101話目
お茶会行こうぜな会です。
予告通り、100話越えても終わりませんでした←
これからも改めてよろしくお願いしますm(_ _)m
主様を起こすので一騒動あったが、朝ごはん自体はいつも通り滞りなく終わって、俺は腫れぼったくなっている目元をどうにかするためプリュイに張り付いていた……物理的に。
俺の顔の当たる部分だけをひんやりさせるという無駄に器用な技を披露してくれているプリュイは、暖炉前のソファで寛ぐ俺のクッションとなっている。
「まだ決まらないのか、あれ」
プリュイに伸しかかった俺がだらりと脱力しながら見つめる先にいるのは、フュアさんと真剣な顔で何事か話している主様だ。
いつものぽやぽやが薄れるぐらい真剣な顔で何を話してるかと思ったら……。
「ジルヴァラ様にはこちらの色のリボンの方が似合うと思います」
「いえ、ロコにはこちらが……」
今日のお茶会へ俺が着ていく服に付けるであろうリボンの話だ。
どうやらまたセーラー服タイプらしい。ナハト様に似合うからって、少し型違いとかで何着か作ったんだろう。
フュアさんがさっき見せてくれたけれど、前回のとはラインの色とか、素材がちょっと違うそうだ。
俺には正直よくわからなかったけど。
色味的には前回と同じ白基調だから、どんな色のリボンでも悪目立ちしないとは思うけど、二人には譲れないものがあるらしい。
女の子のドレスじゃないんだし、そこまで真剣に選ばなくてもなぁとプリュイの上でたゆんたゆんしていると、不意に主様とフュアさんの視線がこちらを向く。
「ジルヴァラ様に決めてもらいましょう」
「それがいいですね」
そんな話になったらしい。
俺、逃げてもいいだろうか。
助けを求めるためにプリュイを見上げたが、ゆっくりと首を横に振られてしまった。
どうやら覚悟を決めるしかないみたいだ。
──ついでに、リボンの色の方も。
●
気合を入れ直してプリュイに腰かけた俺の目の前に差し出されているのは、黒色のリボンと赤色のリボンという色味の違うリボンが二本だ。
黒色のリボンをぽやぽやドヤァな主様が、赤色のリボンをキリッとした表情のフュアさんが、それぞれしっかりと握ってさぁとばかりに見せてきている。
どちらの色も服や俺に似合うから選んでくれたんだろうけど。
二人の熱視線に晒された俺の目に入ったのは──大好きな赤色。
「俺、こっちがいい」
思わず伸ばした手でフュアさんの持っていた赤色のリボンに触れると、フュアさんの表情が目に見えてパァッと明るくなる。
「では、そのように準備をしておきますね」
さすがに笑うようなことはなかったが、準備へ向かうフュアさんの足取りはいつにもまして軽やかだ。
逆に残されたこちらはというと……。
顔を見るのが怖いが放置する訳にもいかず、恐る恐る主様の方を見ると黒色のリボンを手に立ち尽くしてわかりやすく沈んでいる。
感情表現豊かになったと喜びそうになったが、今は違うよなと思い直した俺は、身軽にプリュイの上から立ち上がって主様へと駆け寄る。
とすっと勢いのまま足に抱きついても、主様に身構える気配はなく難無く受け止められる。
「主様」
「……私の選んだ物は嫌でしたか?」
どうすればいいのかわからないといった顔で俺を見下ろす主様に、俺はへらっと笑って握られたままの黒色のリボンを主様の手から抜き取る。
「これは主様が何処かに着けてくれよ。ほら俺の色だ」
リボンを見て思いついたことを口にしながらへらっと笑った俺は、自らの黒い髪の脇でリボンを揺らして見せる。
「……ロコの色。では、先ほど赤色のリボンはもしかして」
「そう。主様の色だなぁって思って選んだんだよ。フュアさんには悪いけどさ」
自分で言ってて照れ臭くなってきて頬を掻いて視線を外すと、手に持っていた黒いリボンが抜き取られる。
犯人は……なんて主様しか有り得ないが、俺の手から抜かれた黒いリボンは上機嫌にぽやぽやしている主様の手の中へ戻っていて。
「わかりました。ロコが私のだと、きちんと見せつけます」
「え? あー、うん……」
張り切ってぽやぽやする主様を見て、何か思った反応と違うなとは思ったが、喜んでいるようなのでまぁいいかと頷いておいた。
●
リボンの色騒動の後は特に問題なく準備は進んで行き、俺はフュアさんによっていいトコのお坊ちゃまのように飾り付けてもらっていた。
鏡を見ると、見た目だけはそこそこのお坊ちゃまに見えるようになった俺が見つめ返してくる。
その俺の後ろでは、フュアさんが『やり遂げたぜ!』というキリッとした顔をして額の汗を拭っている。
フュアさんの目から見ても、高そうな生地の白基調のセーラー服を着る俺は、結構良い出来なお坊ちゃまぶりらしい。
俺がその場でくるりと回ってみせると、フュアさんからは「とてもお可愛らしいです」という不本意な誉め言葉をいただいた。
俺も格好良いと言われるように頑張ろう。
「ロコ、似合ってます」
いつの間にか部屋に入ってきてぽやぽやしてる主様ほどは無理だとしても。
その主様は前回と同じ黒の軍服っぽい服でばっちり決めていて、相変わらず格好良いなぁと見惚れてしまうが、よく見ると何か前回と違う。
「あれ? 刺繍の色……」
前回の服は黒に映える金の刺繍入りだったはずだが、今回の服に入っている刺繍は銀色だ。
「黒い服に、銀の刺繍……」
よく考えるまでもなく、その組み合わせは俺にとって見慣れ過ぎたものだ。
今もちらりと顔を横に向けると、鏡の中からそんな色の髪をした子供が、銀の目をしきりに瞬かせて俺を見つめ返している。
思い上がりとか勘違いじゃなければ、その組み合わせはどう見ても──。
「俺の色だ……」
俺がポツリと洩らすと、主様からはいい子だ、と言わんばかりの優しく蕩けるような眼差しが向けられ、一気に頬へ熱を感じる。
「可愛いです」
ゆっくりと近寄って来た主様は、笑い声混じりの声で柔らかく囁くと、赤くなってるであろう俺の頬を撫でてくる。
「……主様はかっこいいぞ?」
一瞬ポーッとして固まった俺だったが、意趣返しにもならないし、そもそもただの事実を言ってるだけで、主様には何のダメージも与えられないのはわかっていても言わずにはいられなかった一言を返しておく。
「ありがとうございます」
ほんのりと目元を染めた美人さんからの微笑付きのお礼に、俺は全面降伏状態で逆上せそうな頭をぶんぶんと振る。
「ロコ? なにかありましたか?」
「いや、俺も誉めてくれて、ありがと」
可愛いは不服だけど誉めてもらえるのは嬉しいので、主様の服をくいくいと引きながらお礼を伝えておく。
「いえ」
ふっと微笑んだ主様により抱き上げられると計ったように呼び鈴が鳴って、このまま連れて行かれる気配を察した俺は、慌ててフュアさんを振り返る。
「フュアさん、準備手伝ってくれてありがと。いってきます!」
「いってらっしゃいませ、ジルヴァラ様、幻日様。……お食事、とても美味しかったです。ごちそうさまでした」
ブンブンと手を振る俺に、フュアさんは凛々しい微笑みと共に綺麗なカーテーシー? っていうのか、綺麗な礼を見せて俺達を見送ってくれた。
この後、フュアさんはフシロ団長のお屋敷に帰ってしまうそうだ。
仕方ないことだけどそれが少し寂しくて俺がぼんやりしていると、元気を出せと言うかのように主様から軽く頬擦りされる。
主様って口で喋るより肉体言語的な方が得意だよなぁと思いながら、体と心両方に感じたくすぐったさで笑っていると、視界の端で揺れる主様の結髪が目に留まる。
いつもはサラサラと流れるままな夕陽色の髪は緩く一つに編み込まれ、前回とは違ってリボンで結ばれている。
ひらひらと揺れるそれは、ついさっき見たばかりの……俺の色である黒い色をしたリボンだ。
「どうしよう、嬉し過ぎて溶けそう……」
それを理解した瞬間、喜びであろう強過ぎる感情が処理出来ず、迎えに来てもらった馬車の中でもぐったりとして動けず、主様からずっと抱かれたままで移動することになってしまった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
これからも主人公愛されで頑張りますよー(*´艸`*)
ブクマ、評価、いいねありがとうございます(^^)もちろん、ただ読んでいただけるだけでも嬉しいです(^o^)
そして、やたらと匂わせ(物理的)したい主様。
これで味を占めて、ジルヴァラ全身赤色とかにされないといいですが。




