121話目
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やっとジルヴァラ冒険者ルート、はっきり見えてきました。
するともれなく、白い害虫と遭遇する危険なフラグが立ちますが、ジルヴァラはフラグ壊すの得意なので←
「んまっ! 米って、あんまり食べないけど、もちもちして美味いなぁ。カレーも具がゴロゴロしてて美味い!」
「少し辛いですが、辛味の中に甘さもあって美味しいですね」
「見た目より複雑な味で美味しいわ」
俺の目配せを受けたプリュイは、よくメイドさんが使うワゴンに寸胴鍋から少し大きめの鍋へ移したカレーとおひつに炊きたてご飯、それとパンの入った籠を乗せて現れた。
サラダは俺が残しておいた分をサラダボウルへ移して持ってきてくれたようだ。
あ、忘れてたトマト追加してくれてある。
ハッとしてプリュイを見ると、キリッとした顔で頷かれた。
そして、多少の量の差はあれど、テーブルについた三人の前には、カレーがご飯にかけられて鎮座した。
パンという選択肢も出したけど、三人共ご飯が良いと言ってくれたので、カレーライスだ。
カレーに関しては、俺は食パンを浸けて食べる食べ方も好きだとだけ言っておこう。
もちろん、麺類でも可だ。
てちってちっと動き回るプリュイの触手を見てたら思わず、
「うどん打つか」
という心の声が洩れてしまい、カレーライスに夢中の三人と忙しくしているプリュイはともかく、俺の椅子をしてくれている主様からのそれ何? 的な視線が痛い。
何も言っては来ないので気付かないことにして、三人からの賛辞へへらっと照れ笑いを返しておく。
この賛辞は俺だけの手柄ではなく、タロサの料理帳という味方がいてくれたからだ。
タロサ……地名なのか人名なのか、それとも店の名前とかなのかはわからないが、筆者には感謝だな。
あと、買ってきてくれた主様にも。
「主様、本ありがとな? 今回の料理、主様が買ってきてくれた本を見て作ったんだぜ?」
「いえ」
改めてお礼を言うと、俺の肩口に顎を乗せながら主様が短く応じてくれて、微かに笑っている気配がする。
「そういえば、米ってあんまり食べないのか? 騎士団の皆と一緒の時、お粥とかで食べてたけど……」
さっき『あんまり食べない』と言っていたソルドさんへ向けて訊ねると、ちょうど二杯目のカレーライスを食べ終えたところで、口周りを茶色に染めて「おう」と笑顔で応えてくれる。
「そういえば騎士団では野営とかで使うらしいな。で、米をあんまり食わない理由は、そもそも米ってここら辺ではちょっと貴重で値段が高いんだよ」
「へぇ〜」
俺は思わず某トリビア的な相槌を打ちながら、俺が要求するといくらでも米を出してくれた相手を振り返って見つめる。
じっと見ていると、じっと見つめ返され、ゼロ距離でも完璧な美貌だなと見惚れていたら、かぷりと鼻先を甘噛みされた。
「って、何でだよ! 米、貴重なら貴重って言ってくれよ!」
至近距離で叫んだらさすがにうるさかったのか、主様の目が軽く見張られた後、優しくたしなめるようにふにふにと人差し指で唇を押される。
「別に。たくさん余ってますし、食べるのも面倒なので」
ぽやぽやと何でもないことのように言う主様は、本当に何でもないと思っているのだろう。
「……そりゃ、主様は生米食べるんだろうからな」
少し顔を傾けて主様の指を避けながら苦笑いして呟くと、追いかけてきた指に頬を突かれる。
ソルドさんは「さすが幻日様だな!」と無邪気に笑って妙な感心をしている。
アーチェさんとソーサラさんはそれぞれ、
「まぁ、ご本人が気にしてないようですし」
「生米で食べるぐらいなら、こうやってジルヴァラが美味しくしてあげた方がいいわよ」
と、慰めというかフォローをしてくれる。
その通りだと俺も思ってしまったので、そこは素直に頷いておく。主様の稼ぎならお財布にダメージないんだろう。
「そういえば、ご飯系の屋台飯って見かけなかったな」
今思えば、いくら中世風世界とはいえ良い感じに色々混ざっている世界なこの世界なのに、差し入れてもらった料理にも通りすがりに見た屋台にも丼系とかお弁当系のものは見なかった。
「そうねぇ、お米を使った料理の屋台なんて目新しいだろうけど、それこそ材料費が高くなって採算取るのが大変よ、きっと。それに屋台でご飯なんて冒険者や平民が多くなるから、あまり値段もつけられないわね」
「貴族の方は外で買い食いなど、されませんからねぇ」
「俺、このカレーライスなら毎日でも食べたいぜ?」
「あたし達は一応A級パーティーとはいえ、毎日は無理だわ」
「ソルドはたくさん食べますから、破産する未来しか見えません」
「えー。ジルヴァラ、屋台でもしないか? 幻日様に言えば米出てくるし、安く出来そうじゃないか?」
ソーサラさんとアーチェさんからは真面目な返答が返ってきたのだが、ソルドさんの食いしん坊な発言から呑気というか、緩い方向へ流れていく。
「楽しそうだけど、俺のは素人料理だし、主様とかソルドさん達に振る舞って食べてもらうぐらいがちょうど良いよ」
その緩い流れにへらっと笑いながら、俺は何でソルドさん達トレフォイルの三人をここへ招いた理由を思い出して、表情を引き締める。
「それで、昨日はグダグダになっちゃったけど、ソルドさん達へお願いがあるんだ。もちろん、話を聞いて嫌なら断ってくれて構わないから」
「あぁ、わかった。話を聞かせてくれ」
俺が表情を引き締めて、改まった感じで話し出すと、アーチェさんとソーサラさんは微笑みを浮かべて頷き、代表してリーダーであるソルドさんがキリッとした真面目な顔で重々しく答える。
いつもの人懐こい大型犬モードからのギャップで格好良く見える──口の周りがカレーで汚れていなければもっと格好良く見えただろう。
「プリュイ」
気分的にも見た目的にも色々しまらないので、俺が頼りになる魔法人形の名前を呼ぶと、布巾を持った触手がするすると伸びて来て「うわ、え、なに?」とか言ってるソルドさんの口元を拭って去っていく。
俺にするみたいに直接触手で汚れを取るのは、普通の人は抵抗があると気を使ってくれたんだろう。
プリュイが同じことを俺にしてくれる場合は、でろんっとなって顔に貼りついて汚れを取ってくれるだろう。
それはさておき、俺は主様の膝の上から降りようとして──がっちり腰を掴まれて降りられなかったので、しょうがなくそのまま居住まいを正してソルドさん達を真っ直ぐに見つめて話し出す。
「それでお願いしたいことなんだけど。えぇと、ソルドさん達は特例で冒険者になった女の子知ってる?」
「げ」
「え」
「あら」
三人の反応を見る限り、俺は話の始め方を間違えたらしい。
目に見えて引きつってしまった三人の表情に、俺は次の一言を探すため視線をさ迷わせるのだった。
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感想、評価、ブクマ、いいねなどなど反応ありがとうございます(。>﹏<。)
活力頂いております!あと、もふもふの誤字脱字報告ありがとうございます(*>_<*)ノ
報告がしやすくなったおかげで、皆様が報告してくださり、直す方も簡単になったので優秀な編集さんがついた気分ですね(^^)
とんでもない間違いもあって身悶えする羽目になりますが(笑)




