151話目
本日2話目です(`・ω・´)ゞ
前話と繋がりはないので、どちらから読んでもらっても大丈夫ですm(_ _)m
「サインを確認いたしました。こちら今回の報酬となります」
そう言いながらオーアさんがカウンターに置いてくれた報酬を、冒険者さんがわざわざ俺の元へ持ってきてくれる。
「ほら、ちっこいの。荷物取られないように頑張ったんだってな?」
「ありがと。そりゃ、俺だって冒険者なんだからな。預かった荷物は守るさ。……あと、俺の名前はジルヴァラっていうんで、よろしくな?」
ニヤリと悪戯っぽく笑う冒険者さんに、俺に出来得る限りのニヤリ顔で答えたのだが、ソーサラさんは「可愛い!」って抱き締めてくるし、周囲からは微笑ましげに見られているので、俺のニヤリ顔は失敗したらしい。
「言うねぇ、ちっこいの。それが出来なかったのが何人かいたみたいだぞ?」
そう言って肩を竦める冒険者さんはベテランっぽくて格好良い。
憧れの眼差しでおぉーと見上げていたら、照れ臭そうに鼻を擦って視線を外されてしまう。
「なんだよ、ジルヴァラ。俺にはそんな反応してくれたことないだろ」
そんな感じで冒険者さんを見ていたら、ちょうど野暮用から帰って来たらしいソルドさんが拗ねたように話しかけて来て、そのままソーサラさんの膝上から抱き上げられる。
「それはソルドが憧れられるにはまだ足りないということでは?」
拗ねるソルドさんをそう一言で切って捨てたのは遅れて現れて、ニコリと微笑むアーチェさんだ。
「そうなのか……ジルヴァラ……」
「んー、ソルドさんもたまにかっこいいぜ?」
きゅぅんという情けない副音声が聞こえそうなソルドさんの問いに、俺は素直にへらっと笑って答えておいた。
「そっか!」
お前それでいいのか? と言わんばかりの眼差しがアーチェさんから向けられているが、ソルドさんは気にした様子もなくニコニコ嬉しそうなので良いんだろう。
俺も何だか嬉しくなってへらっと笑ってソルドさんの笑顔を見つめていると、不意にその表情からいつもの取っつきやすい雰囲気がスッと消えて、鋭くなった眼差しが俺を見つめる。
「ソルドさん?」
「頬痛むか? 近くにいたのに助けられなくてごめんな?」
伸びて来たソルドさんの手が、おずおずと口の端から頬へとそっと撫でていく。
いつもとはかけ離れ過ぎた壊れ物を扱うような触れ方に俺は堪えきれずプッと吹き出してしまい、ソルドさんから睨まれてしまう。
「……大丈夫そうだな」
「というか、ソルドさんが謝るのは違うだろ。俺は冒険者になったんだからこれぐらいの危険なら想定内だし、そもそも俺が油断せず人通りの多い所まで駆け抜ければ捕まらなかったんだよ」
わざとらしくふんっと鼻を鳴らして強気に笑ってみせると、ソルドさんもやっと笑ってくれたが、離すと不安なのかギュッと抱き締められる。
「これぐらい、なんてことないって」
「だからって、無茶するのは無しだからな?」
「それは僕も言いたかったです」
「もちろん、あたしも言うわよ?」
ソルドさんを抱き締め返して背中をぽんぽんしてたら、仲良しなトレフォイルの三人から連携で注意をされてしまった。
「……なるべく気をつけます」
こうなると俺には逆らうことは出来ず……というか、逆らう必要もないので素直に頷いたのだが、そこでふと俺はソルドさんとアーチェさんが着替えていることに気付く。
「二人共、俺を追っかける時に変な所入って汚したのか?」
ソーサラさんは堂々と俺の背後を歩いていたが、ソルドさんとアーチェさんはバレバレながら一応物陰に隠れたりもしていたし、泥とか埃とか付いてしまったのかと思いながら訊ねる。
「え!? いや、その……っうぐ!?」
「えぇ、少し汗も掻きましたし、埃っぽい体で幻日様のお宅へお邪魔したくはありませんから」
思い切り挙動不審になったソルドさんは、アーチェさんに脛を蹴られて黙り込み、見事な蹴りを食らわせたアーチェさんが代わりに一切の淀みのない言葉で答えてくれた。
「幻日様も心配してらっしゃるでしょうから、早く帰りましょう。ソルドだと落としそうだから、アーチェがジルヴァラを抱っこしてあげて」
「はい。ジルヴァラ、こちらへ」
有無を言わせぬソーサラさんの仕切りによって、俺歩ける、という当たり前な反論は飲み込むしかなく、俺は脛の痛みで涙目のソルドさんからアーチェさんの腕へと移動する。
アーチェさんの負担を少しでも減らせるように首へと腕を回して、アーチェさんの頭へしがみつくように……って、あれ?
「……ジルヴァラ、前が見えません」
「ジルヴァラったら、可愛いけどしがみつき過ぎよ」
「俺が手を引いてやるか?」
笑い声混じりの三人分の突っ込みに、俺はちょっと気合を入れ過ぎたなと反省して腕の力を抜いてアーチェさんの首筋へ頬を付けるようにする。
俺の髪が当たってくすぐったいのか、アーチェさんからは小さく笑い声が聞こえて、
「今度は前が見えますね」
という声と共にアーチェさんが歩き出す。
「そういえば、俺の運んでた荷物盗ろうとしてた……」
見送ってくれるオーアさんとエジリンさんに手を振っていたら、さっきの件の顛末がどうなったかが気になって俺を抱えてくれているアーチェさんの顔を間近から見つめて訊こうと思ったのだが……。
「腹減ったな、ジルヴァラ! 早く帰ってカレーにしようぜ?」
無邪気な欠食児童のソルドさんの発言によって問いかけは有耶無耶になり、そのままカレーの上に乗せるカツは何のカツが美味しいかの話題へと雪崩込み、家へ着く頃には俺の頭の中からあの男のことはすっかりと抜け落ちてしまっていた。
●
「ただいまー!」
もしかしたら今日ぐらいは主様が玄関開けたらいてくれるんじゃないかと期待した俺は、馬車から降りる際にアーチェさんの腕からも降りて玄関へ向かい、思いきり良く扉を開けてみたのだが……。
「オ帰りなサイ、ジル」
そこにはふるふると笑って迎えてくれるプリュイしかいなくて、少し……ほんの少しだけがっかりしながらも、その感情を隠した俺はプリュイへ飛びつこうと思って駆け出す。
逆に主様相手なら飛びつくなんて出来ないし、これはこれで良かったのかもしれないと、へらっと笑ってプリュイのぷるぷるボディに飛び込もうとした瞬間、目の前が青ではなく白っぽい色に包まれる。
もちろん止まるなんて出来ず、白っぽい色の物に突っ込んだ俺は、その何かにしっかりと受け止められていた。
「え? あれ? 主様? プリュイ、何処行ったんだ?」
自分が飛び込んだ先がプリュイではないことに驚いて瞬きを繰り返していた俺は、見上げた先が主様だったことによりさらに驚いて瞬きの回数が増える。
「お帰りなさい、ロコ」
主様だったことにより抱きつくのを遠慮していたら、主様の方からギュッと抱き締めてくれて、主様の香りに包まれて俺は一気に体の力が抜けるのを感じる。
「ただいまー……ん?」
そのまま主様の香りを胸いっぱい吸った俺は、僅かな異臭を感じて眉を寄せて思わず主様を見上げる。
「主様、何処か行ってたのか? なんか血の臭いと、ちょっと何処かのおじさんの臭いが……」
「ロコ、まずは一緒にお風呂へ行きましょう」
みなまで言わせてもらえず主様に抱えられた俺は、据わった眼差しの主様によってそのまま浴室へと連行される。
さすがにこの発言は失礼だったかと反省しながら、俺は主様から感じた知らないおじさんのような臭いを何処かで嗅いだ気がして、一人で首を傾げているうちに、気付いたら主様によって全身ピカピカにされていた。
その後、自分の体を洗う主様の手付きは、いつもより力が入っているように見えて、俺は何だか申し訳なくなってしまった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
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主様が臭い訳ではないので!←




