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157話目

懐かしい夢を見る(ΦωΦ)


あと、幼児を寝かしつけようとする保護者二人です。

「ごちそうさまでした!」



 お礼を伝えに来たのにごちそうになってしまったりもしたが、それ以外は何事もなく俺達はイオとファスさんに見送られて馬車へと乗る。

 と、乗り込む前に待たせてしまった御者さんに、主様に収納から出してもらった先日のカツサンドの残りを渡す。

「お待たせしてすみません! これよかったら、あとで食べてください」

 戸惑っている御者さんにそう言ってカツサンドの紙包みを押し付けた俺は、主様から小脇に抱えられて馬車へと乗り込む。

 何故唐突に小脇に抱えられたのかはわからないけど。

 当たり前のように腰かけた主様の膝上に乗せられて、ゆっくりと動き出した馬車の中、顎を持ち上げられて視線を合わせられる。

 そのまま見つめ合うこと数分。

「ロコ」

「なに、主様」

 目が乾いてきたなぁと瞬きを繰り返していると、呼ばれたので答えると目を閉じたタイミングで瞼に口付けられる。

「なに?」

 行動の意味がわからず、もう一度問いかけるともう片方の瞼に口付けられる。

「何でもありません」

 何でもなくないだろうが、目を開けて見た主様の顔は満足げにぽやぽやしてたので、俺はどうでも良くなって「そっか」とだけ返しておいた。

「ただいま、プリュイー」

 声をかけながら玄関を開けた俺は、出迎えしてくれたプリュイへ勢いよく突撃する。

「オ帰りナサイ、ジル」

 俺の行動を読んでいたのか、プリュイは動揺の欠片もなく俺を包み込むようにして受け止めてくれる。

 きちんと人肌より少し温くなってくれている辺り芸が細かい……。



「って、やばい、寝そうだった!」



 プリュイの温度を目を閉じて堪能していたら、ふっと寝そうになってしまい、慌ててぶんぶんと頭を振る。

 本当に六歳児の体は睡魔に弱すぎる。

「ジル、スグ誘拐サレそうデス」

 眠気を飛ばそうとする俺を見ていたプリュイから、笑い声混じりながら心配そうな呟きが聞こえてしまい、俺はニッと笑ってプリュイを見上げて自信満々に胸を反らせる。

「これはプリュイ相手だからだよ。さすがの俺も知らない奴に抱えられて眠くはならないからな?」

 どうだとばかりにふふんと鼻を鳴らして笑っていると、はぁというため息が二つ聞こえて俺の体はプリュイのふるふるボディから主様の腕の中へと移動する。

「私では?」

「もちろん、主様の腕の中も安心するから、気をつけないと寝そうになるな」

 またふふんと鼻を鳴らして自信満々に答えてから、俺は今さらながら自分の発言に首を捻る。

「って、自慢にならないか」

 あははと今度は自嘲から笑い声を洩らしていると、主様から無言でギュッと抱き締められる。

 さっきの話を聞いてたんだろうか?

 こうされると、眠くなる……って……。



「っ! 寝かしつけようとしてないか?」



 カクンと首が落ちてハッとして目を開けた俺は、ジト目で間近にある完璧な美貌を睨みつける。

 無言のままでふいっと視線を外されたので、確信犯だったようだ。

「こんなところで寝かしつけようとしなくても、おとなしく昼寝するって」

 主様を押し退けるように軽く抵抗すると降ろしてもらえたので、俺は苦笑いしながら洗面所へと向かって歩き出す。

 ファスさんとうちの子ムーブで話してたから、

「小さい子にはお昼寝が大事よ〜」

とでも言われたのかもしれない。

 洗面所で手洗いとうがいをすると、すかさずプリュイが手と口元を綺麗にしてくれる。

 俺に続いて手洗いとうがいをした主様はというと、さすがに自分でタオルを使って拭いている。

「主様、付き合ってくれてありがとな。……プリュイ、一時間ぐらいしたら起こしてくれ」

 そう言った俺はプリュイが頷いたのを確認して踏み台を降り、一人でパタパタと自分の部屋へ向かって歩き出す。

 ちらっと背後を確認するが、主様はついてきていない。

 少し寂しいが主様もそこまで暇じゃないよな。

 寂しがるのは六歳児な俺か、ただただ主様が恋しい俺か。

 眠くなったせいか気持ち悪いことを考え出してしまい、俺は自嘲するように笑いながら自室のベッドへ飛び込む。

 前世のパイプベッドとは違って軋む音もしないベッドは、ふかふかとしたマットで俺を受け止めてくれる。

 主様やプリュイのような温もりはないが、絶妙な沈み加減にあっという間に睡魔が訪れてきて、俺は昼寝と言うには深過ぎる眠りへと落ちていった。

 夢の中で目覚めると、そこは懐かしい森の中で。

 夢の中で目覚めるという訳の分からない感覚ながら、俺はこれが夢の中だと理解していた。

 夢の中なせいか、それとも時間が経ったからかわからないが、あのオーガによって荒らされた森はほとんど回復している気がして、俺は安堵から笑う。

 残念ながら動物達はいないようだなと泉をぐるりと見渡すと、熊の大きな体を見つける。

『熊ー!』

 俺が呼ぶと、丸まって眠っていた熊が弾かれたように体を起こし、驚いたように目を見張って俺を見て「がうっ!」と一声吠える。

 俺が駆け寄ると、お尻をつく体勢で腰を降ろした熊が太い前足で俺を受け止めて、ふかふかな腹毛で包み込んでくれる。

 夢の中だけど久しぶりな懐かしい毛皮の感触を堪能していると、熊がスリスリと鼻先を俺へと擦りつけてくる。

 まるで匂いつけをするような行動は覚えがあり過ぎて、思わずくすくすと笑ってしまう。

 そのまま熊の腹毛の中で笑い転げていると、遠くから「わおーん」という遠吠えが聞こえてくる。

『犬だ! こっち来るかな?』

 夢だとしても久しぶりに会えるのが嬉しくて、遠吠えが聞こえた方へと顔を向けていると、徐々に真っ白で大きな生き物が近づいて来ているのが見える。

「がう!」

 白い犬が一声吠えると空気が震えて、元より清浄だった空気がさらに澄んだ気がする。

『犬ー』

 呼びかけると夢の中でもきちんと反応があって、何処となく不服そうな顔をした犬の黒い鼻先が俺の頭を小突く。

『もう何だよ』

 大きな頭にしがみつくように全身でわしゃわしゃ撫でていると、犬が呆れたようにため息を吐いて、先ほどの熊のように鼻先を擦りつけてくる。

 白い犬の大きさは、某有名アニメ映画の山犬のお母さんの方ぐらいなので、今の俺なんかペロッと一口で食べられてしまいそうだ。

 まぁ白い犬がそんなことする訳ないので、遠慮なくわしゃわしゃ撫で続けていると、黒い鼻先でちょいと顔を突かれる。

『夢でも会えて嬉しいよ。俺は元気にしてるから』

 そう報告すると、当たり前だろ、とばかりに白い犬から鼻息を吹きかけられ、俺の黒髪と熊の毛皮が揺れる。

「がうがうがう」

 熊からは『何かあったらすぐ帰ってくるんだ』的なことを言われて、野生の熊からされたら即死しそうなハグを受ける。

「がるる」

 白い犬からは『いじめられたらすぐ言え』的な一吠えと共に、ガジガジと甘噛みされて──。




 まだ色々と話したかったが、俺の意識は何かに引っ張られるように一気に覚醒していく。

 出来れば起きてもこの夢を覚えていられるといいなぁと思いながら、目を開けた俺の目に映ったのは、不満気な顔をした視界いっぱいの主様だった。

いつもありがとうございます。


夢の中までヤキモチを妬く気なのか。


そして、そろそろ誰かジルヴァラに白い犬が犬でないことを伝えてあげて欲しいです←


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