133話目
パーティー名ダサいなぁという突っ込みはなしで(*ノω・*)テヘ
ネペンテスさん、うざいなぁとジルヴァラと一緒に思いながら書いてます(^^)
前回、感想のお礼を書き忘れた気が……すみません!
いつもありがとうございます(。>﹏<。)
「失礼ですけど、あなた達は無関係でしょう?」
「いや、俺達はその子と無関係ではない」
上司相手にはあんな感じなのに、冒険者相手だと意外とちゃんとした対応のネペンテスさんに俺が驚いている間に『森の守護者』さん達は目の前まで近寄って来ていた。
俺を見つめる男性四人組。
何だか全員感慨深げな目で優しく俺を見守るように見つめていて。
やっぱりその顔には見覚えがある。パーティー名もまんまだし、きっとそうなんだろう。
「あの、もしかしてだけど、聖獣の森に来てた冒険者さん達?」
俺がおずおずと問いかけると、四人は笑顔を浮かべて揃って大きく頷いてくれた。
「いや、でも後見になってくれるのは嬉しいですけど、俺とは初対面な訳だし……」
「そうなんですかぁ? なら、止めといた方がいいですよ〜。その子が何か問題起こしたら、貴方達が責任取らないといけないんですよ?」
ネペンテスさんが少々うざいが、言ってくれてることは正論なので、俺は一緒になって頷いておく。
なので主様は小声で「ぶち殺します?」とか言わないで。
俺はちょっと危機感を覚えたので、主様に抱っこを要求して両手を塞いでおく。
俺の恥より、一応ネペンテスさんの安全のためだ。
主様は魔法で相手をヤるんだから、両手を塞いでおいても何の意味がないことに気付いたのは、だいぶ経ってからだった。
「あー、それと同じことを言うの面倒だが、後見になってもらうと、ジルヴァラが何かやった場合は……」
ニマニマしてるネペンテスさんをチラ見しながら、アルマナさんが肩を竦めながら説明するのを、先ほど一番に声を上げたリーダーらしい無骨な雰囲気の男性が大きく首を振って制止する。
「話の腰を折って悪いが、俺達はきちんと理解した上で後見になることを全員で決めている。──君にとってはほぼ初対面だろうが、俺達は君が赤ん坊の頃から見守ってきた。どうかこれからも見守らせて欲しい。まぁ、俺達に出来ることなどたかが知れてるかもしれないが」
リーダーさんは台詞の前半をアルマナさんへ向け、少し間を空けて主様に抱えられて目線の高くなった俺を真っ直ぐに見つめて、そうゆっくりと言い聞かせるように話しかけてきてくれる。
残りの三人も、リーダーさんの後ろでコクコクと首を縦に振り続けている。
「……ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
何故かリーダーさんの台詞の後半辺りから抱き上げてくれてる主様の腕に力が入ってきた気がするが、俺はそんなことはとりあえず放置して、へらっと笑ってリーダーさん達へ感謝を告げる。
小さく「ヤベ、妖精笑ってるし」とかちょっとチャラそうなお兄さんが謎の呟きを洩らし、細身美人な剣士のお兄さんに脇腹をどつかれて呻いている。
こちらもトレフォイルの三人同様仲良しらしい。
嬉しくなってえへへと笑っていると、主様が無言で俺の髪の毛に頬擦りをしてくる。謎だけど、苛立ち紛れかもしれないので気にしないでおく。
そもそも嫌じゃないし?
「あー、じゃあ、君達もサインお願い出来るか? エジリン」
「はい。書類はここに」
アルマナさんが名前を呼ぶのと、エジリンさんが書類を差し出してくるのはほぼ同時だった。
見事な連携っぷりに俺が、おぉ、と小さく声を上げると、それが聞こえたのかエジリンさんの笑顔をちょっとだけ見られた。
リーダーさん改め『森の守護者』のリーダー、盾使いのエルデさん。
細身で穏やかな、怒らせると怖い美人剣士のティエラさん。
緩くてチャラい感じのイケメン(笑)で斥候と遊撃担当のシムーンさん。
メンバーで一番年下で物静かな魔法使いのルフトさん。
これが森の守護者の面々だ。
パーティー名は、あの村の近くにある別の集落出身で、拠点もそこだからだそうだ。
全員にサインをもらう間、シムーンさんが代表して緩くそんな感じで全員の紹介をしてくれた。
その間も俺は主様に抱えられたままだったが、誰も気にしてない。
A級冒険者となると、胆力がついて主様にも怯えないのかもしれない。
ネペンテスさんが茶々を入れてくるかと思っていたが、今は静かに微笑んで手続きが進むのを見ているだけだ。
あれ? さっきまでのは本当に心配してくれてただけ? と俺としては肩透かしを食らった気分でいたが、アルマナさんは何ともいえない表情でネペンテスさんを見ている。
その表情の意味がわかったのは、エルデさん達のサインが済んで、今度こそ手続きをとなった段の時だった。
「え? 何しれっと手続きしようとしてるんですか?」
無邪気に見せかけて何処か底意地の悪い表情を浮かべるネペンテスさんの言葉の意味がわからず俺がきょとんとしていると、ネペンテスさんは勝ち誇った顔で手続きのための書類を持ってチラつかせてくる。
それはさっきネペンテスさんがオーアさんから奪って、自らの署名付きで何かを書き足していた書類だ。
「ここにちゃんと書いてあるじゃなきですかぁ。『二組より多くのA級パーティーを後見にすること』って」
「やっぱり、か」
アルマナさんは見ずにネペンテスさんがしそうなことを察していたらしく、冷め切った眼差しをネペンテスさんへ向けている。
「ほらほら、手続きには最低でも三組のA級パーティーが必要じゃないですかって、あたしはきちんと書きましたよ」
うわぁ性格悪いなぁとイラッとする大人の俺と、冒険者になれないの? と悲しむ子供の部分の俺がせめぎ合い、感情の箍が外れそうで俺は潤んできた目を隠すため主様の服に顔を埋めてスーッと匂いを嗅ぐ。
肺一杯主様の匂いになると、だいぶ落ち着く。
主様もわかってくれたのか無言でギュッと抱き締めてくれて、しばらくじっとしていたが、やけにネペンテスさん……とついでに周囲が静かなことに気付いて恐る恐る主様の服から顔を上げる。
絶対ネペンテスさんは「やっぱり小さい子だから〜」とか煽ってくるだろうなぁという気恥ずかしさから、伏せ目がちに周囲を窺う。
しかし、目の前で先ほどまで可愛くないドヤ顔をしていたネペンテスさんは、無言のまま……というか真っ青な顔で涙と鼻水を垂らしてガタガタ震えている。
この数分で何があった? と目を見張って周囲を見渡すと、野次馬をしていた冒険者もほとんど顔色悪くガタガタしていて、平然としているのはトレフォイルと森の守護者のメンバー、それとアルマナさんとエジリンさんだけだ。
オーアさんは少し顔色が悪い。けど、キリッと仕事モードの顔でカウンター内に立っている。
「ロコ、泣かないで」
「泣いてないし」
顔を上げた俺に気付いた主様が、目尻に口付けてくるのをへらっと笑って流しておく。
うるうるしてるかもしれないが、泣いてはいない……まだ。
「お前、魔力垂れ流すな。ネペンテス、死にそうだろ」
「知りません」
アルマナさんの呆れきった声に、主様は駄々っ子のようにふいっと視線を外して俺をギュッと抱き込んでくれる。
俺がネペンテスさんにいじめられてるように感じて怒ってくれたのかもしれない。
怒ってくれるのは嬉しいが話は出来ないし、弱い者いじめにしか見えないので、不機嫌さを隠さない主様の髪を軽く引っ張る。
「主様。魔力垂れ流すの止めてくれよ。話が出来ないだろ? 別にネペンテスさんは嘘吐いた訳じゃないんだし」
「……」
無言のまま、逆の方向にふいっと顔を背ける主様。
「主様」
もう一度呼ぶと、やっと魔力を垂れ流すのを止めてくれたのか、ネペンテスさんはその場にへたり込む。
涙と鼻水で顔が酷いことになったネペンテスさんに、ソーサラさんがそっとタオルを渡してあげている。
ソーサラさん優しいなぁと見ていたら、目が合ってニコリと微笑まれた。
「こ、これが幻日の魔力……」
「死ぬかと思った」
「ネペンテスちゃん、ある意味、すげぇな」
ネペンテスさんと同じく魔力にあてられていた野次馬冒険者達も復活して、そんな事を口々に喋り出している。
ダメージは少ないようで何よりだ。
「お、脅したって、あたしは屈しませんよ! こうやって、書類にはきちんと書いてあるんですから」
こちらもダメージは少なかったらしい。
タオルで顔を拭いて、いかにも自分が正義です! という表情でこちらを睨むネペンテスさん。
それをぽやぽやと無視している主様。
後見のサインをしてくれたトレフォイルと森の守護者の面々は、心配そうにこちらを見ているが、これ以上の口出しは出来ないので無言だ。
「さすがにもうそんな小さな子の後見になってくれるA級パーティーなんていないでしょ? 諦めてくださいねぇ」
ドヤッとネペンテスさんが言った瞬間、何かフラグっぽいとは思ったが、ネペンテスさんの言葉通り名乗り出る人がいないことはわかっていたので、俺はどうしようかと何となく周囲を見渡し、ちょうど扉から入って来た人物と目が合った。
「あらあらあら、今日はずいぶんと騒がしいのねぇ」
おっとりと柔らかい女性のような言葉使いながら、その声は低めのバリトンボイス。
すらりとした立ち姿も、服の上からでもわかる引き締まった柔らかさとはかけ離れた細マッチョ。
一度見たら忘れないであろう個性的な顔見知りの相手に、俺は小首を傾げて相手の名前を口にする。
「アシュレーお姉さん?」
「あら、ジルちゃんもいたの? はぁい、アシュレーお姉さんよ?」
周囲の空気なんて気にせず、うふふと笑って手を振ってくるアシュレーお姉さんに、俺はひとまずへらっと笑って返しておいた。
いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
久しぶりのアシュレーお姉さん登場です(`・ω・´)ゞ
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