貴族との邂逅
やっとヒロインちゃんが出たぞい。
遅くなっちゃってごめんね!
「なんでCランクの魔獣がこんなとこにいるんだ?..」
神聖森は中心地から離れるほどに魔力が薄くなりそれにつれて魔獣のランクも低くなっていく。
だから本来ならこんなところにCランクの魔獣が出没することはないのだ。
森で何かがあったのか?いやそれとも...
目の前の光景を瞬きすらせず眺めながら頭をひねる。
「っ...ああああああ!!」
護衛であろう騎士の一人がホワイトウルフに手を噛まれその痛みのあまり絶叫する。
あ、やべ。今はこんなことしてる場合じゃなかった。
まずは敵の数を確かめる。もう一度探知魔法を使い敵の数と他の魔獣がいないかを調べる。
「数は14。近くに魔獣は.......よし、いないな」
俺は自分が乗っている木の枝を思いきり蹴りつけ、近くにいるホワイトウルフめがけて跳躍する。
そしてその勢いのままホワイトウルフの頭部を踏みつけるようにして着地する。
もちろん踏まれたホワイトウルフは即死である。
隣にいた味方の突然死と敵の出現にホワイトウルフの群れは混乱する。
その混乱の隙を逃さない。
俺はすぐさま近くのホワイトウルフに接近し首元にナイフをブスリと突き刺す。
続けざまに仲間を殺されたホワイトウルフたちは先ほどまで戦っていた騎士よりも俺の方が危険だと判断したのかこちらに向かって襲い掛かってくる。
上から3匹。俺はナイフを抜かず突き刺さっているホワイトウルフの体ごと振り払い上から襲い掛かってきていたホワイトウルフたちに死体となった彼らの仲間を叩きつける。
ドミノが倒れるように衝撃が一匹ずつ伝わり3匹は森の方へと吹き飛ばされ、そのまま木の幹にぶつかり、行動不能になる。
味方がどんどんやられていっても敵が引く様子は全くない。
むしろ敵討ちのためか勢いが増している。
再び3体が自分を囲むようにしてこちらに急速に接近する。
「囲まれる!早くその場を離れろ!」
まずいと思ったのかこちらを見ていた騎士が声を上げる。だが俺はいたって冷静だった。
腰に刺さっていた普段は解体するときに使う用のナイフを投げ1匹目をしとめる。
味方がやられてもブレーキを取り外してきたのか全く勢いが止まらない2匹が前と後ろからほぼ同時にこちらに飛びかかる。
俺は火属性魔法を使い、先ほどまでもう一本のナイフで埋まっていた左手の手のひらから火を起こし後ろの方へとかざす。
すると先ほどまで前進の二文字しかなかったホワイトウルフの動きが僅かに止まり、先ほどまで完璧に近かった2匹のタイミングが大幅にずれる。
俺は前方から突っ込んでくるホワイトウルフに回し蹴りをお見舞いする。その後遅れながら襲い掛かってきたホワイトウルフの攻撃を最小限の動きで避け、すれ違いざまにナイフを突き刺し仕留める。
その後も俺はナイフによる斬撃と蹴りなどの打撃はもちろん敵の死体など使えるものは何でも使い、傷一つ負うことなくホワイトウルフの群れを一掃した。
「ふぅ...」
出来上がった死体の山の中で俺はナイフにこびりついた血を落とす。
....さて...これからどうするかな...
あまりこの場に長居したくはないが傷を負ってる騎士の人たちにここにある死体の後処理を丸投げするのは少し憚られる。
まぁ一旦ガルフたちが来るのを待つかな、それが一番よさそうだし。
そう思い馬車から離れたところに移動しようとしたその時、馬車の扉が開く音が聞こえる。
うわぁ..まじか..
心の中でこれから起こりうるかもしれないことに嫌悪感を覚えながらも音のした方へ首を曲げる。
するとそこには金髪碧眼でイケメン、いかにも貴族な男性が顔をのぞかせていた。先ほどまで馬車を襲っていた外敵がすでに息絶えているのを確認したのか馬車から降りてくる。
いやこの惨状を見て平気なのかこの人..
先ほどは顔だけしか見えなかったが今は全体像がはっきりと視界の中に映る。
純白の衣装に金色の装飾を散らした堅苦しそうな服装、ぱっと見180cmはありそうな身長にバランスの取れた体型。住んでいる世界が違うとはまさにこのことである。
これが貴族か...すごいな.......
異世界初の貴族様に興奮を抑えきれずつい凝視してしまう。
その視線に気づいたのか貴族様とバッチリ目が合ってしまった。
やべっ..さすがに見すぎたか....
目が合った次の瞬間俺は目をそらす。そのまま明後日の方向を向いていようと思ったが先ほど貴族の男性が降りてきた馬車から物音がしたためそちらの方向に体を向けてしまう。
するとそこには瞳の色と同じ水色のドレスを身にまとい、先ほどの男性のものと比べて黄金味が少し抜けたプラチナブロンドの髪をなびかせながらこちらを見つめる少女の姿があった。
こちらを捉える宝石のように綺麗な瞳に吸い込まれるように俺もその少女のことをじっと見つめる。
「....綺麗だ....」
まるで作り物のような端正な顔立ちを見て思わず呟く。
物語に登場するお姫様が現実に降り立ったらこんな感じなんだろうなと思う。
おそらく経過した時間は数秒、だが俺にはとても長く感じられたその数秒間俺と少女は何も言わずただ互いに見つめあっていた。
「リーナ!外に出てきちゃ駄目だと言っただろ!」
「ご、ごめんなさいお父様...つい気になっちゃって..」
リーナと呼ばれた少女は慌てて頭を下げる。
親子...だよな..?もしかして不仲だったりするのかな..
厳しい口調で叱る父親に子供とは思えないほどに丁寧に謝る娘を見て疑問に思う。
「いや...気になってしまうのも無理はなかったな..すまない、少し厳しい口調だったね。」
「う、ううん。お父様は優しいよ!だって私を思って言ってくれたんだよね?」
「...リーナ..本当に君は天使のような子だ..ああ先ほどの私の愚行を許してくれ、リーナ。本当にすまなかった!」
「うん、大丈夫だよ、お父様。」
そうして二人は熱い抱擁を交わしました。めでたしめでたし。
はい、普通に仲良かったです。敬語なのは貴族だからか....
謝りながら娘のことを抱きしめる父親と謝られるたびに大丈夫だよと言葉を返す親子の姿をしばし見つめていると後ろからこちらに走ってくる足音が聞こえてくる。
これはガルフたちかな?一応探知魔法を...うん、ガルフたちだ。
ナイスなタイミングに来てくれるガルフたちに心の中で感謝しながらこちらに到着するのを待つ。
「はぁ..はぁ...クロ、大丈夫だったか?」
軽く息を切らしながら森から姿を見せたガルフがいの一番にこちらの安否を尋ねてくる。
「うん。大丈夫だよ。怪我もしてない。ところで二人は?」
「そうか、ならよかった。それと二人なら...」
「はぁ......はぁ.....ガルフさん早すぎるよ...」
「はぁ......やっと追いついたっす....」
次の言葉が発せられる前に後ろから二人が現れる。
二人とも息を切らしていてよほど体力を使ったのかその場にへたり込んでしまった。
「はぁ......クロは大丈夫そうだね....よかったぁ...」
「うん、大丈夫だよ。ラルトもお疲れ様。」
「はぁ....ほんっと疲れたよ...」
ぜぇぜぇとと肩で息をしながら俺が大丈夫そうなのを確認し笑顔を作るラルトに俺もねぎらいの言葉をかける。隣のヴァーレをちらりと見ると仰向けになり息を吸うので精いっぱいのご様子。
なんというかそのお疲れ様です...
全員が集まりラルトとヴァーレの体力が少し回復したら倒した魔獣の片づけを手伝ってもらおうと思っていたとき、予想だにしなかったセリフが後ろの方から聞こえる。
「....もしかしてガルフか?」
「......!!クロウフ様!?」
「おお!やはりお前だったか。いや久しいな、こうやって会うのは何年振りだろうなぁ。」
「お久しぶりです、クロウフ様。お元気そうで何よりです。」
クロウフと呼ばれた男性の前へと走り跪くガルフとそれを見て堅苦しいからよせと手を横に振るクロウフという男性。
........いや一体どういう関係なんですか?
この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。




