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154話目

今回短めです。


そして、寒い時期に始めた作品なので、まだこれから寒くなるというとても世間とはかけ離れた状況です。


夏の間に夏まで行ける気はしません←

「今日はありがと! 三人がいてくれて良かった」



「どういたしまして。ま、見送りはいいから、ゆっくり休めよ?」

「今日はお疲れ様でした」

「ジルヴァラ、頑張ってたわね。またいつでも呼んでくれて構わないわ」



 俺の部屋まで送ってくれたトレフォイルの三人はお礼を伝えた俺にそう言って帰って行き、何だか家の中が一気に寂しくなってしまった気がする。

 今日も泊まっていってくれるんじゃないかと思ってたので、少し……。


「寂しいなぁ」


 思わず口から出てしまった呟きに、俺は苦笑いして頬を掻く。

 大型犬かと思うような構い方をしてくるソルドさんとずっといたから、人寂しくなったんだろう。

 そんなことを考えながら、謎ぬいぐるみの待つベッドへと飛び込む。

 プリュイに片付けを任せてしまったが、何だか今日はとても疲れてしまった。

 なんだかんだで、俺はやっぱりまだ六歳児だ。

 ヒロインちゃんも、初めての依頼のあとは疲れてバタンキューだったのかな? それともヒロイン力で意外と何ともなかったのか?

 そんな取り留めもないことを考えながら、俺は謎ぬいぐるみをしっかりと抱き締めて眠りに落ちていった。








 夜の帳が下りた子供の自室の中には、子供の健やかな寝息だけが聞こえている。

 崩れた丸い形のぬいぐるみをしっかりと抱き締めて眠る子供に、そっと近付いていく人影が一つ。

 人影が動く度に常夜灯だけの薄明かりの中でも映える赤色がさらさらと揺れているのがわかる。

 子供の傍らまで辿り着いた人影は、僅かに色が変色した子供の頬を愛おしそうに撫でてから、眠る子供をベッドから攫っていく。

 相当眠りが深いのか、人影のことを信頼しきっているのか不明だが、脱力した子供に覚醒の気配はない。

 そのまま子供を抱えて人影は部屋を後にし、静かになった部屋へ残されたのは少し変形したぬいぐるみのみだった。

「自分の部屋で寝てたはずなんだけどなぁ……」




 どうやら真夜中に寂しくなった俺は、また寝惚けて主様のベッドへ侵入してしまったらしい。

 主様の睡眠の邪魔して無ければ良いけどと思いながら、俺は欠伸を噛み殺して静かにベッドを滑り降りる。

「これは金を貯めて、大きな熊のぬいぐるみ作ってもらおうかな」

 今の俺のサイズ感なら、そこそこ大きいぬいぐるみならしがみつく感じで寝られるだろう。

 さすがに主様のベッドへ侵入を繰り返すのは恥ずかし過ぎる。

「よし! 目指せ脱・主様のベッドだな」

 主様を起こさないように小さく気合を入れていると、不意に背後から伸びて来た腕が体へ巻き付いてきたかと思うと、抵抗する間もなくグッと持ち上げられてしまった。

「へ? ごめん、起こしたか?」

「……ロコは嫌なんですか?」

 誰だ? なんて考えるまでもなく主様だとはわかっていたので、反射的に起こしたことを謝ったのだが、そんな俺の台詞が聞こえていないのか、主様はどこか暗い声でそんなことを問いかけてくる。

「んー、何が? ごめん、主語がないとわからないや」

 わざとらしく……実際わからなかったので少しおどけて問い返すと、背後からだった抱えられる体勢が変わって主様と向き合う体勢になって、主様の表情がわかりやすくなる。

「私と寝るのが……」

「嫌な訳ないだろ?」

「なら、何故私のベッドから脱しようとしてたんですか?」

 じとりと見つめてくる主様に責められている気分になりながら、俺はへらっと笑ってひらひらと手を振る。

「ほら、俺って人寂しいのか、すぐ主様のベッドへ潜り込んじゃうだろ? 最初から一緒に寝てるならともかく、寝惚けて後から忍び込むなんてちっちゃな子みたいで気恥ずかしいんだよ」

「………………………そんなことないです」

 主様がそこまでためらうぐらいにはやっぱり小さな子っぽいんだな、寝惚けて潜り込んでくる俺って。

 全く記憶にないところが怖いよなぁ。

「森で熊にしがみついて寝てる時はそんなことなかったんだけどなぁ」

 あのあたたかく大きな体を思い出して手をわきわきさせながら、首を傾げてポツリと呟く。

 まぁ他に潜り込む先は、あの真っ白で大きな白い犬のお腹のところぐらいしかなかったし、俺がふらふらしようとすると熊が前足でホールドしてきてたんだけどな。

 俺の呟きを無言で聞きながら洗面所へ向けて歩いていた主様は、ぴたりと足を止めると俺の顔を覗き込む。



「ならば、私へしがみついて眠ればいい」



 珍しい主様の冗談めかせた言葉に、俺はゆっくりと瞬きを繰り返して主様の不可思議な美しい瞳を見つめ、ふはっ、と吹き出してしまった。

「ふふ。そっか、ありがと」

 真面目に返そうと思ったが、珍しい主様の冗談にウケてしまいどうしても笑い声混じりになってしまう。

 それが主様には不服だったのか、無言で見つめてきた後、がぶりと耳を甘噛みされた。

 言葉で説明するのが面倒になると、肉体言語に走る癖はどうにかして欲しい。

 そのうち俺の体、歯型だらけになりそうだ。



 洗面所へ辿り着いた俺達……歩いてくれたのは主様だけど、顔を洗い終えたところでプリュイと合流して、そのまま朝ご飯作りへ入る。

 さすがに昨夜食べ過ぎた自覚があるので、今日はシンプルに焼いた食パンと目玉焼きに、野菜と鳥肉がゴロゴロ入ったスープ(トマト味)だ。

 俺だけならパンとヨーグルトとサラダぐらいで良いけど、主様はたくさん食べるからな。

 主様も手伝ってくれたので、比較的簡単なメニューの朝ご飯をそこまで時間をかけずに作り終えて、いつもの場所で食べ始める。

 まだ冬へと移り変わり始めな時期だけど、朝は少し冷えるようになって来たので、魔法による全館冷暖房完備な主様の家の中でも肌寒い気がして、プリュイから暖炉へ火を入れてもらう。




 真冬なら寒さを理由に主様へしがみついて眠るのもありかもしれないな、とちょっと思ってしまった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


少し更新ペース落とさせていただきます。


感想、評価、ブックマーク、いいねなどわかりやすく反応くださり、ありがとうございますm(_ _)m

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