135話目
感想ありがとうございます(。>﹏<。)
本作の悪役より悪役しちゃいましたね、ネペンテスさん(*ノω・*)テヘ
まあ、行動の根幹にあるのはヒロインちゃんなんで!←
「もう『えこひいき』はないらしいから、手続きを進めるぞ。全く……」
さすがに言い返すことは出来ず、グッと息を呑んだネペンテスさんに、アルマナさんは苦笑いしてエジリンさんとオーアさんへ声をかけている。
「色々言われて、嫌だったでしょう、ジルちゃん。お姉さん、慰めてあげるわ」
俺をギュッと抱き締めてくれるアシュレーお姉さんが、そう言ってちゅっちゅっと髪へと口付けている気配がある。
決して嫌な訳じゃないけど、元日本人な俺には触れ合いが激し過ぎて恥ずかしい。あと、主様が真顔になったのは大丈夫か?
「……でも、そのおかげで、俺にはこんなに応援してくれる人がいたってわかって嬉しいです」
ひとまずじっと見てたら大丈夫そうなので、へらっと笑って、アシュレーお姉さん、トレフォイルの三人、森の守護者の四人、そして手続きを進めてくれつつ、ネペンテスさんを叱っているエジリンさんを時順繰りに見る。
すると、たまたまネペンテスさんとも目が合ってしまった。
「何よ! ……そうですよ、そんな抱っこされてるような小さい子なんですから、もっと後見増やした方がいいですって」
叱られてたのは全く堪えてないらしく、ネペンテスさんはエジリンさんを無視して、さっき自分が書き足した書類を手に取ってペンで何かをしようとした瞬間──、
「きゃあ!?」
かなり痛そうな悲鳴を上げてペンを取り落とし、自らの右腕を抱き締めてしゃがみ込む。
「え? なんだ? ネペンテスさん、大丈夫?」
悲鳴を聞いて慌てた俺は、アシュレーお姉さんの腕の中から乗り出すようにネペンテスさんの様子を窺う。
いくらあんな性格の人でもか弱い女の人なんだし、目の前で悲鳴を上げられたら俺は無視することが出来なかった。
そんな俺の気持ちを汲んでくれたのか、アシュレーお姉さんも同じタイプなのか、俺を抱えたまましゃがみ込んだネペンテスさんの近くへしゃがみ込んでその顔を覗き込む。
「あら、本当にお馬鹿ちゃんねぇ。他のとこの冒険者ギルドはともかく、ここのギルドでは、ギルドマスターが一枚一枚書類にきちんと契約魔法を施してるのよ? 意に沿わないからって、自らが署名した物を勝手に書き換えようとすればそうなるわよ。よかったわねぇ──場合によっては、右腕失くなるからな?」
最後のドスを効かせた一言は、ネペンテスさんだけでなく、周囲の冒険者へと向けられていた気がして、俺は目を瞬かせてアシュレーお姉さんを見つめる。
「意外と多いのよ。依頼が達成出来なかったのを誤魔化そうと書類を改竄するお馬鹿ちゃんが」
「依頼が達成出来ないと何かあるんですか?」
「うふふ、それはこれから手続きする時に、オーアちゃんか、うちのエジリンから説明があるわ。だから、ちゃんと聞いておくのよ?」
「はい!」
挙手付きで返事をすると、いい子ね、と柔らかく笑ったアシュレーお姉さんから撫でられ、立ち上がったアシュレーお姉さんにより俺は主様へと返却される。
ネペンテスさんは、まだ痛がってたけど放置……とはいかずに、やって来た女性ギルド職員により無理矢理立たされて、そのまま何処かへ連れて行かれた。
「痛い痛い痛い……っ」
そんな声が徐々に遠ざかり、やがて聞こえなくなる。
「受付嬢さん、大丈夫かな?」
「死にはしません」
さすがのぽやぽやした主様もネペンテスさんの数々の茶々入れに少しイラッとしていたのか、俺の問いに対する答えはにべもない。
アシュレーお姉さんの言い方だとあれ以上悪化はしなさそうだし、あれだけ声が出せてるなら大丈夫かと俺は視線をカウンターの方へと戻す。
「最後まで付き合いたかったが、俺達は受けた依頼の時間があってな。これで失礼するよ。もし何かあったら、遠慮なく呼んでくれ」
そう言って話しかけて来たのは森の守護者のリーダー、エルデさんだ。
「ありがとうございます、エルデさん、皆さん。今度、皆でご飯食べたりしたいです! 森の様子、教えてください!」
主様の腕の中でペコリと頭を下げると、エルデさん、ティエラさん、シムーンさん、ルフトさんの順で俺の頭を撫でてくれて、後日ご飯を食べる約束をして森の守護者の面々は去っていった。
「アタシも指名依頼来てるから行かないといけないわ。ギルドマスター、うちのエジリン借りてくわねぇ〜。ジルちゃん、お姉さんとも今度デートにしてね」
そう言ってばっちんと音がしそうなウィンクを残したアシュレーお姉さんは、一通りの事後処理を終えたエジリンさんを連れて冒険者ギルドを颯爽と出て行った。
エジリンさんは、後ろ姿でも相変わらずの社畜サラリーマンのままだったけど。
「良かったなぁ、ジルヴァラ。まさか、アシュレーさんとも知り合いだったなんて、お前は顔広いなぁ」
何となくエジリンさんを見送っていると、近寄って来た笑顔のソルドさんに髪がぐしゃぐしゃになるぐらい力強く頭を撫でられる。
「おう、ソルドさん達がいてくれて良かった。俺と主様だけだったら、あの受付嬢さんの勢いに負けてそうだったかも。アシュレーお姉さんは、屋台でアクセサリー売ってるぐらいしか知らなかったんだけど……有名人なのか?」
さっき毛づくろいした俺の髪を乱されたのが気に食わなかったのか無言でソルドさんの手を押し退けた主様によって髪を梳かれながら、俺は若干青ざめた顔のアーチェさんから回収されたソルドさんを見て訊ねる。
「アーチェ、説明頼む」
「えぇ、そうですね。本職は装飾作りで、自分の作りたいアクセサリーの素材がなかなか手に入らず、依頼を出したら受けた冒険者の態度があまりに悪くてブチ切れて、だったら自分で獲ってきてやる、となって冒険者へなった方なんで」
ソルドさんは説明が面倒だったのか、そもそも知らなかったのかはしらないが、説明をアーチェさんにぶん投げてソルドさんはさっきネペンテスさんが消えていった方向を見ている。
「あのネペンテスとかいう受付嬢、何であそこまで人気あるんだろうなぁ」
「見た目だけはそこそこ可愛いからでしょう」
ネペンテスさんが聞いたらグサグサ刺さりまくること請け合いなソルドさんの素らしい疑問の呟きに、ソーサラさんがどうでも良いと盛大に描かれていそうな表情で答えている。
「あとすっげぇ素朴な疑問なんだけど、何であんなに偉そうなんだ? いや、受付嬢だからって差別してる訳じゃないぞ?」
俺もちょっと気になってた疑問を口にするソルドさんに、ソーサラさんはツンッと顎を反らせるような仕草を見せて艶やかに笑う。
「親の七光りらしいわ。本人が『あたしはとある貴族の落し胤なんですから』って言ってたそうだし」
「なんだよ、それ」
内心でソルドさんと同じ突っ込みをしつつソーサラさんの話を聞きながらも、俺はアーチェさんの説明にも、へぇ、と相槌を打つ。
両方とも気になる内容だったんで、両耳で聞き取ろうと頑張ったが、そろそろ目の前のアーチェさんに集中しないと失礼だよな。
「それでA級冒険者まで行けるって、アシュレーお姉さん、とんでもない人だったんだな」
「相棒をされてるエジリンさんも、かなりの猛者だとは噂されてますが、その実力を見た方はいないようですね」
「おー、なんかカッコいいなぁ、それ」
見た目は社畜サラリーマンだけど実は……? 的な設定ありそうだよなー。
「あの方へ憧れてる冒険者も多いんですよ」
「それでさっきアーチェさん達も、エルデさん達も、ちょっとザワザワしてたんだな」
憧れの有名人が現れてザワザワしてたかと思うと、ちょっと微笑ましい。
そんな感じで聞き耳立てつつ、アーチェさんと雑談して待っていると、アルマナさんがスタスタと近寄って来る。
「ほら、ジルヴァラ専用の冒険者登録の書類だ。ここにサインをしてくれ」
そう言ってアルマナさんが差し出してくれた書類には、
『特例冒険者登録書』
と書かれていて、冒険者ギルドの方針へ従うこと、というとんでもなく大雑把な注意書きがあって、その下に俺の名前とか年齢を書く欄がある。
「主様、降ろして」
「ロコ」
「抱えられたままじゃ書きにくいんだって」
俺がそう訴えても降ろしてもらえなかったが、ニヤリと笑ったアルマナさんが、
「ジルヴァラにウザがられる前に離しとけ」
と冗談めかせて言ってくれた瞬間、俺は踏み台の上に立っていた。
「お、おぉ、ありがと?」
「私はウザくありませんから」
疑問形のお礼を言うと、やたらと目を据わらせてぽやぽやした主様から圧をかけられ、俺は頷くしかなく──。
アルマナさんが俺達のやり取りを見て大笑いしていた。
いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
ネペンテスさん、とりあえず物理的ざまぁを受けて退場です(*>_<*)ノ大丈夫! 全然反省も諦めもしてませんので!
ネペンテスさんが何故あそこまで偉ぶれるのか。の解答は、人気がある可愛い子なのもありますが、貴族の血が入ってるからでしたー。
アルマナさんは、権力に屈したと言うより、貴族の口出しがウザい感じですね。でも、ネペンテスさん、あまりやり過ぎると『パパ』より大物が出てきちゃうかも?
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ネペンテスさん、無事にヘイトが集まっていて良かったです←




