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139話目

感想ありがとうございますm(_ _)m


アーチェさん、ジルヴァラほどではないですが、お酒弱いようです。

 馬車に乗ってから特に何事もなく、ソルドさんが絡み酒にシフトチェンジすることもなく、酔い潰れたアーチェさんが吐いてしまうなんてハプニングもなく、馬車は無事に到着した。

 


「アーチェさん、起きないな」

 いつもよりちょっと陽気なソルドさんが、酔い潰れたアーチェさんを背負って運んでくれて客間のベッドへ寝かせたのだが、ピクリとも動かない様子に俺はちょっと不安を覚えてソーサラさんを振り返る。

 ここでソルドさんを振り返らない理由は、察して欲しい。

「大丈夫よ。寝ちゃうから外では飲み過ぎないようにしてるのだけど、今日はジルヴァラが喜んでるのを見てて楽しくなって飲み過ぎたのね、きっと」

 うふふ、と慈愛溢れる笑みを浮かべて答えてくれたソーサラさんは、穏やかな寝息を立てるアーチェさんに布団を掛けてあげている。

「俺も寝るなー」

 へらへらと笑ったソルドさんが真っ直ぐに向かうのは、空いているもう一つのベッドではなく、ソファの方だ。

 そのまま止める間もなく、ソルドさんは靴を足で蹴るようにして脱いで、ソファに寝転がって寝息を立て始めてしまう。

「あ……」

「こういうこと自然に出来るから、意外とモテるのよ?」

 短く声を上げて驚く俺をよそに、ソーサラさんはこの展開を予想出来ていたのか悪戯っぽく笑って、予備の毛布を眠るソルドさんへかけてあげる。

 その手つきは何処までも優しい。

「さぁ、あたし達も寝ましょうね」

 そして、俺を抱き上げる手つきも優しくて──危うく流されて一緒のベッドで眠らされるところだった。

 トレフォイルの三人はそのまま寝ちゃったけど、酒場の臭いが気になった俺はソーサラさんの拘束から抜け出して、寝る前にお風呂へ入ることにした。



 そして、今度は──。


「ロコ、気持ちいいですか?」


「……おう」



 何か用事があると言っていたはずの主様が浴室へ乱入してきて、全身くまなく洗われていた。

 そのまま洗われ終わると、いつも通り主様に背後から抱え込まれる体勢で一緒に浴槽へ浸かる。

「用事は大丈夫なのか?」

「一旦終わらせて、今は小休止です。なので今日は一人で寝てくださいね」

「おう、わかった」

 独り寝が寂しいという年でもないのでへらっと笑って答えると、腹部に回っていた腕の拘束が強まる。

「……私は」

 そこで言葉を途切れさせた主様は、背後からがぶりと俺の首筋を甘噛みしてから、俺を抱えて浴槽から立ち上がる。

 ザバッと豪快に流れ出すお湯を目で追っていると、脱衣所へ続く扉が開かれ、そこにはプリュイがふるふると待ち構えている。

「魔法人形、あとは任せました」

 後ろ髪を引かれるような表情で俺を見てから、主様はプリュイへ俺を預けてあっという間に身支度を整えて出て行ってしまった。

 本当に文字通り小休止だったのだろう。

「え? 主様、俺をお風呂入れるためだけに帰ってきたのか?」

「ソノようデスね」

 どこか呆れたような呟きで俺の問いに答えてくれたプリュイは、こちらもあっという間に俺の寝支度を整えてくれ、そのまま抱き上げて部屋まで運んでくれた。

 もちろん本日は独り寝決定なので、自室の方のベッドだ。

 すでに謎ぬいぐるみも主様のベッドから移動済みなので、寝る準備は万端だ。

 プリュイは読み聞かせしてくれるつもりなのか、ベッドの側へ椅子を引き寄せてそこへ腰かけて待ってくれている。

 なんだかんだでプリュイが読んでくれる本にも興味があるので、俺はいい子で寝る体勢に入って、プリュイの方を窺い見る。



「本日ノ本ハ『楽しいはじめての愛人生活』デス」




 どうしてタイトルだけ流暢なんだ、とか。なんでその本を選んだんだ、とか。そもそもどんな内容だよ、とか。

 色々突っ込みたかったが、楽しそうに読み聞かせてくれるプリュイを横目に見てから、俺は静かに目を閉じてプリュイの声に意識を集中させる。





 おかげで愛人になって、本妻さんから『この薄汚い泥棒猫!』と罵られる夢を見て、変な時間に目を覚ましてしまうことになった。

「……愛人になる夢って」

 ナニソレオイシイノ状態で目を覚ました俺は、変にかいてしまった額の寝汗を拭いながら、安堵のため息を吐く。

 俺自身もヒロインちゃんから同じような扱いされてないか? とちょっと思ってしまい、背筋をゾワゾワさせていると、不意に部屋の扉が何の前触れもなく開く。

 主様か? と驚くこともなくそちらを見ていると、入って来たのは予想外の人物だった。

「アーチェさん?」

 俺の声が聞こえたのか、部屋へ入って来たアーチェさんの視線がこちらを向くが、どう見てもその表情は常とは違い……。

「どうかしたのか?」

 ふわふわした表情でベッドまで近寄って来たアーチェさんは、俺の問いには答えず俺を見てふにゃりと無防備な笑顔を浮かべたかと思うと、パタッとベッドへ倒れ込んできた。

「ちょ、大丈夫か!?」

 慌てて体を起こして、倒れ込んできたアーチェさんの顔を覗き込むが、そこにはすやすやと眠る穏やかな寝顔があるだけだ。

「え? 寝惚けてた?」

 今現在すやすやなところから推測すると、そういうことなのだろう。

 トイレか何かの用事で泊まってた部屋を出て、そのまま寝惚けて帰る部屋を間違えた、きっとそんなところだ。

 軽く揺さぶっても起きる気配はないし、時間的にもまだ早いので俺は諦めてアーチェさんの隣で横になる。

 一緒に旅してる時に雑魚寝とかもしてたので、特に忌避感とかある訳もなく、子供用にしては大きめなベッドはアーチェさんがいても特に狭いとは感じない。




 結論。すぐに俺もぐっすりと二度寝しました。




「うわっ……え? ジルヴァラ? なんで?」

 二度寝から目覚めたのは、そんな素っ頓狂な声と大きな衣擦れの音が聞こえたからだ。

 くしくしと目を擦って俺が目を開けると、思ったより近くにアーチェさんの顔があって、腕の中にいる俺を見て慌てきってバタバタしている最中だ。

 眠る前は俺とアーチェさんは離れていたが、今はアーチェさんが俺を抱き込むような体勢でくっついている。たぶん、俺が寝惚けてくっついたのだろう。

「ふぁ……ごめん……俺が寝惚けてくっついた」

 欠伸を噛み殺した俺は、モゾモゾとアーチェさんから離れて起き上がろうとする。

 アーチェさんはまだ驚きから回復出来ないのか、目を見張った表情のまま、俺の動作に合わせて一緒に起き上がり、ベッドの上で胡座をかく体勢で俺をそのまま抱え込む。

「……ここは、ジルヴァラの部屋ですか?」

 俺が体勢の不自然さにあれ? となっている間にやっと目が覚めたのか、アーチェさんは困ったように微笑んで俺の顔を覗き込んで訊ねてくる。

「アーチェさんは酔っ払って寝ちゃったし、主様に頼んでアーチェさん達うちに泊めたんだよ」

 コクリと頷いて返しながら、俺は二日酔いとかなってそうなアーチェさんの様子にこっそり安堵する。

「そうだったんですね、お気遣いありがとうございます。えぇと、それでソルドとソーサラは? 何故僕だけジルヴァラのベッドにいるんでしょう」

 酔い潰れたことが恥ずかしいのか、ほんのりと頬を染めたアーチェさんは、それでも律儀にお礼を口にして膝の上にいる俺へと頭を下げてから、おずおずと落ち着きなく辺りを窺う。

 俺がちょうど答えようとしたしたときだった。

「あぁ、それは──、



「悪い、ジルヴァラ! アーチェが行方不明なんだ!」



……寝惚けたアーチェさんが、俺のベッドに潜り込んで来たんだよ」



 台詞の途中、ノックもせず飛び込んで来たソルドさんによって遮られてしまったが、俺は一応最後まで言い切らせてもらってから、ソルドさんのことを見やってへらっと笑っておいた。

いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


アーチェさん、わざとではないので、排除されたりはしないですよ、たぶん←


そして、読み聞かせる本のチョイスが……なプリュイ。


そもそも買ったのは主様ですが(*ノω・*)テヘ


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