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どっち?

よし!!

意識が覚醒する重い瞼を何とか開くといつもの見ているぼろぼろの天井が視界に映る。


「んん..あれ?俺確かヴァーレにおんぶされてそれから..」


目をこすりながらまだ少しけだるさを感じる体を起こす。右のほうを見てみると誰もいないので夜遅くまで寝ていたというわけではないらしい。ガルフのところに行こうと思ったその時今まで聞いたことのない声が左のほうで聞こえる。


「あ!起きたんだね!今ガルフさん呼んでくるからちょっと待ってて!」


慌てて振り向くとそこには日本ではあまりというかほとんど見ない緑色の髪と黄色の瞳を持つ子供がいた。


「うわぁ...ファンタジー...」


あの子は誰なんだとかガルフのこと知ってるんだとかそんなことよりも先にこの感想が出てきた。

あれ地毛なんですか!?やばいんですけど!?ガルフの赤毛とかはまぁ地球にも探せばいるだろうけど緑色の髪で黄色の目してるのコスプレ以外で見たことないんですけど!!すごい!!

間近で見た天然の緑髪に一人感動していると先ほどの子がガルフとヴァーレを引き連れてこちらに歩いてくる。


「起きたか、クロ。気分はどうだ?」


「うん、まだちょっとだるいけど大丈夫だよ。」


「それならよかった。ヴァーレにもお礼言っとけ。」


「ありがとねヴァーレ、おぶってくれて。」


「全然大丈夫っす!」


ひとまず元気そうな姿を見てガルフとヴァーレが表情を和らげる。


「俺ってどのくらい寝てた?」


「2,3時間くらいか?そんぐらいだ。今から飯にしようとしてたところだ。」


あ、そんなに寝てないのね。なんとなくした予想が合っててよかった。

それで...


「ねぇガルフ、その子は?」


「ああ、言い忘れてたわ。こいつはラルトだ。」


ガルフからラルトと呼ばれた子がガルフに続いて口を開く。


「初めまして、クロ君!僕はラルト、年は10歳だよ!これからよろしくね!」


そう言って満面の笑みで笑うラルト。さっきは髪の色とかに目を引かれたけどこの子すごい中性的な顔立ちしてますね。...男?いや女の子か..?

ぱっと見じゃ判断できないし声で決めるのもちょっと難しい。一体どっちなんだ...でも僕って言ってるし男か?..いやあるいは...

中々反応しない俺にラルトは首を傾げ「あっ」と何か気づいた様子で口を動かす。


「いきなりで名前を呼ばれてびっくりしたよね。実はガルフさんから聞いてたんだ、ごめんね。」


いや別に気にしてないですよ、そんなこと。でももともとは俺が反応しなかったから勘違いしちゃったんだよね。ごめんね、ラルト...君?それともちゃん?ど、どっち!?


「全然気にしてないよ。それとクロでいいよ。これからよろしくねラルト。」


「うん、よろしくね!クロ!」


「よし、挨拶も済んだし飯食うぞ飯。」


ガルフはそう言って部屋を後にし、ラルトも返事をして後ろをついていく。ヴァーレは俺を待っているのかまだ部屋に残っている。

よしチャンスだ。さっきは呼び捨てにすることで対応したが早急に解決せねば..!


「...ねぇヴァーレ、ラルトって性別どっち?」


「男っすよ。俺も最初間違えたっす。」


「あ、やっぱり?」


「あんなの一発じゃ見抜けないっすよ。後本人はこのこと気にしてるみたいんなんであんまり言わないほうがいいっすよ。」


「わかった、教えてくれてありがとねヴァーレ。」


ヴァーレは俺の言葉を聞いて親指を立てる。いやほんとわかんなかったから助かった。しかもコンプレックスらしいのでなおさらよかった。ひとまずラルトの謎が解けたので俺とヴァーレも部屋を出る。いつも過ごしている部屋に向かうと大分人が減っていた。数えてみると俺とヴァーレを含めて14人しかいなかった。当初の約半分の人数である。


「こっちだぞー」


ガルフが部屋の一角にテーブルと椅子を用意してくれていた。

その後はご飯を食べながら森での出来事について聞いた。

最初はガルフが話していたのだが途中からラルトが目を輝かせながら話してくれた。


「それでね!もう体が動かなくてどうしよう!って時にガルフさんが助けてくれたの!すごいんだよ!ガルフさん盗賊をばったばった倒したんだよ!」


身振り手振りをしながら楽しそうに話すラルトにガルフは少し居心地が悪そうにしている。だがラルトはそんなのお構いなしに話を続けていく。


「...だったんだ!いやぁ女の子みたいな見た目が役に立つときが来るなんて思わなかったよ。」


ラルトは盗賊に女の子だと勘違いされていたらしくそれで殺されずに済み、結果ガルフに助けられたとのこと。う、うーむ..なんて声を掛けたらいいかわからん。


その後森での話を終えた後はラルトから色々質問された。

どこの出身なのかとか、ガルフとはどうやって出会ったのか等々の質問がずっと続いた。

周りは大人しかいないからこうやって話したりすることは滅多になかったらしい。

でもさすがに寝る前まで続くとは思わなかったよ、ラルト君...

人数が減ったことで前よりも大分スペースに余裕ができた寝室で横になるとラルトの質問攻めに対応して疲れたせいか数時間前まで寝ていたはずなのにすんなりと寝ることができた。






あれ?ここどこだろう..俺さっき寝たはずじゃ..

はっきりとしない意識の中周囲を見回す。

だが周囲は暗闇に包まれていたため自分が今どこにいるのかいまいちよくわからない。


「...人殺し..」


「お前のせいで...俺たちは...死んだんだ..!」


後ろから聞こえる呪詛のような言葉に思わず振り向く。

するとそこには首から血を垂れ流しながらこちらに近づいてくる二人の男の姿があった。

ぽたぽたと血が落ちる音を立てながら接近してくるも辺りが暗いせいかよく顔は見えない。


「え、どうして...」


そして顔がしっかりと見えるほどの距離になったとき言葉が漏れる。

男たちの正体は俺が今日殺したはずの盗賊だった。

その後も二人は呪詛のような言葉を発しながらこちらへゆっくりと近づいてくる。


「人殺し..お前のせいで..」


「助けてって言ったのに..なぜ殺した...」


男たちは血走った目でこちらの顔を見ながら何度も訴えかける。

その姿に距離を取ろうと後ずさりする。

しかし、二人はその分距離を詰めてくるので距離をとることはできない。

その間もいやに耳に残る怨嗟の声を上げ続ける。


「違う..あれは仕方なかった!生き残るためには仕方なかったんだ!」


聞こえてくる声をかき消すように、そして自分に言い聞かせるように叫ぶ。


「人殺し...人殺し...」


違うと叫んでもその声は止まることなく響き続ける。


「違うんだ...俺は...」


恨みのこもった声に俺は耐え切れず、その場に膝をつく。

俯いていると自分の手の色がいつもと違うのが目に入る。

恐る恐る見てみると俺の手は赤黒く染まっていた。


「お前の手で俺たちは死んだんだ...」


「お前が殺したんだ...お前が...」


血まみれの男が追撃をかけるように言葉を発する。


「お前はただの人殺しだ...!」


「お前は平気で人を殺す悪人だ...!!」


「ち、違うっ!俺は..俺は...」


否定しようとするも血で汚れた自分の手を見て言葉が詰まる。


「俺は..俺はっ...!!」




「っっっ!!はぁ..はぁ....」


勢いよく体を起こし、乱れた呼吸のまま周囲を見回す。そこはいつもの寝室でありほかの奴隷の人たちが寝ていた。それから自分の手に目を移すも映ったのはいつもと変わらない肌色の手だった。


「...夢..か...」


乱れた呼吸を整え先ほどのことが現実じゃなかったことに安堵する。

しかし先ほどの夢のせいかどこか気持ち悪さを感じる。

その気持ち悪さを流そうと俺はほかの人を起こさないよう静かに井戸へ行き顔を洗う。

幾分かはましになったが全ては流しきれなかった。


「...はぁ...」


寝たはずなのに逆に疲れたが溜まった気がしてため息が出る。

戻ろう、そう思ったとき


「クロ、どうしたんだこんな時間に?」


びくりと肩が跳ねる。声のするほうを見るとそこにはあくびをしながらこちらへ歩いてくるガルフの姿があった。


「なんだ..ガルフか..驚かさないでよ..」


「驚かしたつもりはないぞ?便所の帰りにたまたま見かけたから声をかけただけだ。そっちこそこんな時間にどうしたんだ?」


「べ、別に..ちょっと喉乾いただけだし...」


「...」


無言のままこちらを見つめるガルフに気まずさを感じ、視線を落とす。

それから数秒後俺が何も言わないことに嫌気がさしたのかガルフが乱暴に俺の頭を撫でる。

そして


「合ってるかどうかはわかんないが死んだ奴のことで悩む必要はない。生きてりゃそれだけでいい。生きてれば何とかなる。人を殺そうが何だろうが、な?」


「....」


その言葉を聞き余計に顔を上げることができなくなり、その結果先ほど同様に沈黙が続く。


「ま、あんまり気にすんなってことだ。お前は何も間違ったことはしてねぇよ。じゃ俺は寝るから、お前も早く寝ろよ。」


そう言ってガルフは寝室に戻っていった。ガルフの姿が見えなくなったのを確認してから俺はその場で膝を抱えるようにしてうずくまる。


どうしてわかったんだ、なんでそんな優しい言葉をかけれるのかとこの場にいないガルフに悪態をつきながらへばりついていた気持ち悪さを洗い落とすかのように声には出さず静かに涙を流す。

これからはあの悪夢を見ても大丈夫なように、人を殺した自分を許せるように、これから人を殺すかもしれない自分を受け入れるために俺はただ一人泣き続けた。


この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。

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