113話目
また感想いただいてたのに、返信忘れてしまいました(。>﹏<。)
もう個別返信しろよ、という話ですが、喜び過ぎてネタバレする予感しかしないので、ここでお礼言わせてくださいm(_ _)m
いつもありがとうございます!萌ポイントが近いようで、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです(^^)
で、今回長いです(*ノω・*)テヘ
文字数的には、私の2話分です。切ろうかと思ったんですが、そうすると結構長い1話とかなり短い1話に分かれてしまったので、合体させたまま1話にしておきました。
「……コ、ロコ、ロコ?」
主様が俺を呼ぶ声が聞こえ、頬を軽く叩かれている気がするが、瞼が重くて目が開けられない。
心配そうにこちらを窺う気配の後、口元が柔らかい感触で覆われて水分が口内へと送り込まれる。
反射的にこくりこくりと喉を鳴らしてそれを飲み込むと、俺を窺っている気配から安堵の気配と笑ったような気配がして、何処かに横たえられていた体が持ち上げられる。
呼ぶ声と感じられる気配から、持ち上げてくれたのは主様だとほとんど回っていない頭で判断した俺は、目を開けることを諦めて、襲い来る睡魔へと身を預けることにした。
そんな俺が目を覚ましたのは、強烈な空腹感と、それを激しく刺激するような美味しそうな匂いに誘われたからだ。
「ごはん……?」
寝起きでぼんやりとした視界の中、思わず手を伸ばした先は最近見慣れた夕陽色ではなく、物心ついてからずっと傍にいてくれた茶色だ。
寝惚けたまま、いつものようにわしっと掴んでしがみつこうとするが、何だか勝手が違うし、痛い痛いという声と笑い声も聞こえてくる。
「なんかちぢんだ……?」
手探りで探る茶色は、いつもより毛量が少なく触った感じも明らかに小さいし、全体的にすべすべしてる?
「ジルヴァラ、寝惚けてるのか? さすがに痛いぞ?」
納得出来ず首を傾げていると、そんな呆れたような声がやっとはっきりと聞こえてきて、俺は瞬きを繰り返して自分の手の先をしっかりと見つめる。
しっかりと焦点が合ってそこに見えたのは、ソファに寝かされていたらしい俺を揃って見下ろしているトレフォイルの三人だ。
で、寝惚けた俺は一番近くまで顔を寄せて来たソルドさんの髪を鷲掴みし、今現在は頬を撫で回していたようだ。剃り残しなのか、顎の下辺りはちょっとじょりじょりしている。
「こーら、ジルヴァラ、もう寝惚けてないだろ?」
何となく惰性でぺたぺたと撫で回し続けていたら、からからと笑ったソルドさんから抱き上げられて、撫で回すのを止められてしまう。
「寝惚けてるジルヴァラも可愛かったわ……」
ソルドさんの隣で恍惚とした表情でそう呟くソーサラさんは、うふふと可愛らしく笑いながらソルドさんに抱えられた俺の頬を突いている。
「湯あたりしたそうですが、気分はどうですか? 喉は渇いていませんか?」
三人組最後の一人アーチェさんはというと、一見すると俺を見る表情は冷ややかながら、その口から出てくるのは俺を心配する言葉だし、手にしているのは俺へ飲ませようとしてくれたのか水の入ったコップだ。
「ありがと、アーチェさん。水欲しいな」
心配してくれたアーチェさんに気を使った訳ではなく、本当に喉が渇いていた俺は、そう言って有り難くアーチェさんが差し出してくれたコップを受け取る。
「ジルヴァラが飲み食いしている姿って、どうしてこんなに愛らしいのかしら」
こくりこくりと喉を鳴らして水を飲む俺をガン見しながら、ソーサラさんが真顔で呟いてるのが聞こえたが、俺はそっと視線を外して聞こえないふりをしておいた。
主語が子供なら俺も同意出来たんだけど、さすがに俺単体だと同意しても否定しても変な角が立ちそうなので聞こえないふりが無難だろう。
ソルドさんもアーチェさんも、明らかに聞こえてただろうに流してるし。
俺が水を飲み終えると、すぐにアーチェさんがコップを受け取って片付けてくれる。
水を飲んだことで、寝惚けていた思考もだいぶはっきりとし、俺は今さらながらも何故トレフォイルの三人がここにいるのかわからず首を捻る。
思わず主様を探すが、見渡せる範囲にはいないようだ。
三人に直接訊けば早いかと当たり前のことを思いついた俺が口を開こうとする先に、俺の腹部から気の抜ける鳴き声が響く。
満員電車かと言いたくなるぐらいに密着していた三人に聞こえなかった訳もなく、三組の微笑ましげな眼差しと温度に多少の違いがある笑顔を向けられる。
「腹減ってるだろ? 来る途中、色々買ってきたから一緒に夕飯にしようぜ?」
そう言って人懐こく笑うのはソルドさんだ。俺を抱いたまま、料理の並んだテーブルを指し示す。
「口に合うかはわかりませんが、オススメを選んできましたよ」
ふっと気取った感じながらも、優しさの滲む微笑みを見せて、僕のオススメはこれだとさりげなく勧めてくるのはアーチェさん。
「あまーいデザートも買ってきたわ」
一番最後、言葉より甘々で蕩けそうな笑顔なのはソーサラさん。
「ありがと。美味しそうな匂いがするから、お腹鳴っちゃったよ」
照れ臭さからへらっと笑ってソルドさんの顔を見上げていると、不意にその表情が何処かを見てぴしりと固まり、油が切れたような動きで俺は先ほどまで寝ていたソファへ降ろされる。
「あ、ごめん、重かったよな。つい全力で甘えちゃった」
その動作をソルドさんの腕が限界だったのかと判断して、俺はペコリと頭を下げて謝罪する。
オズ兄もお兄さん感はあるけど、ソルドさんはもっと年上だし、性格もこんなんだから近所の優しいお兄ちゃん感があってついつい甘えてしまったが、さすがに寝起きでくったりとしていたから重かったのかもしれない。
「あら、ソルド、そうなの? ジルヴァラ、次はあたしが抱っこしてあげる?」
白くて柔らかそうな手が伸びて来て、俺を抱き上げてくれようとするが、俺はその手にちょんっと触れて首を横に振る。
「ありがと、でも大丈夫だよ」
ふるふると首を振っていると、お腹が一緒になってぐぅ〜と自己主張してくる。
「うふふ、そうね、先にご飯にしましょう。ジルヴァラのお腹が可愛く鳴いてるわ」
楽しげにそう言いながら、ソーサラさんは俺の側へ陣取って、すでに用意されていた小皿へ料理を取り分けてくれる。
「おう、遠慮なくいただきます! あ、主様! 主様も一緒に食べようぜ?」
頬を染めて甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれるソーサラさんに世話を焼かれていた俺は、少し離れた所からこちらをぽやぽや見つめている主様に気付いて声をかける。
なんであそこで止まってたんだとか、いつからあそこにいたんだ? とか複数の疑問が脳裏を過っていったが、ソーサラさんが口へと運んでくれる料理の美味しさでどうでも良くなる。
「この煮込み美味しい! ……何の煮込みかわからないけど」
ソーサラさんが口へ運んでくれたのは、全体的に赤茶色の謎の煮込みだ。色味的には味噌かと思ったが、なんか洋風な味だった。
まぁ味噌じゃないのは残念だけど、美味しさは間違いなくて何となく頬を押さえていると、復活したソルドさんがけらけらと楽しそうな笑い声を上げて俺の頭を撫でてくる。
「お、ジルヴァラは将来酒飲みになりそうだな。それは、ブラッドボアっていうでっかい猪のモンスターの煮込みだ。で、俺のオススメ」
「へぇ、そうなんだ。ありがと、ソルドさん、初めての味だけどすげぇ美味しい」
俺の言葉を聞いたソーサラさんは、何故か悔しそうな顔をしてデザートらしき物が置かれている辺りを見つめて悩んでから、次はロールされたサンドイッチを手に持って俺の口元へと運んでくれる。
「ソーサラさん、俺自分で食べられる……」
「あたしがしたいの。駄目かしら?」
巨乳美女にうるっとした目で見つめられて断れる男がいるだろうか。
「駄目……じゃないよ」
答えは──否だ。
なんて脳裏で格好つけてみたけど、フュアさんとはタイプの違うキリッとさのあるソーサラさんにしゅんとされると、俺には断れない。
ここは家の中で、見てるのはソーサラさんのパーティーメンバーの二人と主様だけだから良いよな……と黙ったままの主様を見ると、先ほどの場所から動いていない。
「主様? ほら、俺の隣空いてるから、ここに座れよ」
ちなみにソルドさんとアーチェさんは仲良く並んでソファに腰かけて、それぞれ食べながら合間にオススメ料理の説明をしてくれてるし、ソーサラさんはずっとソファに座らず俺へ食べさせるための料理を取り分けてくれている。
ソーサラさんに、あーん、と料理をお返しで食べさせてあげると、頬を染めてとても喜んでくれている。
「ジルヴァラ、そのサンドイッチは僕のオススメです。ジルヴァラでも食べやすい大きさでしょう?」
「ん、確かに俺にもちょうど良いな。あと、入ってるソースが美味しいよ」
これはアーチェさんのオススメか、と納得しながらロールサンドイッチを食べた俺は、ありがとな、とアーチェさんへお礼を言って、俺へ食べさせる一方のソーサラさんの口元にもロールサンドイッチを運ぶ。
子供口な俺でも一口でいけたサイズのロールサンドイッチは、ソーサラさんの可愛らしい口でも何とか一口でいけたが、ゆっくり咀嚼するために俺へ給餌する動きは止まる。
俺もお茶を飲んで一休みしていると、ソファが沈んで視線を向けるまでもなく主様が無言のまま俺の隣へ腰かけたのがわかる。
そこまで広い部屋じゃないし、元から視界の隅には映ってたんだけどな。
「ロコ」
やっと喋ったと思ったら、俺の名前だけを口にした主様は、俺が自分の方を向いたのを確認してから、あーん、と口を開けて見せる。
いつ見ても主様は歯並びまで綺麗だ。
そのまま数秒主様の美しい歯並びを見つめてから、俺は自分用に取り分けてもらった料理から煮込みを選ぶと、それをスプーンですくって主様の口元へ運ぶ。
間接キスになるが、主様はそんな細かいことは気にしないだろう。
「……ロコの味じゃないです」
あむとスプーンから煮込み奪い取り、食べる所作まで綺麗だなと俺を見惚れさせながら煮込みを飲み込んだ主様は、そうポツリと洩らす。
「あー、幻日様のお口に合わなかったですか……」
聞きようによっては姑の悪口みたいだな、と思ったら、まさにソルドさんがそんな風に勘違いしたらしく、叱られた大型犬みたいな表情で煮込みの入った皿を見つめている。
基本的にトレフォイルの三人は、主様を怖れたりはしないで全力で憧れてる感じだから、ショックが大きいんだろう。
「ソルドさん、これ貶してるんじゃなくて、初めて食べる味だって言ってるだけだと思うから気にしなくて良いと思うぜ?」
俺の言葉を慰めているだけだと判断したのか、ソルドさんの返してきた笑顔は力ない苦笑いだ。
「主様、口に合わない訳じゃないだろ?」
「はい」
それがなにか? と言いたげな表情で首を傾げた主様に、ソルドさんはやっと納得してくれたのか安堵の息を吐いている。
「ジルヴァラ、まだ食べられるかしら?」
「え? おう、もう少し食べたいかな」
主様の方を向いて、無言で歯並びを見せてくる相手へあーんを繰り返していた俺は、ふふ、と笑みを含んだソーサラさんの声に応えて体をそちらへ向ける。
「はい、あーん?」
「あーん……」
これってやっぱりする方もされる方も恥ずかしいな、と頭の隅っこにいる冷静な俺が囁くが、ソーサラさんが嬉しそうなので口に入れられた食べ物と一緒に飲み込んでおく。
「ロコ」
俺が飲み込むのを見計らっていたのか、主様に名前を呼ばれて肩を叩かれる。
何の要求かはわかりきっていたので、俺は主様へ食べさせる用の料理が乗った皿を手に振り返る。
やはりというか、そこには口を開けて待つ主様がいたので、へらっと笑って俺は料理をすくったスプーンを主様の口へと運ぶのだった。
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「はい、これがあたしのオススメデザートよ」
「ついでに、甘いのが苦手な奴でも食べられる、俺のオススメもあるぜ」
あーんをされて、あーんをしてを繰り返してお腹が膨れた頃、仲良くドヤ顔したソーサラさんとソルドさんがオススメだというデザートを出してくれる。
ソーサラさんの方は、生クリームとフルーツたっぷりのロールケーキだ。
「うわぁ、美味しそう! ……けど、一切れは食べ切れないな。料理美味しくて食べ過ぎた」
見れば見るほど美味しそうなロールケーキを前に悩んでいると、くすくすと笑ったアーチェさんがナイフで厚めに切り分けられたロールケーキをさらに縦で半分にした物を差し出してくれる。
「ジルヴァラ、僕もそんなに食べられませんから、半分こしてくれますか?」
「おう! ありがと、アーチェさん」
アーチェさんの気遣いが嬉しくてふにゃふにゃ笑っていると、主様が自分の前に置かれたロールケーキを見てなにか悩んでいる。
「主様は一人で一つ大丈夫だよな?」
「はい」
まさか女の子みたいに、ダイエットが〜みたいなことを考えていた訳じゃないだろうか、俺の問いかけのほんの少しだけ残念そうにしながもこくりと頷く。
「んー、中のクリームが甘過ぎないし、果物も瑞々しくて美味しいよ」
「そう? 良かったわ」
うふふと笑うソーサラさんは、俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑いながら一人で一本のロールケーキを食べている。
俺や主様が食べているのは、ソーサラさんが食べているのとは別のロールケーキから切り出した一切れで、ソーサラさんが食べているのは文字通り一本物のロールケーキだ。
カットされてないだけで、物自体は同じなのでソーサラさんが食べているロールケーキも、断面から生クリームと瑞々しい果物がたっぷり見えている。
それをソーサラさんは節分の恵方巻のように丸かじり……ではなく、フォークで切り崩しながらお上品に食べている。
主様? 主様は俺が見てないうちに、一口でロールケーキを放り込んだようだ。
ソルドさんが「まじかよ」と尊敬に満ちた眼差しを向けてるので、マジらしい。
どうやってるか知らないが、主様は頬をパンパンにしたりもせず、数回咀嚼してロールケーキを体内へと収めてしまった。
何処のフードファイターだよ、という食べっぷりだが、しでかした本人はいつも通りぽやぽやしている。
「……気に入ったのかな」
そういうことにしておこうと一人呟いた俺は、ゆっくりとロールケーキの残りを堪能する。
かなり美味しいロールケーキだったが、生クリームとたっぷりの果物のおかげで結構お腹に溜まる。アーチェさんの気遣いに感謝だ。今の腹具合だとこれは一つ食べ切れなかった。
「んー、お腹いっぱいだ」
食べ過ぎて動けないため、本日は片付けはプリュイに任せて、俺は隣に腰かけている主様へ体重を預けて寛ぎきっていた。
アーチェさんとソーサラさんも手伝ってくれてるので、俺が手伝わなくても大丈夫そうだ。
お客様に何させてるんだ、という話だが、今日は六歳児を武器に甘えさせてもらうことにする。
そのままだらだらしていると、小さな何かを手にしたソルドさんが近寄って来る。
「なぁ、これが俺のオススメのデザートなんだけど……」
そう言ってソルドさんがおずおずと差し出してきたのは、お高いチョコレートでも入っていそうな暗い茶色の小さな紙箱だ。
キラキラと期待に満ちた眼差しで見てくるソルドさんに対して、お腹いっぱいだとは言い出しづらく、俺は止めてくれそうな二人を探すがちょうどキッチンへ行ってるのか見当たらない。
「大丈夫だって、そんなに大きくないし、ジルヴァラの口でも一口で食べられるからさ」
そんな俺の内心を見透かしたのか、ニッと明るく笑ったソルドさんが紙箱を開けて見せる。
並んでいるのは、小さめのトリュフチョコのようだ。
「甘さ控えめで美味しいんだって。一個だけでも食べてみろよ」
貰っておいて後で食べるという選択肢もあったが、ふわっと香ったチョコレートの匂いと……何より食べて食べてと言わんばかりに見てくるソルドさんの視線に負けてしまった。
「おう、ありがと」
手を伸ばしてチョコレートを摘むと、パクリと口へと放り込む。
とろりと口内で口溶けの良いチョコレートが溶けていくが確かにその甘さは控えめで美味しかった。が、チョコレートの中からドロリとした液体が出て来て──そこで俺の記憶は途切れる。
何だかソルドさんが怒られまくったりしてた気がしたけれど、あまり覚えてはいない。
いつもありがとうございますm(_ _)m
ソルドさんは、憎めないしでかす奴目指してます(*´艸`*)
前回の反動か、主様省エネモードです(^^)
私はソルドさんタイプなので、反応していただけると、小躍りして喜びます(^^)




