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決着

次回は別視点でのお話を予定しておりまっす!

「さっきまでの余裕はどうした?ほら、かかってこいよ、バケモノ。」


 再び発生した衝撃波を上手くいなして着地し、親の仇を見るような凄まじい形相でこちらを睨みつける魔獣に俺は笑みを浮かべながら挑発する。これが俺の隠し玉、その名も雷装。魔力装に似た魔法で、雷を体に纏うことで人間の常軌を逸した速度を出すことが可能になる。あれほど悪戦苦闘していた魔獣ですら反応することが出来ないほど強力な魔法だ。


 や、やった…初めて実戦で使ったけど上手く行ってる…!




 

 この魔法を発明したのは数ヶ月前のことである。いつものように魔法の練習をしていた俺はとあることに疑問を抱く。何故指や手から魔法で火を出しても火傷しないのだろう?その答えは意外と簡単で魔法を行使した際、指と火の間にとても薄い魔力の層が発生し、これが魔法の使用者を守っていたのだ。


「あれ?これ…もしかしたら全身を火で覆えるのでは!?よし!早速ため……いや…流石に火は怖い…か…?」


 一瞬自分のことを天才だと思い心が躍ったが、実行に移そうとした瞬間脳裏に全身が真っ黒焦げになる未来がよぎり思い留まる。次の朝俺の体が炭になって発見されるとか笑い話にもならんしな…


「かと言って水かぁ…なんか違う気がするし光属性は人間ライトになる未来しか見えないしなぁ…」


 せっかくの気付きを生かしたいとしばらくの間頭を捻っていると再び光明が差す。


「…もしかしたら雷魔法ならいけるのでは…?」


 自分が使える魔法は4属性あり火、水、光、雷属性の順で得意である。火属性、水属性、光属性の間にそこまでの差はないのだが雷属性だけ上手く使えず苦手意識を持っている。練習してはいるものの中々上達せず最近は練習のモチベーションが低空飛行している状態。


「うーん…まぁ試してみるか…」


 自分の魔法技術に不安を覚えるもとりあえず全身に魔力を巡らせ、魔法を行使する。


「お?…おおお!!」


 自分の体がバチバチという音と共に僅かに青白く発光し始める。自分の体をぐるりと見回し、手を握って広げるという動きを数回繰り返す。


「うん…ひとまずは成功かな?よし!じゃ、軽く動いてみますか!」


 バチバチと言う乾いた音とビュンという空気を切る音が鳴る。いつもよりも数段早く動く体に、重くなった空気の音に俺は興奮する。皆はまだ寝ている時間にひっそりと練習しているためその場足踏みで喜びを表現する。


「ふふふ…これは使えるぞ!こっからひたすら練習だ!!」





 そうして俺は雷装を発明してからほぼ毎日練習を積み重ねて行き、今こうして雷装を使っているというわけだ。身体強化では到底出しえない速度をこの雷装では生み出すことが出来る非常に強力な魔法だ。しかし強力であるがその分弱点も存在する。


 ……いっっっっってぇ!!!全身痛すぎなんですけど!!!???


 一つは体に大きな負荷がかかることだ。とてつもない速度で動けるがその分体への負担は大きい。さらに今の俺は地面に叩きつけられてボロボロな状態。悲鳴をあげていたが身体から先ほどよりも甲高い叫び声が聞こえてくるのを感じる。魔獣に手痛い傷を負わせることができたこと、そして上手く雷装を使えた高揚感がギリギリの所で勝っているから耐えられているものの、身体中を走る激痛に今すぐ泣き出したいほどだ。


 そしてもう一つは魔力の燃費が馬鹿にならないという点だ。ただでさえ得意でない雷魔法、それを全身に纏わせているのだからそれはもうとてつもなく魔力を使う。正直言って魔力の底が透けて見えるほどに限界が近い。


「グルル……」


 傷口を庇いながら先ほどからこちらを睨んでいる魔獣は、雷装を纏った俺を警戒してかいつでも動けるような姿勢は取っているもののその場を離れない。


「…持って3分…いや2分行けばいい方か…?」


 残り僅かな時間で相手を仕留めなければ確実に死ぬ。早くしなければという焦燥感を何とか抑えながら俺は足を動かす。


「そっちから行かないならこっちから行くぞ!」


 地面を蹴り、相手の首目掛けて飛び込む。しかし、魔獣も厳重に警戒していたおかげか俺の動きを見切ることに成功する。攻撃を外した俺はそのまま空中で反転し、木を足場にして再び魔獣に向かって突撃する。手応えは感じない、だがそれでも俺は足を止めない。地面を蹴り、木を足場にし何度も何度も魔獣目掛けて飛んでいく。


 上下左右からの攻撃に最初は対処しきれていた魔獣だったが、見る見るうちに傷が増えていく。白く靡いていた体毛もだんだんと赤く染まっていき、魔獣の方も余裕が無くなっているのが分かる。


「……っぐ!!くっそ…」


しかし余裕がないのはこちらも同じ。木の幹を踏みつけ上空から魔獣へとナイフを振るうも避けられてしまった俺は地面へと着地する。さらなる一撃を放つために地面を踏み締めた俺の脚部から骨の軋む音が鳴る。そしてそれとほぼ同時に刺すような痛みが下から上へと昇ってくる。ただでさえ凄まじい速度を出しているのに止まることなく飛び回っていたのだ、足が耐えきれなくなるのも無理はない。


 僅かな時間だが足が止まる。それを見て坊戦一方だった魔獣は好機だと判断したのかこちらに向かって腕を伸ばす。


「っ!!」


 脚部から聞こえる悲鳴を無視し俺はその場から離れようとする。しかしながら僅かに回避が遅れ右脇腹に魔獣の爪が掠ってしまう。今の俺は魔力装という鎧を身につけていない生身の人間。今までは感じなかった鋭い痛みに表情が強張る。さらに魔獣は攻撃の手を緩めない。再び距離を取られると厄介だと考えているのか、回避の為に距離を取ってもすぐさまこちらに肉薄してくる。攻守が交代した様に今度はこちらが攻撃を避ける番になる。


 くそっ!時間が無いのに…!!何とかしてペースをこっちに戻さないと…!


 魔獣の攻撃を避けながら自分の活動限界がもうそろそろであることに焦りが増す。何とか攻めに転じたいと考えるも雷装を纏っている今の状態では一撃でもまともに喰らうとそのままあの世へと直行してしまうため慎重にならざるを得ない。

 

 けどもうそんな悠長にしてる暇なんてない…!ここで……決める!!


 振り下ろされた魔獣の腕を避けた俺は魔獣との距離を取らずに距離を詰める。魔獣は俺の行動に驚きの表情を見せるもすぐに切り替え俺の動きを注視する。そこからは一進一退の攻防戦が繰り広げられる。ほぼゼロ距離のインファイト。研ぎ澄まされた集中力が、殺意がぶつかり合う。掠ることはあるものの、放たれる殴打を、迫る刃先をお互いに見切り、避け続けている。


「はああああ!!!」


 だが膠着した状態は徐々に崩れ始める。魔獣が青白く光る稲妻の動きに追いつけなくなってきたのだ。


 このまま押し切る…ここで必ず…仕留める!!


 俺の魔力はおそらく30秒…20秒もしないうちに底を突く。ここが本当の正念場。最後の力を振り絞り俺は一心不乱に体を動かす。襲いかかる攻撃を避け、ナイフで足を切り付けながらスライディングで股下を潜り抜け後ろに回る。


「グルァ!!」


 魔獣が片膝をつく。今この時しかないと思えるほどのチャンス。この好機を逃したらもう2度と訪れることはないと思えるほどの状況。俺は半分棒と化している自分の足に力を込め、地面を踏み締め


魔獣とは逆方向にある丈夫そうな木の枝に向かって跳躍する。


 俺が地面を蹴ったその直後


「グラアアアアアアアア!!!!!」


 これで最後だと言わんばかりの雄叫びと大地が揺れるほどの衝撃波が放たれる。


「…お前ならそう来ると思ってたぜ!!」


 俺はにやりと笑う。迫る衝撃波に腕をクロスさせ顔を守る。本来なら先ほどの衝撃波で俺の体は宙へと浮かんでいたはずだった。しかし魔獣の次の一手を読んでいた俺は吹き飛ばされることはなく、木の枝を大きくしならせていた。


「…グルァ!?」


 俺のことを宙に浮かしたと思い込んでいた魔獣が俺の姿を見て驚愕の声を上げる。


「はは…さっきそれで痛い目見たんだ…同じ手に引っかかるわけねぇだろ!!」


 俺は残っている魔力をナイフに纏わせる。ミシミシと音を立てている木の枝が俺の体を魔獣目掛けて弾き飛ばす。


「これで…終わりだあああああ!!!!」





 一閃、魔獣の頭上から稲妻が走る。首から湧き水のように血を流した魔獣はそのまま糸が切れたように地に伏す。

魔獣は斬られた首元から血の池を作り出し、微動だにしない。


「はぁ……はぁ……やったぞ…ってあ…れ…?」


 魔獣が倒れるのを見届けた俺は立った状態を維持できずそのまま仰向けの状態で倒れる。限界を迎えていたのにも関わらず足を、体を酷使した結果体が言うことを聞かなくなっていた。


「ははは…せっかく倒したのにこれで最後かぁ…」


 大の字のまま俺は嘲るように笑う。指を動かそうとしても碌に力が入らない。


「もう魔力も…体力もすっからかんだ…だいぶ…てかめっちゃ疲れた…な…」


 戦いの間感じていなかった疲れが一気に体に押し寄せる。瞼が重くなり自然と下がっていく。そんな中こちらに向かって走ってくる足音が複数聞こえたような気がする。


 ロ……ク……ロ……っかり….て!!!…


 あれ…ラルト?…ヴァーレ?…いや二人がいる訳ない…はは…幻聴が聞こえてくるとか本当やばいな……


 坊…….ク……目……し….!!


 もう…うるさいなぁ…今疲れてるんだから…二人とも静かにして…よ……


 この場にいるはずのない2人に向かって声には出さないが文句を垂れる。次第に全身が暖かくなっていく。そして俺は深い眠りへと誘われるような感覚に身を委ね、かすかに残っていた意識を手放した。

この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 [一言] なんだかスーパーサイヤ人の香りが…
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