165話目
主様の役目は湯たんぽのみで。
やはり世話をさせるとダメダメな主様です(*´Д`)
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さすがに俺を完全ホールドして添い寝してるだけだと主様もフラグは建てないのか、俺の風邪は何事もなく順調に良くなっていった。
主様がしっかりと添い寝をしてくれるおかげか、発熱による寒気なんて感じる暇もなかったのだが……。
「主様、俺にばっかり食わせてるけど、自分は食べてるのか?」
途中、最近は一人でご飯食べたくないマンになってた主様がご飯食べてないことに気付き、何故か俺が主様へあーんしてご飯を食べさせたりもしたが、それ以外は平和……、
「ですから、幻日様の拭き方はジルヴァラ様が痛がって……少々強過ぎるので、清拭は私かプリュイ様にお任せください」
フュアさん、誤魔化そうとしたけど誤魔化しきれてないし。
ちなみに主様が注意されてたのは、まだお風呂に入れない俺の体を拭いてくれたのは良いけど、相変わらず力加減が苦手なせいで俺の背中を真っ赤にしたようだ。
俺からは見えないからわからないけどジンジンしてるし、腰に手を当てたフュアさんが微笑んだまま主様を叱っている。
主様は自分でも思うところがあったのか、濡れタオルを手にぽやぽやしながらしゅんとしている。
「主様、ほら、髪もベタベタするから拭いてくれないか?」
俺は主様の様子を見ていられなくて、へらっと笑って自らの髪の毛を摘んで見せる。
「はい」
途端にパァッとぽやぽやを増した主様は、さっきまで全力で背中を拭いていたのとは同一人物とは思えない力加減で髪を拭いてくれる。
「では、私はこちらを拭かせていただきますね」
主様の様子をしばらく窺っていたフュアさんは、何事もなく俺の髪の毛を拭いている様子に安心したように微笑んで、慣れた手つきで体を拭いていってくれる。
タオルの温度も力加減もバッチリで気持ち良さからだんだん眠くなって……。
「ふふ、ジルヴァラ様、終わりましたよ」
フュアさんの笑い声混じりの声でハッとして目を開けて、俺はやっと自分が眠っていたことに気付く。
フュアさんが受け止めてくれたらしく、フュアさんに体を預けるような体勢になってしまっていて、俺は気恥ずかしさからへへっと笑ってフュアさんから離れようとするが、それより早く主様からギュッと抱き寄せられる。
「熱も下がったし、明日はお風呂の許可出るかなぁ」
こうやって毎日拭いてもらってはいるが、ここまでピッタリと添い寝してくれてる主様からは汗臭いと思われてるんじゃないかと心配だ。
「明日、ドリドル様に確認をしておきますね。……心配されなくとも、ジルヴァラ様はお日様の匂いがします」
あちこちくんくんと嗅いでいる俺の仕草にウケたのか、フュアさんは柔らかい笑顔のままそう提案してくれて、かつフォローまでしてくれた。
さすがフュアさん。気配りも完璧だ。
俺本人よりくんかくんかと嗅いでいる主様より、気配り完璧だ。
「……主様、俺臭いならもう添い寝大丈夫だぞ?」
「嫌です」
くんかくんかしてる割には、離す気は無いらしい主様はバックハグの体勢で俺をしっかりホールドして首を横に振る。さらさらとした髪が素肌に当たってくすぐったい。
「幻日様。そのままですと、ジルヴァラ様が風邪をぶり返しますのでこれを」
フュアさんが言い切る前に素早く動いた主様によってフュアさんが持っていた服は消え、俺は服を着せられ……てたりはせず、主様が手間取ってたので結局フュアさんから着せてもらった。
何かしたそうにぽやぽやしていた主様には、アシュレーさんからお見舞いでもらったもこもこ靴下を履かせてもらった。
「だいぶ食欲もお戻りになったようなので、明日の朝はうちの料理人の作ったスープでよろしいでしょうか」
フュアさんの言葉が効いたのか、俺が寒くないようにと抱え込んでくる主様によって包まれながら、俺はフュアさんの問いかけに満面の笑顔で頷く。
「うん! 楽しみだなー」
フシロ団長のとこの料理人さんのスープの美味しさを知ってる俺は、楽しみ過ぎてむふふと笑っていて咳き込んでしまい、途端に顔色を変えた主様からベッドへ押し込まれてしまった。
「では、また明日の朝に参ります」
綺麗な一礼をして去っていくフュアさんに、ベッドの中から手を振って挨拶をする。
「ありがと、フュアさん。おやすみー」
「おやすみなさい、ジルヴァラ様」
フュアさんはうふふと柔らかい微笑みと共に挨拶を返してくれてそのまま部屋を出て行き、部屋に残るのは俺と主様だけ。
「主様も、おやすみ」
「おやすみなさい、ロコ」
巣ごもりする動物のようにしっかりと主様の懐へと抱え込まれながら、俺は何とか就寝の挨拶を口にして、世界一安心出来る腕の中であっという間に眠りに落ちる。
これ夏場だったら全身汗疹だな、とどうでも良いことを考えながら。
●
「んー、やっぱり美味しいー」
たまに見られる俺を誰が世話するか勝負で今日はプリュイが勝ったらしく、俺がプリュイからあーんされながらプロの作ったスープを堪能していると、横からやたらと強い視線を感じる。
ちらりと目だけでそちらを見ると、主様が綺麗な所作でスープを食べながらガン見してきていたので、見なかったことにして美味しいスープに集中する。
味覚の方はすっかり回復したので、美味しいスープを堪能出来て何よりだ。
そういえばドリドル先生作のミルク粥は主様から収納しといてもらって、昨日食べさせてもらったんだけど、オズ兄のミルク粥と同じ味だった。
ドリドル先生がオズ兄に……というか、騎士団の人に教えてるんだろうなぁと思いながら美味しくいただいた。
「ごちそうさま! プリュイも、ありがと!」
ぱちんと手を合わせてごちそうさまをすると、ふるりと震えたプリュイが俺の顔を一撫でして「ドウいたしマシて」と使い終わった食器と共に離れていく。
もう良くなった気もするが、ドリドル先生からは「出した分は全部飲み切ってください」と言われてしまってるので、朝から苦い粉薬を飲んで盛大に顔を顰めて、主様から飴玉を放り込まれるのが一連の流れを済ませてベッドに転がる。
すかさず近寄って来た主様によって懐へと抱え込まれて、気分は小さな子猫だ。
ま、俺は子猫扱いされても違和感ないが、主様は絶対猫は猫でも猫科の猛獣だろう。
懐へと抱え込まれた後は、毛づくろいするように額を舐められるが、数日風呂へ入ってない身としては止めて欲しかったり?
言っても聞いてもらえないから、諦めたけど。
「お昼は俺が米好きだって伝えたら、リゾットにしてくれるって」
ずっと眠ってばかりなので、さすがに眠気が訪れることがなく、今世界一安心出来る場所で独り言のようにポツポツと話していると、おとなしく休みなさいとばかりに背中をぽんぽんと軽く叩かれる。
全力で背中を拭いてくれた人物とは思えない絶妙な力加減に、眠くないと抵抗していた俺もあっという間に眠気に襲われてしまう。
眠らないように額辺りを主様の腹筋辺りへ擦りつけていたが、ふふと擦りつけている腹筋が震えて主様が笑う気配がして、さらにしっかりと抱き寄せられる。
「──森へは返しませんから」
穏やかな眠りに落ちる寸前、主様が何かを吐き捨てるように言った気はしたが、眠ってしまった俺に聞こえることはなく。
子供が眠ったと同時に少しだけ不穏に部屋の空気がざわめいたが、何事も無かったように子供の寝息だけが聞こえる部屋へと戻り、子供をしっかりと抱え込んだ青年がふふとまた小さく笑う声だけが響いていた。
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