125話目
今回はプリュイとお風呂ー(*´∀`*)
主様に世話を焼かれ……というか、主に顔面とか手とかを舐めて綺麗にしてもらっての夕飯を終え、一休みした後は一人でゆっくりお風呂へ──とはならず。
「今日ハ、ワタクシと入りまショウ」
つるりとした面で勝ち誇った顔という器用な表情をするプリュイと一緒に入浴となったようだ。
主様がプリュイの背後でちょっと悔しそうな顔をしてるので、もしかしたらだけど、俺をどちらがお風呂へ入れるかという話し合いがあったのかもしれない。
どういう流れで、魔法人形であるプリュイが主人であり創造主でもある主様に勝ったのかは謎だ。
脱衣所へ着くと、脱ぐ必要がないプリュイは嬉々として俺の服を脱がせてくれ、俺がくすぐったさで身悶えてしている間に浴室へと運んでくれる。
「脱ぐのは自分でしたいなぁ」
俺の弱々しい訴えは、たぶんまた次回には忘れられているだろう。
俺を脱がせてる時のプリュイ、かなり楽しそうだったし。
実際、今も楽しそうにふるふるして俺を洗ってくれている。
ここに傍観者がいたとしたなら、ショタをスライムがこねくり回すという、R指定不可避な光景が見られるだろう。
「あはは、くすぐったいって」
「ジル、じっとシテくだサイ」
ある意味、拷問的な時間が終わった俺は、くたりとした状態で浴槽へとプリュイによって運ばれる。
「……ちなみに、プリュイお湯に溶けたりしないよな?」
プリュイが溶け出したらお湯にとろみがついて、ピンクな雰囲気になるだろうなぁとぼんやりと口から呟きが溢れる。
「ハイ。ワタクシは幻日サマノ炎、氷、両方ニ耐えラレるようになってマス」
「へぇ、さすが主様だな」
プリュイに抱かれたまま浴槽へ浸かり、お湯の気持ち良さからふぁーと気の抜けた声を洩らした俺は、つい先程の自分のとんでもない発言に気付いて首を捻る。
「え? 待って、主様の炎も氷も耐えられるのって、魔法防御力に関してほぼ最強なんじゃないか?」
皆のリアクションを見る限り、主様の魔法攻撃力は相当なものらしいから、それを耐えられるプリュイってかなりヤバいかも?
「イエ、幻日サマには勝てまセン」
浴槽の中へ広がりながら、プリュイはふるふると控えめに笑って首を振る。
「いや、主様に勝つ必要はないだろ?」
プリュイも冗談なんて言うんだなぁと笑っている俺は、ちょっと悔しそうな顔をしたプリュイには気付かなかった。
「あったまったら赤くなったりする?」
自在に変形するので誰より安定する背もたれなプリュイに、悪戯心からそんなことを笑い声混じりで訊ねると、高速でふるふると震えられてお湯が揺れる。
「ゴ希望デシたら、幻日サマニお願いシマスが……」
震えが落ち着いたと思ったら、真剣な声でそんなことを言い出したので、俺は慌てて首を横に振る。
「冗談だよ。俺はプリュイのこの青が好きなんだから」
赤くなっても嫌いにはならないが出来れば青いままでいて欲しい。
そんな気持ちを込めて、向かい合わせでもたれかかったプリュイの体をぺちぺちと叩く。
お湯の中に揺らぐ半透明な青はぷるぷるとしていて涼しげで──、
「ちょっと美味しそうかも」
無意識に俺の口からポロリと洩れた呟きに、緩みかけていたプリュイの表情が固まり、おずおずと右腕を差し出された。
「……食べてみマスか?」
「食べません」
差し出された右腕をそっと押し返して、俺は温まったプリュイのぷるぷるボディへしがみついて全身で堪能する。
素っ裸でプリュイにくっつくのは癖になりそうだ。
夏場はひんやりして気持ち良さそうだな、と考えて思い出してしまったのは、俺のぷち出奔の原因となった案件だ。
「──暑くなったら、下着姿でプリュイを下敷きにして寝たい。今度こそ、ちゃんと約束だからな」
俺は表情をキリッと引き締めると、プリュイの頬を挟んで真っ直ぐに見つめて一方的に宣言する。
「……エエ、約束デス」
ふるりと震えて笑ったプリュイは、やっぱり主様に似ていて、魔法人形は創造主に似る、という新しいことわざを作っても良いかもしれない。
そんなどうでもいいことをかんがえはじめていたおれは、どうやらのぼせかけていたようで、ぷりゅいにかかえられておゆからだされ、だついじょへとはこばれたのだ。
●
「ジル、大丈夫デスか?」
「んー、らいじょぶ……」
呂律は回ってないけど、だいぶ頭は回ってきた。
脱衣所でひんやりモードへ温度変更したプリュイに膝枕の体勢で服を着せてもらいながら、俺はへらっと笑って頷く。
成人男性の時はまだまだ長風呂しても大丈夫だったから、つい長風呂気味になってしまうが、今の幼児な俺には長風呂は無理らしい。
前世では特に酒に弱かった訳でもないのに、今はアルコールのちょっと入ったようなチョコレートでベロベロだからなぁ。
ぐっぱーぐっぱーと小さな手を見つめて開いたり閉じたりを繰り返していると、心配そうな顔をしたプリュイから抱き上げられる。
「ベッドで休みまショウ」
「ん、ありがと」
柔らかいのに安定感抜群なぷるぷるボディに身を預けて運ばれる先は、自室ではなく主様の寝室らしい。
うつらうつらしながら運ばれていくと、あっという間に主様の部屋の前だ。
プリュイが伸ばした触手で器用に主様の部屋の扉をノックをして、さらにそのまま触手で扉を開けるのをうっすらとしか開いてない目で何とか確認する。
「やっと来ましたか」
その途端、すぐ近くで主様の声がして、俺はほとんど閉じかけていた瞼をこじ開ける。
「ぬしさまー、おれほかほかだぞ」
えへへと笑ってしっかりと温まったアピールをしていると、半ば無理矢理プリュイから引き剥がされる。
もちろん、主様の腕によって、だ。
当たり前だが着地点は主様の腕の中で。
「デはおやすみナサイ、幻日サマ、ジル」
気にした様子もなくふるふると微笑んだプリュイは、そのまま一礼して去って行こうとしたので、俺は少し慌てて、
「ありがと、おやすみ、プリュイ」
と、早口に言って見送る。
「おやすみなさい」
主様も一応挨拶を返していたが、その時には扉が閉まっていて、プリュイの姿は見えなくなっていた。
まぁ、プリュイなら問題なく聞こえただろうし、聞こえていなくても俺とどちらが入浴するかで何らかの方法を用いて勝ち負けを決めるような砕けた関係の二人なら問題ないだろう。
半分以上眠りかけた頭の中でそんなことを考えていた俺は、気付いたらベッドへ寝かされて布団をかけられていた。
「明日は忙しくなりますから、今日はもう寝てください」
いつもならすぐ隣で横たわる主様は、今日は俺に布団を掛けてその上からポンポンと叩いてくる。
ぎこちないながらも寝かしつけるような仕草に、俺は閉じそうになる瞼を必死に開けて主様の顔を見つめる。
「ぬしさまは……?」
「すぐに戻りますから、眠りなさい」
ふふと笑うような声と共に、俺の目元は主様の手で覆われてしまい、一気に睡魔が襲ってくる。
「おやすみ……まってる……から……」
俺は寝ずに待ってると伝えたかったが、きちんと口から出せたかはわからなかった。
いつもお読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m
もう冒険者ギルドまで、たんたんたーんって行きたいですが、書きたいことも出て来てしまい、のんびりペースです。
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