162話目
サクサク進めるため、短めの話が続きますm(_ _)m
ミルク粥といえば、緑の髪の人がチラつきますが、出番はありません←
「ロコ」
俺が目覚めたのに気付いた主様は、安堵したように微笑んで俺の頬に触れるが、途端に表情は不安げなものへと変わる。
触れてみたら俺の熱が下がってなかったんだろうなぁ、と熱でボーッとしながら主様の変化を眺めていると、主様ではないたおやかな手が伸びて来て、タオルで優しく汗を拭ってくれる。
人の肌を持つそれはプリュイのものではあるはずもなく、俺は目だけを動かして手の持ち主を見る。
「フュアさん……?」
そこにいたのはフシロ団長宅の凛とした美人メイドのフュアさんで、俺の掠れた声の呼びかけに痛ましげな表情で頷いてくれる。
「旦那様からの指示により、ジルヴァラ様の看病に参りました」
「そう、なんだ。ありがと」
フシロ団長の心遣いに感謝しながら、へらっと笑った俺が体を起こそうとすると、すかさずフュアさんが支えてくれて背中にクッション……を宛がうまでもなくプリュイが背もたれになって支えてくれる。
主様はその間、ずっと手を握ってくれていた。
うん。主様に看病は期待してないし、手を握っていてくれるだけで心強い。
でも、トイレに行く時ぐらいは離して欲しい。
危うく主様と手を繋いだまま用を足すことになるところだった。
●
手を洗ってトイレから出て来ると、待ち構えていた主様に捕獲されて抱き上げられ、しっかりと再度手を繋がられる。
俺が、
「主様と手を繋いでると安心する」
と、言ったからずっと繋いでくれているのだろう。
優しいなぁと思いながら、力の入らない体をぐてりと主様へ預けて目を閉じる。
こんな本格的な風邪は久しぶりだな、とさっき熱で浮かされた夢の中での出来事を思い出しながらため息を吐く。
熱が高いの相まって、主様と触れ合ってる所からなんか溶けそうだなぁとか、明らかに熱に浮かされて考えながら主様へ体を預けきって移動していると、第三者の声が聞こえてくる。
「ちょうど目が覚めてましたか。ミルク粥を作ったんですが、食べられそうですか?」
それはドリドル先生の優しい声で。
俺はすぐに閉じようとする瞼を何とか押し上げて声のした方へと視線をやると、ドリドル先生が湯気の立つミルク粥を乗せたお盆を手にこちらを見ている。
「あい……」
返事までとろとろになっている俺に、主様からのガン見の視線が降ってくる。
そこまで心配しなくても大丈夫だと伝えても、主様にとって『人の子供なんてすぐ死ぬ』って感じの生き物だからなぁ。
とりあえず少しでも安心してくれれば良いなと力の入らない腕で主様へギュッとしがみついたら、何か余計に心配させてしまったらしく、肋骨がミシミシする勢いで抱き締め返されてしまった。
事態に気付いたドリドル先生により叱られてしゅんとした主様はちょっと可愛かった。
あと主様を叱ってしゅんとさせられるドリドル先生は最強だと思う。
●
ベッドの上の住人へと戻った俺は、早速ミルク粥の皿を手にした主様からキラキラとした眼差しとスプーンを向けられていた。
主様からあーんされたら、食欲がなくても俺がある程度は食べるだろうというドリドル先生の計算……だったりはしないよな?
「あーん?」
あざとく首を傾げてこちらを窺い見る麗人に勝てる訳なく、俺はおとなしく口を開けてちょうどよい温度なミルク粥を口に入れてもらう。
たぶんドリドル先生が食べやすいように程良く冷ましておいてくれたんだろう。
「ジルヴァラ、食べられそうですか?」
あむあむとミルク粥を咀嚼して飲み込んでいると、主様の横から顔を出したドリドル先生が俺の顔色を見ながら心配そうに話しかけて来たので、こくりと首を縦に振っておく。
「味つけはどうですか? 久しぶりに作りましたが、口には合いましたか?」
しかし、続いた質問には俺は答えられず、主様の突っ込んで来た二口目を咀嚼しながら、困ったように笑うしかない。
「おや、味つけ間違えましたかねぇ」
俺の微妙な反応に、ドリドル先生も困ったような笑顔になってしまったので、俺は頭を振って主様のスプーンを避けつつ、ドリドル先生の呟きに対する否定もしておく。
「ごめん、今、味わからなくて……」
俺がへらっと笑ってそう言うと、軽く目を見張ったドリドル先生はすぐに納得した様子で優しく微笑んで俺の頭を撫でてくれる。
「そうでしたか。気付かなくてすみません」
申し訳なさそうなドリドル先生に、俺は最初に思った点を伝えようと口を開く。
「あ、でも、温度はすっげぇちょうどいいぜ? 食べやす……っ!?」
食べやすいと最後まで俺が言えなかったのは、焦れた主様がスプーンを突っ込んできたせいだ。
「それは良かったです。夜は何か果物をすってもらいましょうか」
「ん」
主様がわんこミルク粥モードに入ってしまったため、俺はドリドル先生の問いに頷くことだけで何とか答えておく。
「幻日サマ、そろそろジル、オ腹いっぱいデス」
本日のわんこミルク粥モードの主様ストップをしてくれたのはプリュイだ。
伸ばした触手で俺の口元を覆い、物理的にも主様のスプーンを防いでくれている。
「まだ半分も食べてませんが……」
主様は俺の顔とミルク粥の残った皿を交互に見つめて、怪訝そうに首を傾げている。
何だったら少し不満そうにも見えるぐらいだ。
「体調不良の割には食べてくれた方ですよ。具合が悪い時の子供は、下手すれば食事を食べてくれませんからね」
俺が何か言う前に、ドリドル先生が代わりに答えてくれて、優しい手つきで誉めるように俺の頭を撫でてくれる。
「無理をして食べて、気持ち悪くなって吐いてしまったら意味がありません」
ドリドル先生の手つきが気持ち良くて目を閉じて頭を撫でられていると、
「……ロコは死ぬんですか?」
なんて弱々しくやたらと重い囁きが聞こえて来て、ドリドル先生と揃って目を見張ることになる。
「死なないから!」
「死にません!」
否定する声まで揃ってしまったが、今の状態の俺には大声で叫ぶのは少し不味かったようだ。
叫んだ結果、思い切り咳き込んで止まらなくなり、それこそ死ぬんじゃないかと主様をおろおろさせてしまった。
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