164話目
まずは感想ありがとうございますm(_ _)m
そして終わりは決まってるのに、終わりが見えない(ΦωΦ)
このままだと確実にメイン連載追い越しちゃいますね。
息抜きって何だったろうという感じです(*ノω・*)テヘ
「んー……」
目が覚めた瞬間、一晩寝てすっかり体調が良くなってスッキリというのを期待していたが、残念ながらそんな都合良い展開はないらしい。
熱は下がって来てる気はするが、相変わらず体はダルくてベッドから起き上がれない。
まぁ、起き上がれないのは体調不良なせいだけではなく、添い寝を通り越して完全ホールド状態で熟睡している主様のせいだけど。
時計を見るといつも起きる時間よりかなり早い。早く寝たせいで早く目が覚めんたんだろう。
そんなことより喉乾いたなぁとベッドサイドに置かれた水差しを見るが、もちろんこの完全ホールド状態では手が届かない。
早朝な上、よく眠っている主様を起こすのは忍びないが、起きてもらうしかないかと悩む俺の目にふるりふるりとしている氷枕なプリュイが映る。
すぐにプリュイへ頼むという簡単な答えを導き出した俺は、プリュイの一部である氷枕をぺちぺちと叩いて、
「プリュイ、水飲みたい」
と、小声でおねだりをしてみる。これでプリュイ本体には聞こえたはずだ。
俺の期待通り、反応は速攻だった。
ふるふると氷枕が震えたかと思うと、部屋の扉が控えめに開かれてプリュイが入ってくる。
その手には氷がカラカラと音を立てる新しい水差しと、金属製のストローが入れられているコップがある。
わざわざ頼まなくてもプリュイは色々と察してくれたらしい。
「ありがと」
掠れた声で俺がお礼を言うと、プリュイは慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、水を入れたコップを俺の口元へと寄せてくれる。
さすがに寝たままコップで飲むのは難しいので、遠慮なくストローを使わせてもらってゴクゴクと喉を鳴らして水分補給をする。
で、飲んでから気付いたんだけど、これはただの水ではなくて、以前二日酔いになった時にドリドル先生が作ってくれたあのドリンクのようだ。
少しは味がわかるようになったという点でも安心しながら、プリュイの入れてくれた二杯目を、今度はゆっくりと飲み干していく。
「もうイラないデスか?」
「ん、ありがと」
飲み干しきれなくて口の端から垂れたドリンクをプリュイがちょいちょいと吸ってくれ、流れで汗を拭ってくれたので、俺は気持ち良さからほぅと息を洩らして目を閉じる。
「モウ少し、寝テテくだサイ」
優しい声で囁きながらぽんぽんと優しく体を叩かれ、俺の意識はあっという間にまた深い眠りへと落ちていった。
●
次に目が覚めたのは、カーテンの開く音とカチャカチャと食器の触れ合う音、それに女性の優しい声に促されたからだ。
「……ヴァラ様、ジルヴァラ様、起きられそうですか?」
「あい」
くしくしと目を擦った俺は、優しい声の促すままに体を起こそうとして起きられず、そこでしっかりと覚醒する。
ぱちりと目を開けて自分の状態を確認すると、未だに主様による完全ホールド状態だ。
通りで体を起こせない訳だと納得した俺は、しっかりと俺を背後から抱えんこんでいる主様の腕をペシペシと遠慮がちに叩く。
「ぬしさま、ぬしさま、おれトイレいきたい」
別に甘えているんじゃないけど、寝起きの風邪っ引きな喉のせいで、自分で聞いてても甘えたような声になってしまい、苦笑いしてたらうふふと柔らかい笑い声が聞こえてくる。
笑い声の主は先程俺を優しく起こしてくれたフュアさんだ。
からかう様子は一切なく、ただただ微笑ましくて笑っている優しい笑い声に、気恥ずかしさから後頭部をうりうりと主様の胸元へ押しつけて誤魔化す。
まだ起きる気配はない。
「主様、俺、洩れちゃいそう……」
しっかりと覚醒してきたら、結構膀胱が限界だと気付いてしまって、少し切羽詰まった声で呼びかけたのと背後から抱き上げられたのは同時だった。
へ? と間の抜けた声を洩らしているうちに、俺は一瞬で覚醒したらしい主様へ抱えられてトイレまで運ばれていた。
幼児に用を足させるポーズで俺に用を足させようとする主様との地味な戦いはあったが、無事に洩らすことなく用を足して部屋へと戻る。
フュアさんがなまあたたかい眼差しでこちらを見て微笑んでいるが、普通に自力で用を足したと伝えようとしかけて、わざわざ女性へ言うようなことじゃないなと気付いて飲み込んでおく。
「朝は果物をすり潰したもので様子を見てください、とドリドル様からの指示がございましたので、お見舞いに頂いた桃をすり潰しました」
「ありがと、フュアさん。いただきます。……お見舞いって、誰か来たの?」
俺が食事を取れる体勢になると、すかさず寄ってきたフュアさんが、すり潰した桃を食べさせてくれる。
もう自分で食べられると抵抗するのは諦めて、お礼と桃を口にした俺は、フュアさんの発言の中で引っかかった部分を訊ねる。
「森の守護者の皆様方が、ダンジョンで採ってきたと届けてくださいました。ダンジョン産の物は甘くて栄養価も高いんですよ」
「へぇ、会ったらお礼言わないとな」
でも何で俺の体調不良知ってるんだ? と首を傾げる俺は、昨日の主様大暴走が原因なんてこの時点で知る由もなかった。
「トレフォイルの皆様からは、栄養が取れるようにとナッツに蜜がかけられたお菓子が。うちの旦那様からは氷菓子とうちの庭師からお花が。アシュレー様と名乗られた方からは足を温めるのよ、という伝言と可愛らしい靴下が届いております」
フュアさんは俺の咀嚼する速度に合わせてくれるので、余裕をもってすり下ろされた桃を味わいながら、フュアさんの説明に首を捻る。
「フシロ団長はともかく、トレフォイルとアシュレーさんは何で俺が体調崩してるって知ってるんだろ?」
数日寝込んでるならともかく、まだ一日寝込んだだけだよな?
もぐもぐの合間にフュアさんへ訊ねると、うふふと柔らかい笑い声が返ってくる。
「騎士の皆様にはほとんど伝わっていたようなので、そこからではないですか? 皆様、ジルヴァラ様のことが心配で、小さな子が体調崩した時はどうしたら? とあちこちで聞いて回っていたそうですし」
「……嬉しいけど、なんか大事になってて恥ずかしいなぁ」
熱でポーッとしている頭が羞恥でさらにポーッとしてきて、プリュイ(氷枕)がちょっと心配そうにふるふるとしている。
「ごちそうさまでした」
昨日より味がわかるようになったのか、ダンジョン産だという桃が甘いせいか、はたまた両方かはわからないが桃は美味しく食べ終えた。
その後、俺はまたあの苦い薬を飲み、主様から飴玉を口の中へ入れてもらって、またベッドの住人となる。
思ったより大事になってるので、早急に治したい。
「ロコ……」
未だに俺が死ぬんじゃないかと疑ってる節のある主様のためにも。
いつもありがとうございますm(_ _)m
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