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10話目

愉快な騎士達。


そして、ちょっと雑な扱いをされているぽやぽや。


本人は全く気にしませんが、いつかジルヴァラがブチギレるかも。


そして、1話あたりの文字数が段々減ってます。

 緊急事態を知らせるため叫んだドリドルの声は、しっかりと騎士達や周辺にも伝わっていた。

 周辺の人々は、ジルヴァラのことを知る由もないので特に大きな動揺は見られず、何かあったのか、ぐらいの反応で済んだが、騎士達はそうもいかなかった。

 共に過ごした時間はまだ短いが、


『旅の仲間に迷惑をかけたくなくて、モンスターに襲われて怪我したのを隠していたがついに倒れてしまい、置いていかれてしまった幼い子供』


と、いうエピソードは騎士達にグサグサ刺さったようだ。なおかつ、熱でぼんやりとしながらも、起きてる時は素直な反応を返してきて、その子猫めいた愛らしい仕草も相まってガッツリ騎士達の心を掴んでいた。

 諸々の事後処理要員だけを最低限残し、他の騎士達はフシロとドリドルより少し遅れて、自分達のテントへ向かい駆け出した。



 そんな騒がしい周囲を、やっと起きてきたのかテントの入口から夕陽色をした青年がぼんやりと眺めていた。

 当たって欲しくない予想ほど当たるのは世の常で、ドリドルは空になったベッドを見て唇を噛むと、そっとシーツへ手を伸ばす。

 そこにはもう温もりは僅かにも残っておらず、ジルヴァラが消えてから時間が経っていることをドリドルへ教えていた。

「……すみません、私が側を離れたばかりに」

 悔しげに表情を歪めたドリドルの肩を、同じくベッドの脇に立ったフシロが慰めるようにバンと叩く。

「いや、俺の想定が甘かった。こんな手段で来るとはな。あの時、俺達の話を聞かれていたんだろう……まぁ、それを多少は期待してはいたが、まさかよりによってジルヴァラを拐うたぁ、何考えてやがる」

「まさか、フシロ団長……幻日様を囮にするつもりだったのですか?」

 目を見張って驚きを隠さず自分を見てくるドリドルに、フシロは自嘲するように笑って緩く首を振る。

「そこまでは考えてなかったが、腐った奴らが誘い出されてくれれば、ぐらいに考えてたんだよ。あいつなら、万が一もヤられる心配はないからな」

「それは、そうですね。……今はそんなことより、ジルヴァラを探さないと」

 ハッとした表情になったドリドルに、フシロも重々しく頷いて、仕切りの布の向こうへ、声を張り上げる。



「聞こえていたな! 手の空いている者は情報収集と、ジルヴァラの捜索、ついでに念の為、幻日へ話を聞いてこい!」




「「「はい!」」」




 返ってきたのは、打てば響くような揃った気合の入りまくった騎士達の返事だった。

 張り切った騎士達が全力を出して手分けをして聞き込みをした結果、



 あの騒ぎの最中、薄汚れた格好の冒険者風の男が、大きな白い布包みを抱えて野営地から出て行った。



という、あからさまに犯人であろう人物の目撃情報が集まってきた。

 特に張り切っていたのは、立ち番していた騎士達で、自分達が迂闊にも持ち場を離れたせいだ、と誰よりも気合が入っていた。

「幻日様の所へは、俺達が行ってきます!」

 そう言って出て行った立ち番組は、すぐに首を捻りながら帰ってくることになった。

「どうした? 興味ないとでも言われたか? それとも起きてすらいなかったか?まさか攻撃はしてこなかったよな? さらにまさかで、それ誰だ? とでも言われたか?」

 テントの中で集まって来た情報を確認精査していたフシロは、立ち番二人の晴れない表情を見て、あの青年が言いそうなことを先回りしてみたが、二人は揃って全てに首を横に振る。

「それが……いらっしゃいませんでした」

「近くの方からの証言で、テント自体は見つけられたのですが、もぬけの殻でした」

「すでに旅立った後だったか」

 二人からの報告に、フシロは腕組みをして嘆息混じりで独り言のように呟くが、それを聞いた二人から、

「いえ、少し出かける、という風な雰囲気で出かけたそうです!」

「荷物もそのままでした!」

と、追加の情報が投下される。

「出かけた? …………もしかして、犯人の目的は、ジルヴァラを餌にあいつを呼び出すことか?」

 しばらく顎髭を撫でて考え込んでいたフシロだったが、ハッとした表情をしてジルヴァラを寝かせていたベッドを振り返る。

「あの方が、それで呼び出せますか?」

「かなりムカついてたらしいからな。人質云々は関係なく、誘いに乗る可能性は高いだろう。……ま、あいつは目の前で罪のない子供が殺されるのを見過ごすほど、腐ったやつではない。それだけは信じてやってくれ」

 不安を隠そうとしないドリドルの肩を軽く叩いてから、フシロは真剣な表情で真っ直ぐドリドルを見つめてそう告げる。

「だとしても、今のジルヴァラは本調子じゃないんです! 早く見つけてあげないと……」

「ああ、わかってる。そこまで遠くには連れて行ってないはずだ! ここの守りは最低限でいい。残りは捜索へ向かえ!」

 ドリドルへ向けて力強く頷いてから、こちらをジッと窺っていた騎士達へと発破をかけるように声を張り上げるフシロ。




「「「はい!!」」」




 テントの布が震えるほどの気合の入った返事をし、騎士達は揃った動きで全員テントを飛び出し……かけて、顔を見合わせる。

 しばらく無言での視線のやり取りをした後、騎士達は無言で真剣なじゃんけんをして、負けてうなだれた二人を置いて残りの騎士は外へ飛び出していった。

お読みいただき、ありがとうございます。


誤字脱字報告、助かりますm(_ _)m

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