心で冷静に突っ込んで無言のままへらっと笑っておく。

「……こんな時間には一人にしないように、お兄さんがよく教えてあげるから」

 俺が事なかれ主義で適当な対応をしている間、男は一人で正義感的なもの駆られてヒートアップしていく。

「本当に、よーくよく教えてあげな……げへっ」

 主様早く来ないかな、一人で戻るかな、としゃがみ込んで洗い終わった物をまとめていると、延々と話しかけて来ていた男の声が止んでいることに気付く。

 顔を上げて周囲を見るが、あの無駄ににこにこした普通の笑顔は何処にもない。やっと諦めたか、とため息を吐いて俺はテントへ戻るため両手いっぱいに荷物を抱えて立ち上がる。

 途中から聞き流していたため、いつ消えたかはわからない。どうでもいいけど。

「おやぁ、こんな所にかわい……ひっ、何でもございません! 申し訳ございませーん!!」

 歩き出そうとした俺に、また別の男が話しかけて来たが、俺がなにか答える前に突然ニヤけきった笑顔を凍らせて、謝罪しながら脱兎のごとく走り去ってしまった。

「何だあれ。俺の目にでも驚いたか?」

 化け物でも見たかと思うほど怯えきった態度の男に、思わず足を止めた俺は若干イラッとしながらゆっくりと瞬きを繰り返す。

 仲良くしてくれてる人達はみんな綺麗だと言ってくれる銀の目だが、すれ違っただけの相手から、うわ、みたいた反応をされたことは何度がある。

 特にこんな夜更けに、松明とか焚き火に照らされると余計に目立つようだから、あの男も俺の目に気付いて驚いたのかもしれない。

 傷ついたりはしないが、ムカつかないような聖人君子ではないので、ふん、と苛立ちを紛らわせるように鼻を鳴らして歩き出そうとする。が、また気配なく側に立っていたらしい主様にぶつかりそうになり、ピタリと足を止める。

「主様、危ないからあんまり一人で行くなよ。変態に触られたらどうするんだ」

 シパシパと主様を見上げた俺は、とりあえず忘れないうちにと、口癖になりつつある注意をするが、何か間違えた気がして首を捻る。

「……触られたんですか? 何処を?」

 いつも通り、お前が言うな、的なぽやぽや顔をしていた主様が、俺の言葉を聞いてやけにゆっくりと瞬きをして俺をじっと見下ろして訊いてくる。

 俺の方はというと、主様の反応でやっと言い間違いに気付いて、誤魔化すようにへらっと笑っておく。

「言い間違えただけだよ。さらわれたらどうするんだ、って言いたかったんだよ」

 聞き流してくれよな、と八つ当たりじみた文句を口にして、俺は今にも触って確認してきそうな主様を軽く睨みつける真似をする。

「私をさらう? それはロコのように抱えてですか?」

 素でそう聞き返され、俺は目を閉じて主様がさらわれる場面を改めて想像しようとして、ぷっと吹き出してしまう。

 いくら細身で綺麗だとはいえ、主様はかなり長身な成人男性だ。それを俺のように抱えてさらうのは、さすがに無理があり過ぎた。

「さらうのは無理そうだ」

 くくく、と声を上げて笑って目を開けると、いつの間にかしゃがみ込んでいた主様とバッチリ目が合う。

「黒い髪も綺麗ですが、私はロコの銀の目も気に入ってます」

 じっと覗き込んでくる宝石のような瞳を見つめ返し、俺は嬉しさから頬を緩めて、

「俺も、主様の夕陽みたいな髪も、宝石みたいにキラキラしてる目も気に入ってる、というか大好きだ」

と誉め返したが、言ってから照れ臭くなってしまい視線を外して主様から離れる。

「ロコ?」

「ほら、明日から馬車で移動なんだし、早く寝ないと」

 数歩進んで誤魔化すようにへらっと笑って振り返ると、主様は首を傾げたまま無言でついて来ている。

「ロコ」

「もー、自分で言っといてなんだけど、恥ずかしいから聞き直さないでくれよ」

 名前を呼んで微妙にプレッシャーをかけつつピッタリとついてくる主様に、俺は逆ギレ気味に言い放って、頬を膨らませて見せる。

 ちなみにテント内到着済みで、主様以外に見られる可能性がないので試しにやってみたが、これはこれで恥ずかしい。

 これを全力でやって見せる世の中の幼児と小悪魔女子には頭が下がる思いだ。

「おやすみ!」

「おやすみなさい?」

 主様の反応を見れなくて、視線を外したまま勢いで挨拶をして、自分の寝床へ潜り込む。寝床と言っても、タオルを枕にして毛布へ包まるだけのものだから、真冬になったらどうしようかと悩んでる。

 主様は、なんか真冬でも毛布一枚で寝てるらしい。

 さすが(?)あの重傷があっという間に治るような肉体の持ち主だ。

 それともこの国の冬はそれぐらいで耐えられる寒さなのかもしれない。

 そんなことをうつらうつらしながら考えてると、少し離れた場所で主様が横になった気配がする。

 ソルドさん達と旅してた時は子供好きなソルドさんに遠慮なくくっついて暖をとらせてもらってたけど、あまり他人に触れたくない主様とくっついて寝るのは不可能だから、ドリドル先生に相談してみようと、頭の片隅にメモして俺の意識は完全に眠りに落ちていった。

 翌朝。


 いつも通り目覚ましいらずでバッチリ目覚めた俺は四つん這いで眠る主様へ近寄り、癖となってる寝顔の確認をして、そこで違和感を覚えて首を傾げる。

「……ん? あれ、なんかいつもより近い?」

 俺も寝相は悪くないし、主様に至っては下手すれば間違い探しレベルで動いてないのだが、なんか今日はいつもより近い気がして昨夜の記憶を辿る。

 で、照れ臭さから主様を見ないようにして寝たことを思い出し、そもそも最初に寝た場所がいつもと微妙に違ってたんだな、と納得してから、ん? と首を捻る。

「でも、なんで?」

 しばらく悩んでみたが、答えが降ってくる訳もないので、俺は考えるのを放棄して出立の準備を始める。

 朝は夕飯の残りでいいかな、と主様の収納へ入れてもらった物を思い出してると、

「ジル、いるか?」

と、テントの外から聞き覚えのある声が聞こえ、俺は手櫛で軽く寝癖を直してテントの入口の布を捲る。

 やはりというか、そこにいたのは朝の爽やかな光にも負けない爽やかな笑顔でキラキラしたオズ兄だった。

「おはよう、ジル。体調はどう?」

「おはよ、オズ兄! みんなのおかげで、体調はバッチリだよ」

 爽やかなオズ兄の挨拶に元気良く返すと、小さな含み笑いと共に伸びて来た手が俺の頭を軽く撫でていく。どうやら、まだ寝癖が直ってなかったらしい。

「ありがと、オズ兄。今日から騎士団の馬車に乗っけてってもらえるって主様から聞いたんだけど」

「そうだよ。ドリドル先生が、フシロ団長をおど……説得したらしい。あの方は絶対またジルヴァラを無理させます、ってさ」

「おど……?」

「いや、何でもない。ジルヴァラはまだ傷が塞がったばかりだからね。無理は良くないというのは、オレもドリドル先生に賛成だ。先輩達も当然賛成してくれてるよ」

 オズ兄が言い直した言葉が気になって尋ねたのだが、困ったような苦笑いで優しく流されてしまった。

「あとで迎えに来るから。力仕事があるなら、オレが手伝うけど」


「……必要ありません」


 俺がなにか答える前に、俺の背後からぬっと現れた主様がそう答え、俺を守るように抱え込んで警戒するようにオズ兄を見つめている。

「おはよ、主様。不審者じゃないから、これがオズ兄だって! 昨日会っただろ?」

「……おはようございます」

 警戒を解くつもりないのか、主様は俺を抱え込んだままテントへ戻り、入口の布を戻してしまった。




「これ……」



 外へぽつんと残されたオズ兄が、俺の『これ』扱いにダメージ受けてたことなんて、俺は全く気付いていなかった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


マイペースで頑張らせていただきます(`・ω・´)ゞ

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