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雪合戦

痛そう(小並感)

盗賊に襲われてから数か月、季節はあっという間に秋から冬へと遷移する。

この地域は雪は滅多に降らないと以前ガルフに教えてもらったことはあるが今年は珍しく雪が降り地面をすっぽりと覆い隠している。


俺たちはいつものごとく森へと出向いている。ただいつもと違い魔獣狩りのために森に来ているのではなくこの珍しく降った雪を楽しむために来ている。

ノルマは大丈夫なのかって?大丈夫です。なんと兵士の人たちから冬はほとんどの魔獣が冬眠しているため魔獣狩りはしなくていいというかしても意味がないとのことでノルマも何もなくなりました。


働かなくていいじゃんとか思ったけどこの寒い冬をあんなおんぼろな家とこんな布切れだけで耐えろって言ってるんだから大分過酷である、がなんと俺とガルフは火の魔法が使えるため自力で暖をとることができる。まぁ魔力量が多い俺が基本的に魔法を使っているんですけど。

俺の就職先はストーブだったか...

ちなみに魔法で思い出したがヴァーレは土属性らしい。大工さんだったのですごく似合ってていいと思います。ラルトはまだわからないらしい。見た目的には風属性なんだけどどうなんだろう。


「うわぁ!!見てクロ!森が真っ白だよ!!」


両手を広げて人生初の雪を体験するラルトに俺は微笑ましい表情を向ける。

そういう俺も日本にいたころは雪が積もる地域に住んでいたわけではなく、年末親戚の家に遊びに行ったときくらいしか見なかった。年齢を重ねるごとに親戚の家に行くことも無くなっていったので久しぶりに見る雪景色に密かに興奮していた。

生き生きとした緑や色鮮やかな赤、黄色の葉ではなく雪を身にまとった木々の姿にどこか感動を覚える。あぁなんか今ならこの景色で俳句読めそうな気がしてきた。

...気がしただけで読めるわけではないです。


「えいっ!あはは冷たい!!ほらクロも!!」


俺が景色を堪能している最中いつの間にか雪にダイブしていたラルトに促されるまま俺も雪に向かって飛び込む。いや冷たっ!!ちょっ!冷たいんですけど!?いやまぁこんな服装で雪に突っ込んだら寒いですよね!ラルトなんでそんな笑ってられるの!?

防寒着と呼んでいいのかわからないボロボロのマントを身に着け雪の上で楽しそうに寝返りを打つラルトに驚きと困惑が混じった視線を向ける。


「おーいお前ら、風邪ひかない程度にしとけよー」


少し離れたところからガルフが俺たちに向かって大きな声で言う。ちなみにガルフは寒そうな様子は一切なくとても元気な様子だ。

この世界の人たちって生まれたとき体に耐寒性とか付与されてたりするのか?

一つの疑問がふとよぎるがガルフの隣でガクブル震えているヴァーレを見てそんなことはなかったとすぐさま疑問が解決する。やっぱガルフおかしいよ。体の一部が機械ですとか言われても納得しちゃいそうだわ。


「わかってるよガルフさん!!」


体を起こしたラルトが元気な声で返事をする。うん、風邪ひかなさそうですねこの子。

その後ラルトは俺を引き連れたまま雪に手や足、体を沈めて跡を残したり、木から枝を拝借して絵をかいたりとひたすらに雪遊びを堪能する。

もちろん楽しい。だが足りない。雪が積もったときにすることといえば...


「そりゃ!!」


俺は絵を描き続けているラルトの背中めがけて雪玉を投げつける。そう、雪合戦である。

つ、冷たい...しかも痛い...

意気揚々と雪玉を投げたが手袋なんてあるはずもなく素手で雪をつかみ、投げれるよう丸めることになる。その結果手は想像以上に冷たくなりナイフに刺されたかのような痛みが手全体に走る。


「あっ!!やったなぁ!!」


突然背後から攻撃されるもその表情は暗いどころか。

楽しそうに雪玉を作り「えいっ!」という声とともに雪玉を投げる。

その雪玉を俺はしゃがんで回避する。受けてあげないのかって?嫌だよ冷たいし。

その後も俺たちは雪合戦を続けたがラルトが投げる雪玉が当たることはなかった。

ふはは、魔獣狩りで鍛えた俺に隙などないのだ。


「ぐぬぬ..せいっ!!」


そんなのに当たるわk..ぐえっ。

掛け声とともに放たれた雪玉は予想以上に加速し俺の顔面に直撃し、その衝撃で尻もちをつく。

ゆ、雪玉ってこんなに痛かったっけ..?

日本にいた時も雪合戦は何回かしたがこんなに痛い雪玉は初めてだ。

一体どういうことなんだとラルトの顔を見るとしたり顔で種明かしする。


「驚いたでしょ?実は身体強化を使ったんだよねー。どう?僕の作った雪玉のお味は?」


一方的に当てられて大分フラストレーションが溜まっていたのかラルトは俺を見下しながら煽り始める。いや雪合戦で身体強化使うのは無しでしょ...

しかもすごいいい顔で笑いますねラルトさん。君そんな女の子みたいな顔してSっ気あるとか需要ありまくりでしょ。


本人に自覚はないと思うがSであることが分かったが、やられっぱなしのままいるわけにはいかない。俺は立ち上がり、身体強化をしながら雪玉をラルトに投げつける。

ラルトは避けようとしたが今までとは段違いの速さで飛んでくる雪玉に対応できず直撃する。


それから俺たちは熱戦を繰り広げた。最初は雪玉を当てられず、逆に当たりまくっていたラルトはコツをつかんだのか覚醒したように動きがよくなる。俺の投げる球を回避できるようになるだけでなく、俺の動きを先読みして球を投げてくるようになったのだ。

雪合戦の経験値も魔力量も俺のほうが多いから余裕と思っていたが「なんで急に強くなった!?」と脳内で一人叫ぶ羽目になる。しかし俺も今までの動きにちょっとしたフェイントを織り交ぜることでなんとか対処する。


数分間どちらの雪玉も当たらない拮抗状態が続くが泥沼の戦いも段々と終わりが見えてくる。

ラルトに疲れが見え始めたのだ。正確に言えば魔力の底が見え始めたのだ。

俺とラルトの魔力量には圧倒的に差がある。持久戦ではこちらに分があったようだ。

お互いに雪玉をいくつか投げ終えた後その時が訪れる。ラルトが俺の投げた雪玉を避けようとしたときに身体強化が解けたのかバランスを崩し転倒してしまう。


「これで終わりだ!喰らえっ!!」


俺は大きく腕を振りかぶり渾身のストレートを投げる。

そしてそのままラルトに直撃...するはずだった。

今まで投げていた時よりも思いっ切り投げたせいか雪玉はまっ直ぐではなく明後日の方向に飛んでいってしまう。大暴投である。


両手を盾のようにして顔を守っていたラルトは遥か遠くへ飛んでいく雪玉を見て好機と思ったのか慣れた手つきで雪玉を一瞬で完成させる。

まずいっ!!俺はラルトの動きを注視し、飛来してくる雪玉に備える。

そしてラルトが雪玉を投げようとしたとき「いってえええ!!!」という野太い声が森に響き渡る。


何だ!?そう思った俺とラルトは同時に声のした方に首を曲げる。

そして俺たちの目に映ったのは声を出しながら悶えるヴァーレの姿だった。

相当痛いのかままヴァーレは蹲ったまま動かない。

隣にいるガルフはヴァーレを心配している様子はなく自分の局部を押さえながら憐れんだ目でヴァーレを見ていた。俺とラルトは慌てて二人の元へ向かう。


「どうしたの!?大丈夫!?」


「ヴァーレ!?どうしたの!?」


ラルト、俺の順で動かないヴァーレに声をかける。よく見るとヴァーレも局部を手で押さえていた。

...あれっ...もしかして...いやそんなはずはっ...

ヴァーレがこんなことになった原因が突如天啓のように脳内を駆け回る。

そんなことあるはずないと頭を振るが完全に否定しきれなかったため痛々しい表情をしているガルフに少し申し訳なさそうに尋ねる。


「...ガルフ..もしかしてだけど..」


ガルフは俺の言おうとしていたことを察したのかヴァーレから目をそらして告げる。


「...ああ..とてつもない速さで飛んできた雪玉がヴァーレのに..な..」


ガルフを見ていた俺とラルトはぎゅいんと首を曲げヴァーレを視界に捉える。


「「ごめんなさい!!!!!」」


「ごめんねヴァーレ!でもね!あの雪玉投げたのはクロなんだよ!」


「ほんっっっっとにごめんヴァーレ。それしか言えない!!あとラルトも同罪だろ!?俺一人のせいじゃないだろ!」


「いやいやいやいやヴァーレをこんな目に合わせたのはクロでしょ?ひどいよねほんとにー。後罪を擦り付けるのはやめた方がいいんじゃない?」


もはや一種のオブジェになったヴァーレの前でぎゃいぎゃいと言い争いを始める俺たち。

それを見かねたガルフがため息をしながら両手でこぶしを作りそのまま俺たちの頭に落とす。


「とりあえずもっかい謝れお前ら」


拳骨を落とされた俺たちは我に返り言い争いをやめる。

そして先ほどからピクリとも動かないヴァーレに向き直り


「「ほんっっっとうにごめんなさい!!!!」」


上半身を90度に曲げ誠心誠意謝罪する。

それから十数分経った後ヴァーレは「ちゃんとあるっすよね?..あ、よかった..」と局部をさすりながら安堵の声を出す。そして立ち上がり引きつった笑みを浮かべながら俺たちを許してくれた。

いやほんとごめんヴァーレ...


「.....そろそろ帰るか」


ガルフはそう言いながら足取りがおぼつかないヴァーレの肩を励ますように叩きながら帰り道を歩き始める。俺たちはそんな二人の少し後を少し重い足取りで付いていく。

前からは「くっそ痛かったすよほんと。死んだかと思いました。」「ほんとドンマイだな、ヴァーレ。」という励ましたり励まされたりする会話家に着くまで続いた。

俺は二人の会話が聞こえる度に心の中でヴァーレに謝罪し、今度からもうちょっとヴァーレに優しくしようと心の中で思ったのだった。


この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。

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