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幕の外2

本日2話目投稿です(*>_<*)ノ


話は続いてないので、どちらから読んでも大丈夫ですが、こちらは本日2話目となります。


たまにこういうの書くと思いますが、ジルヴァラの関わりないところで、ヒロインちゃんはこんなにじったんばったんしてましたーという話が多くなると思います(`・ω・´)ゞ

●待ってられるか



「なんで冒険者登録、十歳からなのよ」

 妙な言語の書かれたノートを握り締め、ブツブツと呟く……見た目だけは愛らしい白髪の少女を、屋敷の使用人は微笑ましげに見つめている。


「うちのお嬢様は、まだ冒険者になりたがっていらっしゃるのね」


「駄目だ駄目だ、あんなむさ苦しい男達ばかりのところにうちの天使のようなお嬢様を放り込めるか」


「でも、お嬢様は博識で、誰にも習っていないのにたくさんのことを知ってらっしゃいますし、先見みたいなことも口にされてますよ! きっと冒険者になっても素晴らしい活躍をされますわ!」



 皆で幼い子供の戯言だと微笑ましく思って見守っているような呟きの中、明らかに毛色というか温度の違う声も混じる。



 その声は少女より少し年上の、少女の専属メイドのもので。




「お嬢様は特別で素晴らしい方です! それを年齢で差別するなんて間違ってると私は思います」

「そうよね、今の冒険者ギルドのあり方は間違ってるって、あたしが教えてあげないと。この、あたしが!」

 少女に与えられた部屋の中、少女の髪を梳きながら熱っぽく語る専属メイドに、少女はえへへと笑いながら否定をする気配もない。

「貴族なのに、貧乏なおかげでドレスとかもほとんど持ってないし、お茶会とか呼ばれないし。あたしがこの家をどうにかしないと……」

「お嬢様、なんて素晴らしいお考えなんでしょう!」

 お嬢様大好きフィルターのかかった専属メイドは、年齢にそぐわないニマニマとした嫌らしい笑い方をする姿もその発言も、都合のいいところしか見えず聞こえず少女を褒め称えるだけだ。

 そして、無駄に要領が良くて行動力溢れる少女はこっそりと一人で屋敷を抜け出して、要領良くその辺に大人に甘えて乗り合い馬車の代金を奢ってもらって冒険者ギルドを目指す。

「こんにちはー!」

 扉を開けた瞬間、一斉に自分へ向けられた視線に怯むことなく、少女を元気良く声を張り上げて挨拶をする。

「あらあら、可愛らしいお嬢さんね。何か依頼かしら?」

 そんな中、少女へ近づいて来たのは、一番長い列を作っていた受付嬢だ。

 少女は、キタキタキタ、と俯いて呟いてから、ニコッと顔を上げて受付嬢へ満面の笑顔を向ける。


「えぇとね、あたし冒険者になりたいの!」


 こうして少女の演説は始まってしまい、



「へぇ、面白いな。そこまで言うなら、A級冒険者である俺が面倒見てやるから、特例とかにならないのか」



 面白がったA級冒険者がそんなことを言い出し、たまたままるで計ったように冒険者ギルドへ来ていた王族関係者の耳へ入って……。



 トントン拍子に、自信溢れる可愛らしい八歳の少女は特例の冒険者となったのだ。




●(ある意味)すごいお嬢様




 俺はとある貧乏貴族の屋敷で働く下っ端の料理人だ。

「冒険者になる前に、お金稼ぎたいから、あたしの考えたレシピの料理売れるか試してみたいの!」

 少々風変わりだが利発といわれているお嬢様が、そう言って厨房へ現れたのは昼食後のことだ。

 お供にはやたらと鼻息荒い専属メイドがついてきている。

 俺を睨んでいることから考えるに、俺がお可愛いお嬢様に手を出すんじゃないかと心配しているんだろう。

 そう思うなら、俺にそのお嬢様を近付けるな。

 俺は心底そう思ってるが、お嬢様は一番下っ端に見える俺をお遊び相手の標的にしたらしい。

 夕食の仕込みがあるから、と断ろうとした俺を、お前が相手をして差し上げろ、と料理長が止めてくる。

 というか、料理長もお嬢様の相手をしたくないのだろう。

 俺と料理長の他にもう一人同僚の料理人がいるが、それはさっきからお嬢様を見て頬を染めてハァハァ言って大歓迎してるのだから、あれに相手を頼めば良いものを。

 俺はため息を吐き、ニマニマと年相応ではない笑顔を浮かべているお嬢様へ向き直る。



「それで、今日はどのような料理を作りたいと?」

 ほざきやがるんで、と付け加えたくなるのを堪えて引きつり気味の笑顔をお嬢様へ迎えると、ある意味八歳が書いたとは思えないメモを手渡される。

 どうやら卵と酢と油などを混ぜて作るソース……そこまで何とか読み解いた俺は、既視感を覚える。

 このへた……個性的なメモに書かれている作り方は所々不明確だが、材料といい流れといい、出来上がるのは『あれ』一択だ。

「わざわざマヨネーズを手作りして売るんでしょうか? 相当個性が無いと売れなさそうですが……?」

「何言ってるの! お嬢様が手作りされたマヨネーズですよ? とっても高く売れるはずです!」

 思わず突っ込んだ俺へ、専属メイドがきゃんきゃんと噛み付いてくる。

 まぁ他にもこの女みたいなのがいるなら売れるかもしれないな、と妙な納得しながらマヨネーズの材料を揃え始めようとした俺は、お嬢様が俯いて動かないことに気付く。

「お嬢様? どうかしましたか?」

 さっさとやって終わらせたいんですが、とつい言いそうになるが、それより先にお嬢様が顔を上げてキッと俺を睨んでくる。

「……マヨネーズ、あるの?」

「え? えぇ、ありますぜ。昨夜のソースにも使いましたが?」

 昨日は確か焼いた魚にマヨネーズをベースにしたソースをかけた筈だ。

 旦那様も奥様もマヨネーズがお好きなので、比較的食卓に上る機会は多いはずだが、何故お嬢様は初めて聞いたみたいな表情なんだろう。

「マヨネーズはやめる! えぇと、ならスパイスをたくさん集めて調合するの!」

 一瞬表情を歪めたお嬢様は、すぐにパッと顔を上げてメモをグシャッとして、俺にそんな無理難題を吹っかけてくる。

「……いや、スパイスは何種類かはありますが、どんな物を作りたいか分からなければ、調合するの! と言われましても」

「もー! なんでわかってくれないの! こう茶色くてドロッとしてスパイシーな料理を作る元になるのよ!」

 地団駄を踏むお嬢様を、料理長が遠くから冷めた目で見ている。埃が立つだろ、とか思ってるんだろう、あのじじい。

 俺はこれ以上お嬢様を暴れさせないよう必死に考えて、何とかお嬢様の言いたいことを理解しようとして、ふとグシャッとされたメモに気付く。

 もしかして、これもさっきのマヨネーズみたいに?

「──それは、野菜や肉など入れて煮込んでスープみたいにしたり、焼いた肉などの味付けにしたり?」

「そうよ! あなたなかなかやるわね! 売れるようになったら、あなたにも分け前を……」

 上から目線で……実際貴族の端くれなお嬢様だから上から目線でも良いんだろうが、ま、そんなしたり顔でお嬢様が俺を見て、さらに何か言おうとする中、俺はそっと取り出した小さな缶を差し出す。

「これカレー粉っていいます。まぁ、個人でスパイスを混ぜる人もいるみたいですが、これをベースにして足した方が早いと思いますぜ」

「な、カレーもあるの? そうだ! なら、カレーをライス……米と食べるのはどう?」

「それは聞いたことありませんが……」

 俺の答えを聞いた瞬間、お嬢様の顔がパァッと輝く。その表情は年相応で可愛らしく見えないこともなかったが、すぐにニヤリとした妙に癇に障る笑顔になってしまう。

「なら早速作ってみてよ!」

「米はここら辺では貴重品なのですが……」

「大丈夫! 絶対爆売れして、すぐに儲けが出るわ」

 控えめに止めたがお嬢様は止まりそうもないし、専属メイドもその隣でうんうんと馬鹿みたいに頷いていて、煽るだけだ。




「……でしたら、お嬢様自身のお金を用いてお店を出されたらどうでしょう? そうすれば稼ぎは自由に使えますよ。そこまで素晴らしい考えなんですから、俺みたいな一料理人を噛ませるなんて勿体ないです」



 面倒になった俺は親切なふりをしてそう囁き煽り、外を指差して見せる。

「それもそうね」

「お嬢様のお考えになった料理なら、あっという間に人気店です!」

 お馬鹿……おっと、忠実な専属メイドの後押しもあり、お嬢様はカレー粉の缶を持ってさっさと厨房から飛び出して行ってくれた。

「さて、今回はどれぐらい負債が増えるかな」

 あの変わったお嬢様は、定期的に『あたしのかんがえたすばらしいはつめい』みたいなことを叫び出すが、大体は常識だったり、ただお嬢様が知らないだけだったりで、いつも地団駄を踏んで終わるのだが、たまーにさらに妙なことを言い出して猪突猛進に実行するのだ。




「本当に(ある意味)すごいお嬢様だ」



 こちらに迷惑がかからないなら、どうなろうと構わないがなと内心で付け足していると、視界の端でじじいが我関せずな顔をして煙草をふかしていたので、こっそりと睨んでおいた。

いつもありがとうございますm(_ _)m


少しでも説明回の息抜きになると良いですが。


私は書いてて楽しかったので←

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