102話目
某たれたパンダ……世代がバレてしまいますねえ(*ノω・*)テヘ
まずは感想ありがとうございます(^^)
まさか、ヤツが現れることを予言されるとは思わず、ギクッとしてしまいました(*´艸`*)
嬉し過ぎて脳のキャパオーバーした俺は、どうやらずっと主様へしがみついて蕩けていたらしく、お茶会に連れて行く前に医者へ連行となった。
なんでそんなモノローグを頭の中で流しているかと言うと、
「ジルヴァラ、大丈夫ですか? 何処かおかしいところはありますか? 我慢しなくていいんですよ?」
てな感じで騎士団本部にいたドリドル先生からの診察を絶賛受けさせられている最中だからだよ。
やっと冷静になった俺は羞恥から頬を染めて、無言でふるふると首を横に振る。
「そう、ですか? 熱もなさそうですし、眠かったりしましたか?」
丸椅子に腰かけて足を揺らしている俺を、ドリドル先生は優しい眼差しで心配そうに見守ってくれている。
「楽しみ過ぎて、興奮してたせいかな」
主様の行動が嬉しくて蕩けていたとは言いづらいので、そう濁してへらっと笑っていると、仕方ない子だとばかりに苦笑いしたドリドル先生から頭を撫でられる。
「特に異常はなさそうなので、お茶会へ参加するのは問題ないと思いますが、何か変だと少しでも思ったら本人が大丈夫だと言っても連れ帰るように」
ドリドル先生がそう伝えているのは、俺にではなく俺の背後に無言でベッタリと張り付いている主様だ。
「わかりました」
コクリと頷いた主様は、俺が丸椅子から立ち上がるのを待たずに俺を抱え上げてくれる。
「主様、歩けるんだけど」
「迷子になったら困りますから」
そう言われると迷子になる自信しかない俺は反論出来ず、素直に主様へ体を預けておく。
今日の服は格好良いけど、いつもみたいにしっかりと掴んでしがみつけないのでちょっと落ち着かない。
その分、主様が腕を回して支えていてくれてるが、やっぱり落ち着かない。
きょろきょろとお茶会会場へ行くまでの道中を落ち着きなく見渡していると、上から主様の微かな笑い声が聞こえてくる。
「初めての所を探検している子猫みたいですよ」
「子猫云々はともかく、初めてだからな。……前回はあいつらから逃げ回ってたからほとんど周りなんて見てないし」
前回のお茶会での騒動を思い出してブツブツ呟いていた俺は、不意に背筋へ走った悪寒にハッとして主様を見上げるが、そこにはぽやぽやしている主様がいるだけで。
自分の自意識過剰ぶりに苦笑いしている間に、お茶会の会場である中庭の入口へ辿り着いていたようで、駆け寄ってくるナハト様を前方に見つけたので、もう一度主様を見上げる。
すると、わざとらしくふいっと視線を外されてしまった。
「なぁ! ジル歩けないほど具合悪いのか?」
俺が呼びかける前に、駆け寄って来たナハト様が主様の足元でちょろちょろとして、俺の顔を覗き込もうとしてくる。
さっきまで馬車で一緒だったが、俺はほとんど某たれたパンダ状態で顔を見せてなかったから心配してくれてるんだろう。
「心配させてごめんな、ナハト様。もう平気だぜ。ってことで、主様?」
いい加減降ろしてくれ、という気持ちを込めて主様の顔をジッと見つめると、やっと降ろしてくれる気になってくれたようだ。
ゆっくりと地面へと降ろされた直後、俺は心配してくれていたナハト様のタックルを受けることになる。
「遅いぞ、ジル!」
「うわっ!」
思わず声は上げてしまったが何とか二人揃って転ばずに済んだのは、俺の鍛え上げた体幹のおかげ……ではなく、誰かが支えてくれたからだ。
一番支えてくれそうである主様は、俺の目の前で手を差し伸べた体勢で止まっているので、背後にいるのは当たり前だが主様ではない。
誰巻き込んじゃったんだろ、と内心で慌てる俺を他所に、転びそうになった元凶となったナハト様はというと支えてくれた相手へ向けて嬉しそうに笑いかけてる。
「ナハト、ジルが怪我をしたらどうするんですか? そこの狭量な方は、きっともうあなたとは遊ばせないと言い出しますよ?」
ナハト様の笑顔と聞き覚えのある声に支えてくれた相手を悟った俺は、へらっと笑いながら背後を振り返る。
そこにいたのは想像通り、呆れ混じりで微笑むニクス様だった。
その服装に俺は思わず感嘆の声を洩らす。
「ニクス様、ありがと。その服すげぇ似合ってる。かっこいいな。俺とナハト様の色違いみたいだけど、雰囲気違うよな?」
まずお礼を言ってからニクス様をしげしげと眺めた俺は、黒いセーラー服という俺達の着ているセーラー服の色違いみたいな格好に感嘆の声を上げ、隣りにいるナハト様を見やる。
「だろ、だろ? ニクス兄上は格好良いんだ」
えっへんと自分のことのように偉ぶって見せるナハト様は可愛らしく、本当にニクス様が大好きで憧れているのがよく分かる態度だ。
ちなみにだが、俺とナハト様はリボンとかワンポイントのラインとかの色が違うだけでお揃いの白い基調のセーラー服なので、知らない人からすれば仲良し三兄弟みたいに見えているかもしれない。
まぁ、俺とナハト様はお揃いというか、俺が着ている服がナハト様のお下がりだから仕方ないよな。
「ナハト。僕の言葉を聞いてなかったんですか? ジルにきちんと謝らないと……」
俺が自分とナハト様の服を見比べていると、ニクス様はお兄ちゃんって感じの顔をしてナハト様に何事か小声で注意していて、それを聞いたナハト様がギョッとしたような顔で主様を見上げている。
なんだろうと思っていると、主様を見上げていたナハト様が俺へと向き直り、ギュッと手を握り締められる。
「飛びついて、転ばせてごめんな、ジル。怒ってるか?」
「怒ってないけど、お互い怪我したら嫌だから、次はあんまり勢いつけて飛びつかないでくれよ?」
「あぁ、もちろんだぜ!」
自信満々に胸を反らせて答えるナハト様に、こっそりこちらを窺っていたらしい周囲のお茶会参加者達から微かな笑い声が聞こえてくる。
それは嫌な笑い声ではなく、微笑ましげな柔らかな笑い声だ。
俺達のほのぼのやり取りもあってほっこりしていたお茶会会場だったが、主催者であるグラナーダ殿下が現れたのか、空気が少しだけ引き締まる。
あくまでも、ほんの少しだけだ。
グラナーダ殿下主催のお茶会ということで、参加者はグラナーダ殿下の人となりがわかっている人達ばかりだからそこまでピリピリはしないのだろう。
グラナーダ殿下は一度しかお会い出来てないけれど、優しくて聡明な人だったのを思い出して、そんなことを考えていると参加者達の間をグラナーダ殿下が護衛らしき二人の男性を連れて歩いてくるのが見える。
「幻日、ジル。来てくれたんだね、ありがとう」
グラナーダ殿下の主様好きは健在らしく、キラキラとした眼差し主様を見上げ、次に俺へと優しく微笑んで挨拶をしてくれる。
「……どうも」
「お招き感謝いたします、グラナーダ殿下。この間は、お茶会を台無しにしてしまい本当に申し訳ありません。あと、ありがとうございました。殿下がいなければ俺は死んでたと思います」
主様いたんだ、と言いたくなるような短く適当な挨拶をする主様に続き、俺は前回の謝罪と感謝を告げて頭を下げる。
隣にいるナハト様が『死んでた』という単語にビクッとして、不安そうに俺の服を掴んで来たので、安心させようとその手を掴んでギュッと手を繋いでおく。
「いや……僕はたまたまエプレのことを知っていただけだから。助けたのは騎士団のドリドル先生だよ」
そう言って困ったような笑顔になったグラナーダ殿下に、俺はへらっと笑って大きく首を横に振る。
「ドリドル先生が素早く処置出来たのは、グラナーダ殿下がきちんとそのことを伝えてくれたからです。俺を助けてくれたのは、そのグラナーダ殿下の知識と聡明さです」
もう一度ゆっくりとそう伝えて主様をちらりと見上げると、主様もコクリと頷いてくれた。
俺だけの言葉だけじゃ弱いけど、憧れである主様からの一押しがあれば重みが違うだろうと思っての目配せだったが、そんなことするまでもなく主様もグラナーダ殿下へ感謝していたようだ。
頷いた顔はいつもよりぽやぽやを増して微笑んでいる。
「ありがとう、幻日、ジル」
ふんわりと微笑んでくれたグラナーダ殿下を見てニッと笑い返した俺だったが、両脇のキリリとした顔の護衛さん達も目元を和らげているの気付いて、ニマニマしてしまう。
俺に気付かれたことに気付いたのか、すぐにまた彫像のようなキリリとした顔に戻ってしまったが。
「そちらは確か、騎士団長の息子さん達だね」
グラナーダ殿下も気付いていたのか、ふふと微かな笑い声を洩らしていたが、俺と手を繋ぐナハト様に気付いて一瞬おやという風に目を細めるが、すぐに穏やかな微笑みで問いかけというかほぼ断定な確認をされる。
「はい、グラナーダ殿下。私は騎士団長フシロの次男、ニクスです。そちらにおりますのが、三男であるナハトです。覚えていていただけるとは、光栄でございます」
応えるこちらも理知的で穏やかな微笑みを装備したニクス様だ。
「……ナハトと申します」
ナハト様は珍しく緊張してるのか俺の手をギュッと握りながら、簡潔過ぎる自己紹介をして頭を下げている。
そういえばこういう時って、親が紹介とかするもんじゃないのか? と辺りを見回した俺は、少し離れた場所で何処かのご婦人と話し込んでいるノーチェ様を見つける。
ちらちらと時々こちらを見ているので、何かあれば助けるつもりだが、ここはニクス様に任せておこうという感じなのかもしれない。
そんなことを考えながらよそ見をしていたら、ナハト様が握っているのとは逆の手をギュッと握られて、びっくりして視線を戻すと、グラナーダ殿下の拗ねたような顔と目が合う。
「ジル。僕と話したくないのかな?」
スッと細められた主様の髪より濃い赤をした瞳に射られ、
「すみません、グラナーダ殿下」
と、反射的に謝罪の言葉を口にした俺を、グラナーダ殿下は無言のまま握った手を引いてテーブルの方へと連れて行こうとする。
「あの、ナハト様とニクス様も一緒で構わないですか?」
「もちろん、構わないよ」
主様は何も言わなくても無言でぽやぽやついてきてるから大丈夫だろう。
「ナハト様……は手繋いでるな。ニクス様も、ほら行こうぜ?」
両手に花(美少年)な俺は、グラナーダ殿下へ引かれて手を繋いだままのナハト様を引っ張りつつ、困ったような笑顔で佇んでいるニクス様も誘う。
偉い人に声かけてられてないのにくっついては来れないなよ、たぶん貴族とか普通の感性の人は。
そう思って声をかけたんだけど、別に所謂振りってやつじゃなかったのなぁ。
お笑い芸人が「押すなよ、押すなよ」言ったら、押してやるのが礼儀的な振りじゃ。
「なによ! 何で入れてくれないの? グラ様は冒険者が好きなんでしょう? あたし、最年少冒険者なのよ!」
何か遠くからそんな少女の声が聞こえてきた気がしたが、すぐに聞こえなくなる。
思わず目の前に座って優雅に紅茶を啜るグラナーダ殿下を見たが、おやまぁ、と呟いただけで視線すら向ける様子もない。
「あの愉快な鳴き声は、兄上が飼って……失礼、仲良くしている冒険者モドキの声かな」
そんな独り言が聞こえた気もしたが、気のせいだろう。
グラナーダ殿下は主様並みにぽやぁとした美少年だし。
一人で納得した俺は、視界の端で真っ青になってるナハト様と、貼り付けたように微笑んでいるニクス様に気付かず、グラナーダ殿下の主様語りに付き合うのだった。
──話題の中心である主様はというと、無言でテーブルの傍らに立ち、定期的に俺の口へお菓子や軽食を運んで楽しそうにぽやぽやして参加者の女性陣の目の保養となっているようなので、あえて止めないでおいた。
いつもありがとうございますm(_ _)m
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グラナーダ殿下、乙女ゲームの攻略対象として属性がチラ見えしましたねぇ(*´ω`*)
健気美少年(腹黒)ちゃんでした(*´艸`*)




