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バケモノ 中

明けましておめでとうございます(激遅)。今年もよろしくお願いします。

「行くぜバケモノ。仲間を殺そうとした事、後悔させてやるよ!」


 ナイフを構え、身体強化と魔力装にこめる魔力を強くする。


「グルルルゥ….グルァ!!!」


 ようやくかと言わんばかりに大きな声をあげ、笑みを深める異形の魔獣。俺は魔獣との距離を詰めるために地面を強く踏み締める。


「なっ!?」


 しかし、俺が距離を詰める前にいつの間にか魔獣が俺の横に移動していた。慌てて俺は防御姿勢を取る。その直後、魔獣が腕を振り下ろす。


「ぐっ!!….ぐはっ!!!」


 何とか防御は間に合ったものの衝撃を抑え切ることができず吹き飛ばされてしまう。魔力装のおかげで致命傷にはならなかったものの木に叩きつけられたことで一瞬動きが止まる。魔獣はそんな隙を逃すはずもなく、すぐさま接近し、蹴りを入れようとしてくる。


「っく!!!」


 俺は転げるようにその場を離れ、ギリギリの所で回避する。薙ぎ払うように放たれた蹴りは木の幹を捉え、メキメキという音と共に薙ぎ倒す。


は!?嘘だろ!?!?


 目の前で起こったことに自分の目を疑う。一発で木倒せる威力の蹴りとか信じらんないんですけど!!喰らったらひとたまりもないんですけど!!!こんなのチートだろおい!


「何だ今のやばすg….ってうお!?」


 とんでもない威力の攻撃を見た俺は後ろに跳躍して一度距離を取る。一度立て直したいと思っていたがそう上手くはいかない。魔獣は間髪入れずこちらに接近し、腕をしならせる。俺は右から左へと振られた腕をしゃがんで避ける。

ギリギリの所で避けることが出来たが、少しでも回避が遅れていたら俺の頭皮が大変なことになっていただろう。


 しゃがんでいる俺目掛けて続けざまに蹴りが放たれるがそれに俺は転がって対応する。くそ!!息つく暇がない!!休むことなく放たれる相手の攻撃をナイフで逸らし、身を翻し、避けて避けて避け続ける。


 相手の動きは今まで見た中で一番速い。が、避けに避けまくったおかげで段々と目が慣れてくる。防戦一方だった俺にも徐々に余裕が生まれてくる。放たれる攻撃に一つ一つ対応しながら反撃の隙を伺い始める。


「グルァ!!!」


 中々攻撃が当たらないことに痺れを切らしたのか、魔獣は唸り声と共に腕を大きく振りかぶりそして思い切り地面へ向かって振りかぶる。


今なら…..行ける!!


 俺はその振りかぶりを出来るだけ最小限の動きで避け、魔獣の腕が地面に叩きつけられるとほぼ同時に地面を蹴る。そして魔獣の顎目掛けて左足で蹴りを放つ。


「グルゥア!!」


 まさか反撃されると思っていなかったのか、俺の蹴りをまともに喰らった魔獣はあごから伝播する痛みに悶える。

このまま追撃をと思ったが虫を払うようにして振られた腕により一度距離を置くことになる。


このまま少しずついけば….殺せる!….いや待て….焦るな…まだ一発お返ししただけだぞ俺.…冷静に…冷静にいけよ…俺


 相手にようやく攻撃を通すことができ、このまま続ければ或いはという希望が見える。だが油断は禁物。逸る気持ちに冷静さを取り戻すよう言い聞かせながら一度呼吸を整える。たった一回攻撃が通っただけで形勢が逆転したなんてことはさらさらない。相手の攻撃を喰らったら致命的なのに変わりはないのだ。


「グルルルゥ…..グアアアア!!!!」


 想像以上の痛さだったのか、先ほどまで顎を押さえ悶えていた魔獣は一つ大きな叫び声を上げ、こちらのこと鋭い視線で睨みつける。その表情からはすっかり笑顔が消えている。俺を格下の餌ではなく敵だと認識を改めたようだ。


「…..ここからが本番…ってか?」


 先ほどよりも増した威圧感に、ナイフを握る力が強くなる。いやこれ以上強くなられても困るんですけど….





「はぁ…..はぁ….っく!!」


 俺は身を仰け反らせて魔獣の爪を回避する。明らかに動きが変わった魔獣に俺は先ほど以上の苦戦を強いられる。

ただでさえ俊敏だった動きにさらに磨きがかかる。それに加えて一撃一撃が重い。まともに喰らわずに済んでいるものの、相手の攻撃が徐々に掠ることが増え、体のあちこちから血が漏れ始めている。集中力と体力の消耗が著しい。


 そして何よりもまずいのが魔力の底が見え始めているということだ。


 転生した時の恩恵か俺は通常の人よりも魔力量が異常に多い。そんな魔力タンクがあるにもかかわらずこうして魔力が尽き始めようとしているのには2つ理由がある。一つ目は身体強化、魔力装に使う魔力の量だ。今俺は普段の数倍の魔力を2つに注いでいる。そうでもしないと魔獣の動きについていけないし、攻撃を喰らったら確実に致命傷となるし最悪一撃で逝きかねない。ただ幸いな事にこれに関しては普段から使っている魔法ということもあって最大限消費する魔力量を抑えることができている。


 問題はこっちの方。ガルフに使った回復魔法だ。これが俺の魔力の半分近くを持っていったのだ。もちろん普段もかすり傷に対して回復魔法は使っている。だがあんなに大きな傷を治したのは今日が初めてのこと。ガルフが死ぬかもしれないという焦りで力みすぎたり、初めての大怪我の治療でなかなか感覚を掴めなかったりと魔法に使った膨大な魔力以外にも余分な魔力が持っていかれた。


 何か打開策を見つけないと…..これ以上戦闘が長引くとまずい….!!


 俺の消耗具合を知ってか知らずか畳み掛けるように放たれる攻撃を体を上手く使い何とか掻い潜る。


 ..….“あれ“を使えばいけるか….?いや、だめだ。リスクが大きすぎる。それにただでさえ魔力が少ないんだ。もし仮に倒せても魔力切れで森の中でぶっ倒れることになる。それは流石にまずい。というか森の中で倒れるとか普通に死ねる。


「グルルルァ!!!」


 本気を出したのに中々俺は捉えきれないことで感じる苛立ちがとうとう爆発したのか、魔獣は打って変わって大振りの攻撃を多用し始める。空を切る音が、地面から伝わる振動が大きくなる。凄まじい威力だ。しかし威力がでかいその分隙も生まれやすくなる。


「グルァ!!!!」


 …..ここだ!!!


 左から右への薙ぎ払いを大きく後ろへ飛び回避した俺に噛み付くように魔獣が飛び込んでくる。活動限界がちらちらと脳をよぎる中、訪れた絶好の機会。見逃すはずがない。


 俺は飛びかかってくる魔獣に背を向け、少し先にある木へと向かって地面を蹴る。空中で体を捻り、体の向きを180度回転させ魔獣の方に向きを変える。両足が木の幹にピタリとくっつく。顔を上げ、四つん這いの状態で俺の虚像を噛み殺した魔獣の姿を視界の中心に捉える。そして自分の体が耐えられる限界ギリギリの魔力を脚部へと集中させる。


「はあああああああ!!!!」


 曲げていた膝を伸ばし、溜めていたエネルギーを解放する。持っていたナイフを逆手に持ち替え、魔獣の頭部へと弾丸のような速度で一直線に突っ込む。


 いける!!


 心の中でそう確信する。隙だらけの魔獣。意識外の上空からの攻撃。そして魔獣にも負けず劣らずの速度。負ける要素がない、そう思えるほどの会心の一撃。このナイフを頭に突き刺せば殺せる。


 死が迫りくる魔獣。数秒後には自分の命が刈り取られる、そんな危機的な状況。なのに、それなのに


  魔獣の表情はひどく歪んでいた。


 笑みを浮かべた表情が見えた次の瞬間、何処からともなく発生した警告音が脳を揺らす。まずい。しかしそう思った時にはもう遅い。放たれた弾丸が止まることなどないように俺の体は真っ直ぐ魔獣の方へ引き寄せられる。


「───グルアアアアアァァァ!!!!!!!」


 咆哮。魔獣が口を開き森全体に響き渡るような大きな声を出す。


「んなっ!?」


 魔獣の雄叫びと共に衝撃波のような何かが俺を襲う。凄まじい速度を出していた俺の体は弾き返され、そのまま上空へと打ち上げられる。


「なんだよ今のっ!?」 


 狩人が罠にかかった獲物を逃すことはない。魔獣は笑みを深め跳躍する。俺は未だ警鐘が止まない脳から何とか体へと指令を出し、ナイフを構える。


 来い…..差し違えてでも殺してやる!!!


 追い詰められた鼠は猫に噛み付くことがある。しかしながら鼠が獅子に噛み付くことはできないのである。


 魔獣は俺に隙など見せず、リーチの長い右腕を上へと振りかぶる。そして蠅を叩くようにその腕を鞭のようにしならせる。


 やばい….死…..


 身体から聞こえてはいけない何かが軋む音と声のない悲鳴が鳴り響いた。

この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クロの窮地 [気になる点] スキンヘッドさんの見せ場 [一言] …は!、これは…スキンヘッドさんが助けに来るフラグ⁉
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