104話目
ジルヴァラ、ほんのり自覚?
まだまだほんのりです(*´艸`*)
「俺は構わないです。さっきも言いましたが代価としてとかではなくて、グラ殿下と話したかったんで。主様のことだけじゃなくて、もっと色んなこと……」
「しかし、まさか幻日がそんな子供じみた事するなんて思わなかったよ」
俺とグラ殿下がそんな会話をするのは、先ほどまでナハト様とニクス様も一緒に囲んでいた庭の端の方にあるテーブルだ。
椅子は空いてるのだが、主様は相変わらず俺の近くでぽやぽやしていて椅子に座る気配はない。
護衛さん達は当たり前だが、グラ殿下の背後に彫像のように控えている。
その姿を見て、ふと主様を振り返った俺は、思わずくすくすと小さく笑い声を洩らす。
「ジル、どうかした?」
「いや……いえ、グラ殿下の護衛さん達見てたら、うちの主様も同じようなことしてるなぁと思いまして……」
「口調もさっきみたいで良いのに……」
俺の答えより、グラ殿下は俺の話し方が気になったらしく、あからさまに可愛らしく拗ねたふりをしてちらちらと期待に満ちた眼差しで俺を見てくる。
呼び方だけはグラ殿下の潤んだ瞳による上目遣いのおねだりに屈してしまったが、口調だけは何とか保ちたい俺は聞こえないふりをしてニッコリと笑って返しておく。
「ロコは私が守ります」
「さっきは主様のおかげで、ちょっとした行き違い起きてたんだけど?」
何故か護衛宣言をしてきた主様に、俺はつい先程の騒動を思い出して苦笑いして主様を振り返る。
「……それは別の話です」
ふいっと視線を外す主様は、美麗な見た目もあって何かお高い猫みたいだ。まぁ、猫と言っても主様の場合は絶対猫科の猛獣だけど。
そんな俺達のやり取りをグラ殿下はくすくすと笑っていたが、ふと笑みを消して真剣な顔をすると、組んだ手の上に顎を乗せて値踏みするように俺を見つめてくる。
「ジルは冒険者になって何がしたい?」
そんなグラ殿下の視線を受けた俺は、考えを巡らすために視線をさ迷わせる。
答えに迷いはない。
ただ一つの答えは『主様と並んで一緒にいたいから』だ。
でも、それなら冒険者じゃなくても、とか突っ込まれそうだとは自分でも思っているから、つい他の理由も考えてしまう。
俺が迷ってると勘違いしたのか、俺の背後の主様まで何故か不安そうなぽやぽやになっているのに気付き、俺は主様の手をギュッと握ってへらっと笑う。
「冒険者になって主様と並んで冒険したい。……こんな抽象的な答えじゃ駄目か?」
主様の手を握ったまま、俺はグラ殿下を見つめて今返せる答えをニッと笑いながら自信だけはたっぷり込めて紡ぐ。
「……いや、十分だよ。いつかジルから幻日とした冒険の話を聞けるのが楽しみだ」
しばらく無言で見つめ合った後、ふっと息を吐いて微笑んでくれたグラ殿下は、本人の言葉通り楽しそうだ。
「おう。主様と一緒ならドラゴンにだって負けないぜ?」
楽しみにしてろよ、と俺がわざとらしくおどけて言うと、お土産待ってるよ、とグラ殿下も乗って返してくれる。
そこへニクス様を連れたナハト様が、両手にお菓子や軽食の乗った皿を持ってやって来て、テーブルは一気に騒がしくなる。
そんな様子をグラ殿下の護衛さん達は微笑ましげに眺めてくれていたのだが、主様が何事か呟くと、ギョッとした顔になったのが視界の端で見えた。
「手近なドラゴンなら、あそこのダンジョンですね」
その理由が主様がそんなことを呟いたせいだとは、グラ殿下達と笑い合っていた俺は知る由もなかった。
●
自動給餌機な主様によって俺が食べ過ぎるという一幕はあったが、お茶会はほぼほぼ平和に終わって、俺達は帰宅の途につくことになる。
行き先は別なので帰りはナハト様達とは別の馬車で帰ることになり、俺達は馬車の前で別れを惜しんでいたが。
「さぁさぁ、あまり遅くなると危ないわ」
ノーチェ様の鶴の一声により、それぞれの馬車へ乗るために動き出したところで、俺は言い忘れていたことを思い出してナハト様とニクス様を振り返る。
「ナハト様、ニクス様。今日は二人にも会えて嬉しかったぜ。今度は二人へ会いにまたお屋敷にお邪魔させてもらうな?」
本当なら行きの馬車の中で言っておきたかったことだけど、行きはふにゃふにゃになってたから言いそびれてしまい、結局こんな言い逃げするようなタイミングとなってしまった。
グダグダだけど伝えられたので満足だ。
服のお礼に関してはノーチェ様へ直接きちんと伝えさせてもらったので、ここでは叫ばない。当たり前だけどな。
言い切った後、俺はすぐ主様に抱えられて馬車の中へと入れられてしまったので、二人の反応は見られなかった。
馬車の扉が閉められる寸前、外の方からナハト様の、
「俺もジルに会いたいから!」
とか、聞こえてきて、ちょっとニマニマしていたら閉まる扉の方を見ていた主様が、忌々しげに舌打ちした気がした。
気のせいか? と俺を抱く主様の顔を見つめると、何でしょうと言わんばかりのぽやぽやで返ってきたので、見間違えというか聞き違えのようだ。
なんだかんだで緊張していて疲れが出たのかもしれない。
そう自覚してしまったら、何か急に体が重くなってきた気がする。
ゆっくりと走り出した馬車の中、主様の膝上なので尻も痛くないし、安定感も安心感も抜群だ。
けれど今日は、まだ主様と色々話したい気持ちもあって、いつもより色気が増して見える正装の主様を目に焼き付けるように見つめ、
「あのな、ぬしさま、おれ、ぬしさまといろいろしたいんだ……」
そこまで言ったところで、主様の宝石色の吸い込まれそうな瞳に見つめられて……気付いた時には普段着でベッドの中にいた。
●
「……ここは主様のベッドだな」
すっかり慣れてしまった寝落ちまでの一連の流れに、俺は苦笑いをしながらベッドを降りる。
寝直す気にならなかったのもあるが、隣にベッドの主である主様の姿がなかったからだ。
ちらりと確認した置き時計の針が指す時刻はすでに真夜中近い。
窓へ近寄って外を見てみると、当たり前だが真っ暗で、遠くに街灯の光と少なめな窓の明かりらしきものが見えている。
「主様、まだ起きてるのか……?」
別に独り寝が寂しい訳じゃないからな、と誰に向けた言い訳かわからないことを脳内で呟いた俺は、主様を探しに行くためにゆっくりと寝室の扉を開ける。
そこで見つけた人影に、俺は無意識に安堵の息を吐いていた。
扉の先は主様の書斎へと続いているのだが、主様はそこにいた。
あのかっちりとした正装は脱いでいていつものローブ姿だったが、髪を緩く編んだリボンはそのままで机に向かっていて、それに気付いた俺は嬉しくなる。
開けた扉の隙間から主様を窺い、ふわふわする気持ちのまま密かに笑っていると、机の上を見ていた主様の目が俺の方を向く。
「ロコ」
名前を呼ばれて微笑みかけられ、へらっと笑った俺はパタパタと軽い足音を立てて主様のところへと駆け寄る。
「寝ないのか?」
機密書類とかあるかもしれないし、と少し離れた位置で足を止めて話しかけたのだが、無言でもっと近寄れと手招きされる。
どうやら機密書類を見ていたとかではないらしい。
確かに主様は戦闘能力は高いけど、政治的な能力なんて期待されてなさそうだもんな。
ぽやぽやしてる天然ぽい性格だから、訊かれたら普通に機密情報でもポロッと言っちゃいそうだし。
そんな他愛も無いことを考えながら、椅子に座っている主様の側まで近寄り、机の上を覗き込む。
そこに広げられていたのは、ちょっとクセはあるが綺麗な字がびっしりと並んだ手紙らしき紙だ。それが三枚程ある。
「誰からの手紙なんだ?」
他人に来た手紙を読むのは失礼だとちらりとしか見なかったが、冒険者とかギルドという単語は見えた気がする。あと、ちょっとした主様への罵倒とか。
「第二王子はすぐに話を通してくれたようです。これは、冒険者ギルドのギルドマスターからの手紙です」
「グラ殿下、そんなにすぐ話してくれたんだ。……にしても、ギルドマスターさん、仕事早いな」
ふへぇと気の抜けた感嘆の声を洩らして机の上を今度は遠慮せず覗き込んでいると、主様の手が伸びてきてヒョイッと膝の上へ乗せられる。
「それで、明日にでも冒険者ギルドへ顔を出せ、とのことです」
主様が要約してるのかと思ったら、本当に手紙には『てめぇ、この野郎、面倒事増やしやがって、顔貸せよ』的なことが書かれていた。
「主様、ギルドマスターさんと仲良しなんだな」
「ロコとの方が仲良しです」
ふんっと鼻を鳴らして妙なところで妙な対抗心を発揮した主様の相鎚に、俺は首を反らせて真裏にいる主様を仰ぎ見る。
どんな顔して言ってるんだ、と気になってしまったのだ。
見えたのは思いの外感情豊かに不服さを顔に出した主様で、俺の胸にズキズキとした痛みが走る。
こんな表情を向ける相手が主様にいるんだ、ということが嬉しいはずなのに、胸が苦しい。
子供が親を取られまいとするヤキモチと言うには──。
「重いなぁ……」
この感情が湧き上がる『理由』はわかっていたが、俺はあえて蓋をする。
これはまだ胸の奥にひっそりとしまっておこう。
「ロコ?」
俺の独り言を聞いて心配そうに呼んでくれる主様に、俺はいつも通り主様大好きな俺の顔でへらっと笑い返しておいた。
いつもありがとうございますm(_ _)m
ジルヴァラは斜め上走行が大得意なので、自覚しても俺なんかが〜と気持ちを伝えないでしょうし、最悪の場合は主様の側にはいられない〜となるかもしれません←
その場合、まあアノ方が逃がす訳ないですよねぇ(*´Д`)
各種反応ありがとうございます(。>﹏<。)
そろそろストック尽きたので、毎日投稿出来なくなるかもしれませんm(_ _)m




