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14話目

ちょっと(?)絆されつつあるぽやぽやと、初志貫徹でずっとラブ(親愛)な主人公です。


いつかこれが激重ラブとラブ(親愛)になるのが大好物です(。>﹏<。)

『癒やしの魔法? まさか、君が聖女なのですか……』



 四角い画面の中、夕陽色の髪をした青年が白銀の髪をした美しい少女へ向けて、驚いた様子で話しかけている。

 俺はコントローラーを握り締め、少女に答えさせるため、選択肢を──。




 そこでふっと意識が浮上する。


 現実となってしまった夢のような世界。


 バッチリと開けた目の前には、夢の中で見た相手が俺のすぐ隣で寝息を立てている。

 思わず声をかけそうになったが、よく眠っているのを見て、飛び出しそうになった言葉を飲み込み、主様を起こさないようゆっくりとベッドから起き上がる。

「……あー、もしかして、また前世思い出して気絶しちゃったのか」

 ほとんど覚えていないが、俺は夢の中であのゲームの画面越しに主様を見つめていた気がする。

「主様が推しじゃなかったのは、覚えてるんだけどなー」

 他にもなにか思い出せないかと自分に向けて呟くが、もちろん答えがあるはずもなく、俺はベッドに腰かけてパタパタと足を揺らす。

 俺の推しはヒロインちゃんと、メインヒーローだった冒険者の少年だ。どちらも名前は覚えてない。

「……早くドリドル先生から許可出るといいけど」

 高熱で数日寝込んだ俺は、主様相手でも一歩も引かないドリドル先生から、トイレの時以外ベッドから降りることは禁止されているのだ。

 出来れば主様の気が変わって旅立ってしまう前に、落ちてしまった体力を少しは戻したい。

 なにせストーカーするには体力がいる。

 俺に気を使わないで走る主様に追いつける気はしないが、行き先は王都だとわかっている。

 寝る間も惜しめば追いつけるかもしれない。主様、意外と寝汚いし。

 現に今も俺には広すぎるベッドの半分を占領し、すやすやと静かな寝息を立てている。

 寝顔も綺麗な主様に、思わずぽーっと見惚れていると、なんだかつられて眠くなってきた。

「も、ちょっと、ねよ……」

 触れないように注意して主様の隣へ寝転ぶと、寒そうな主様へ俺に掛けられていた毛布を掛けてやり、俺は置いてあったドリドル先生の白衣を拝借して包まって横になる。

 森で暮らしてた頃は、よくこうやって寝てたので寒くて眠れないなんてことはない。けれど、こんな肌寒い日は森の仲間達のもふもふな毛皮と温もりが恋しくなる。

 ほんの少しだけ滲みそうになった涙を瞬きで散らし、俺は薬の匂いのする白衣の中で目を閉じて眠りに落ちていった。

「……る……か!?」

 次に目覚めかけたのは、ドリドル先生が誰かを叱っているような声が遠くから聞こえたからだ。

「むぅ……」

 もうちょっと寝ていたかった俺は、包まっていたドリドル先生の白衣をしっかりと握り締めて、体をさらに小さく丸める。

 近くにはすっかり慣れ親しんだ主様の気配があるので、危ないことは何も起こらないのを肌で感じられるせいもあり、起きなければという気にならない。

「も、ちょと、ねましゅ……」

 白衣を奪おうとする手にモゴモゴと答えたつもりだが、ちゃんと声に出せたかは微妙だ。

 前世の夢を見たせいか、正直寝た気がしなくて、寝足りないんだと思う。説明しても通じないから言わないが。

「……いい……ですね」

 ドリドル先生の苦笑混じりの優しい声が聞こえた気がし、俺の体に何かがさらにふわりと掛けられた……気がした。




「……ヴァラ、ジルヴァラ、そろそろ起きて何か食べてください」

 ゆさゆさと軽く揺さぶられ、寝足りていた俺は今度こそゆっくりと覚醒する。

 正直、お腹も空いていた。

「あい……」

 目を開けても視界は真っ白で一瞬固まるが、すぐ白さの正体に気付いて、モゾモゾと動いた俺は包まっていた白衣から顔を出す。

 そのままベッドにぺたんと座り込んでいると、くすくすと笑っているドリドル先生から頭を撫でられる。

「そろそろ白衣を返してもらえますか?」

「あ、ごめん! 白衣ありがとうございました」

 包まっていた白衣を脱ごうとした俺は、そこで主様に掛けたはずの毛布が白衣の上から自分を包んでいることに気付く。

「主様、起きたんだ?」

 ドリドル先生へ白衣を返しながら、首を傾げて訊ねると、苦笑いしたドリドル先生が目線で仕切りの布の方を示す。

「ん?」

 示された方を見ると、そこにはお盆を両手で持った主様が、ぽやぽや笑って待機していて、俺と目が合うとぽやぽやを増やして近寄って来る。

「ジルヴァラの毛布を奪って寝てたので、バツとしてご飯を持って待機させてました」

 タイミングいいな、と言いかけた俺は、予想外過ぎるドリドル先生の言葉に、思わずドリドル先生を二度見する。

 苦笑いして主様を見ているドリドル先生の目が全く笑ってない。

 とんだ濡れ衣を主様に着せてしまったことに気付き、俺はわたわたと手を無駄にバタつかせてドリドル先生の服をはしっと掴む。

「先生! 俺が夜中に主様へ毛布を掛けたんだよ! 俺はこのぐらい寒さなら平気だし! 森の中ではいつもそうやって寝てたから……」

 ドリドル先生の目力に、主様をフォローする言葉は尻すぼみになっていき、最終的に俺は誤魔化すようにへらっと笑っておいた。

 しばらく俺を見ていたドリドル先生は、はぁとため息を吐いて、俺の頭をぽふぽふと撫でる。

「ここは森の中じゃないですし、いい大人がこんな幼い子供の毛布を借りて寝てるのが問題なんですよ」

「……俺がしたかったから、したんだけど、なんかごめんな、主様」

 俺が知らないうちに巻き込まれて叱られていたらしい主様に、ベッドに座ったまま頭を下げると、ぽやぽやと微笑んで首を傾げられた。

「その人は私に何か言われて気にするような人ではありませんよ」

「そう、か?」

 俺の元へお盆に乗ったままの食事を差し出してくれる主様は、ちょっとだけ萎れて見えるけど、気のせいなのか。

「ありがとう、主様」

 受け取ったお盆に乗せられていたのは、お椀に入った何かをすり潰したような白いドロドロだ。見た目はお粥だが匂いは甘い。

「……これって」

「ミルク粥です。あまり重いものは病み上がりによくありませんから」

「そっか、ありがと! いただきます!」

 仕切りの布の陰からちらちらと窺っていた炊事担当の騎士へとお礼を言ってから、木のスプーンを持って程よく冷めていたミルク粥を口に運ぶ。

 メイナさんちで最初に食べた時は驚いたけど、今では好物の一つだ。もともと、前世でもきな粉をご飯にかけて食べてたりしたから、米を甘くして食べることに違和感が無かったし。

 俺がミルク粥を味わって食べてると、主様から見つめられていることに気付き、首を傾げて主様を見つめ返す。

 無言で見つめ合うこと数十秒。

「もしかして食べてみたいのか?」

「いえ。ロコがあまりにも美味しそうに食べてるので……」

 俺の問いかけに首を横に振った主様だが、視線はミルク粥の入ったお椀から離れない。

「ほら、一口食べてみれば? 気に入ったなら、騎士さんに頼んで持ってきてもらえばいいだろ」

 他人が食べてるのって美味しそうに見えるよな、と俺はミルク粥を掬ったスプーンを主様の方へと差し出す。

「……甘い?」

 受け取ってくれるかと思った主様は、普通に俺が差し出したスプーンへそのままぱくりと食いつき、ぽやぽやと瞬きを繰り返している。

「好みは分かれるだろうけど、俺は好きだよ。メイナさんのも美味しかったけど、この騎士さんの味付けも優しい感じがして好きだな」

 主様的に甘い米に違和感あるのかと思ってそう言ったのだが、特にそんな訳ではなかったらしく、無言で首を傾げられる。

 ついでに向こうの方で誰かが何かひっくり返したらしく、ガシャンガシャンという音の後に、しっかりとしろ! とか色々聞こえてきている。



「私も嫌いじゃないです。……今度、ロコが作ったのが食べたいです」



 音に気を取られていたら、唐突に主様がそうポツリと呟く。

 ミルク粥を食べていて一瞬聞き流しそうになった俺は、え? と主様を見やり、ぽやぽやと微笑む顔を見て、やっと言われた内容を理解出来て、壊れた人形のようにガクガクと大きく頷く。

「ああ、今度は俺が主様のために作るから、楽しみにしててくれよ」

「はい」

 俺の言葉に微笑んで頷き返してくれた主様は、先ほどのドリドル先生を真似るかのようにぽふぽふと俺の頭を撫でてくれる。

 とりあえず、まだストーカーはしなくて大丈夫そうで、俺はこっそり胸を撫で下ろしていた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


きな粉ご飯は、私も好きです←

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