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143話目

ついに内心で名前すら呼ばなくなったジルヴァラくん。


オーアさんは、クールビューティで仕事の出来る女性です(。>﹏<。)


今回、ちょっと短めですm(_ _)m

 やはりというかいつもフラグを建ててるのは主様らしく、俺とトレフォイルの三人では何事も起きず、馬車内は順調に乗客が減っていって、残ってるのは俺達だけになった。



「ソルド、そろそろいいんじゃないかしら?」

「そうですね、他の乗客もちょうど降りられて僕達だけですし」

「おう、そうだな」



 漏れ聞こえてくるのはそんな会話で、トレフォイルの三人は仲良しだなぁとソーサラさんの膝上で聞こえないフリをしていると、視界の端でソルドさんがゴソゴソしているのが見える。

 何してるのかなぁと思っていると、やがて何かを取り出したソルドさんが、それを俺の目の前に差し出してくる。

「これは、俺達三人からのお祝いだ、ジルヴァラ。色々悩んだんだけど、解体とか採集に使えるナイフだ」

 ドヤッと笑ったソルドさんから黒い鞘に入った黒い柄のナイフを差し出され、俺は思いがけない展開に大きく目を見張る。

「え……」

「三人であぁでもないこうでもないと悩んだんで、受け取ってもらえる嬉しいです」

 驚いて固まっていると、ふふと微笑んだアーチェさんからさらにそう言われてしまい。

「……迷惑だったかしら、ジルヴァラ」

 固まり続けていると、勘違いされてしまったのか背後からソーサラさんの悲しそうな声が聞こえてきて、俺は慌ててぶんぶんと首を横に振る。

「まさかお祝いなんてもらえるなんて思わなくて、すっげぇ嬉しくなって固まってただけ! ありがとう、ソルドさん、アーチェさん、ソーサラさん!」

 そう元気良く答え、ソルドさんの手からナイフを両手で受け取り、ギュッと抱き締める。

「そう、良かった」

 ふふっと吐息のような笑い声と共に、背後から伸びて来たソーサラさんの腕にギュッと抱き締められると、プリュイとはまた違う柔らかさなふわふわな感触に包まれる。

 今は肉体に引っ張られて精神まで幼児寄りなせいか、感じるのはただただ安心感だ。

「大事に使わせてもらうな?」

 嬉しさのあまり、ナイフをかざすようにしてみたり、色々な角度から眺めていると、いつの間にか冒険者ギルドの近くまで来てしまっていたらしい。

「ジルヴァラ、そろそろ到着するからナイフしまっとけ」

「そこまで喜んでもらえると、贈った方としては嬉しいですけどね」

「ナイフに夢中になってて可愛かったわ」

 三人三様の、それでいて共通して微笑ましげに声をかけられ、俺は照れ臭さからへらっと笑って「おう」と答えて貰ったナイフをしっかりとリュックサックへと仕舞う。

「今日は俺と手を繋いで降りような?」

 前回の件を思い出したのか、馬車から降りる直前にソルドさんがそう言い出して俺の手を握ってくる。

「わかった。よろしくな、ソルドさん」

 そのままソルドさんと手を繋いで、ソーサラさんの膝上から降りる。

 ソーサラさんはちょっと残念そうに俺のお尻に触って見送らないで欲しい。

 違うか。転ばないように支えてくれた手が、ちょうどお尻に当たっただけだよな。

「お膝ありがと、ソーサラさん」

「どういたしまして」

 うふふと笑うソーサラさんに邪気は見えず、やはりたまたま支えてくれた位置がお尻だったようだ。

 俺はへらっと笑い返してソルドさんから手伝ってもらって馬車から降りる。

 そんな俺をアーチェさんが何とも言えない表情で見送っていて。



「ソーサラ、いくらジルヴァラがいい子でも、あんまりあからさまなことは止めた方がいいですよ?」


「あら、嫌がってないんだから、少しぐらいいいじゃない?」



 そんな会話が交わされていたことを俺は知らない。

 ソルドさんと手を繋いで入ったせいか、冒険者ギルドへ入った瞬間、刺すような視線があちこちから向けられる。


 これはまさかラノベ定番の『ここはお前みたいなガキが来る所じゃないんだよ』って、絡まれる流れかとドキドキしていたが、残念ながらそんなことは全く無かった。

 というか、一番睨みつけてきてるのが、カウンター内にある某受付嬢で、俺はちょっと脱力しながらソルドさんを見上げる。

「大丈夫だ。絡んでくる奴がいたら、俺が追っ払ってやるからな?」

 俺が不安がってると勘違いしたソルドさんからは、そんな力強い台詞が返ってきたので苦笑いで返しておく。

 ソルドさんと手を繋いで並ぶのは、もちろんオーアさんの前だ。

 本日も何故か人気な某受付嬢の前とは違い、オーアさんの前には数名のベテランっぽい冒険者さん達が並んでいるだけだ。

 そこまで考えて、向こうの列が長いのは人気なせいも多少はあるだろうが、もしかしたら仕事をさばく速度の差なのかもしれないと思い至る。

 俺にとっては、どうでもいいことだけど。

 元々並んでいた人数も少なく、オーアさんは手際も良いので、あっという間に俺の番だ。

 精一杯背伸びしてカウンター越しに顔が見えるようにして、オーアさんへへらっと笑いかける。

「こんにちは! 今日は依頼を受けに来ました」

 普通の冒険者なら、あっちにある掲示板を見て依頼を選ぶんだろうけど、俺は特例なのでまずはオーアさんにご挨拶だ。

「こんにちは、ジルヴァラくん。……今すぐジルヴァラくんが受けられる依頼ですと、街中への荷物の配達作業となりますがよろしいでしょうか?」

「おう……じゃなくて、はい! 大丈夫です!」

 反射的に脳裏へ浮かんだウー◯ーイーツのお兄さんを打ち消しながら、俺は大きく頷いて見せる。

「荷物持つぐらいなら俺が手伝っても……」

「気持ちだけもらっておくよ。俺が自分で持って運ばなきゃ何の意味もないだろ?」

 すかさず手伝ってくれようとするソルドさんへそう告げると、目に見えてしゅんとしてしまった。

「そっかぁ……」

 ヘタッてしまった耳と垂れた尻尾の幻覚が見えそうなソルドさんの様子に、俺はちょっと考えて荷物から街の地図を取り出す。

「届け先までの道教えてくれよ。あと、どうしてもついてくるなら、後ろからこっそりついてきてくれよ?」

「おう!」

 それってもうこっそりじゃないだろと誰か冷静に呟いたようだが、ぶんぶんと尻尾を振る大型犬と化したソルドさんには聞こえていないだろう。

 実は俺も内心でそう思ってるけど、あえて言わないでおく。

 ここでソルドさんのこっそり尾行もまで断ったら、何処からか主様でも湧いて来そうだからな。

いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


ソルドさんのイメージはハスキーではなく、ちょっとお馬鹿なゴールデンレトリバーです←


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