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スキンヘッドさん

多分明日続き出します...多分!!

どれくらい時間が経っただろうか。俺の目元は赤くなり、精神的に疲弊していたのも相まってか少し体がけだるく感じる。


「あ、あのー...ちょっといいすかね?旦那方..」


突如後ろから声を掛けられ思わず地面に落ちていたナイフを拾い、声のする方へ刃先を向ける。


「って、敵じゃないですって。さっき助けてもらったやつですって。」


ああ、さっきのスキンヘッドか。俺は一言謝り俺はナイフを下す。どうやら俺がずっと泣いていたせいで声を掛けるタイミングを失ってしまったらしい。俺のせいでごめんねスキンヘッドさん。

また、ガルフも存在を忘れていたのかスキンヘッドの男、ヴァーレの言葉を聞きそんな奴いたなと一人納得する。


「ああ自己紹介まだだったな、俺はガルフだ。あんた名前は?」


「あ、はい。自分ヴァーレって言います、ガルフの旦那。」


そこそこガタイのいい男がガルフにへりくだって話す姿は完全にヤのつく組織の上司と下っ端である。

ちらりとガルフを見るとヴァーレの呼び方に少々顔を引きつらせている。


「なぁ、ヴァーレ。さすがに旦那はやめてくれないか?なんか変な気分になるんだが..」


「そんなわけにはいかないっすよ旦那!あなたは命の恩人なんすから!」


「良かったじゃんガルフ、従順な部下が出来て。」


「嬉しくねぇよ..」


俺のからかいに心底げんなりするガルフ。まぁ確かにこんなスキンヘッドでガルフと同じくらいの身長、体格の男から旦那と呼ばれるのは嫌だな。

ガルフの珍しい表情を眺め、にやにやしているとヴァーレが話を続ける。


「そしてそちらのお子さんの名前は何て言うんですかい?」


「ああ、俺の子供ではないけどな。こいつはクロってんだ。」


「クロだよ。よろしくね、ヴァーレさん。」


「クロ坊っすね、よろしくお願いしまっす!後自分のことはヴァーレと呼んでください!」


丁寧に頭を下げ挨拶をするヴァーレに俺は困惑を隠せない。ちょっ!俺子供ですよ!?こんな子供に深々頭下げないでしょ普通!しかもクロ坊って何?坊つける意味あった!?呼び捨てでいいよ!


「あ、頭を上げて?後俺のことは呼び捨てでいいから、ね?」


「そんなわけにはいかないっすよ坊。あなたも命の恩人なんっすから。」


笑顔で言うヴァーレを見てガルフの気持ちがよくわかった。何この気分上手く言葉に出来ないけどなんか嫌だわ!先ほどまでにやにやしていた自分が一転して慌てふためく姿にガルフは悪い笑みを浮かべながら俺の肩を叩く。


「良かったじゃないかクロ。付き人が出来て。しっかりこき使ってやるんだぞ?」


「しないし、嬉しくないよ!」


その後説得を試みるものの結局ヴァーレの名前の呼び方は変わらず、二人して肩を落とす結果となる。

自己紹介を終え少し落ち着き、これからどうするかの話へ話題が変わる。


「んでだ、クロ。お前はヴァーレと一緒にここ残ってろ。俺は他の奴らの様子を見てくるから。」


「え、なんで?俺も一緒に行くよ?」


「いやいい。お前相当疲れてるだろ?ここでヴァーレと一緒に待っててくれ。」


その一言を聞き、言葉が詰まる。一緒に行きたいのは山々だが疲れているのは事実だし、そんな状態で一緒に行ってもただ足を引っ張ってしまう。ここは大人しく言うことを聞く方が良さそうだな。


「分かった。気を付けてねガルフ。」


「おう、そっちもヴァーレをしっかり守れよ?」


そう言ってガルフは森の中へ走っていく。ヴァーレが守られることが前提なのか..本人傷ついてない?大丈夫?心配そうにヴァーレの方を見ると


「坊、護衛お願いします。あ、荷物は任せてください!」


あ、大丈夫そうだわ。笑いながら元気に言うヴァーレを見て先ほどの杞憂は一瞬で霧散する。結構ガタイ良いのにこんな頼りがいないなんて..


ガルフがいなくなった後は座りながらヴァーレと雑談に花を咲かせる。

ヴァーレは元々大工の仕事をしていたが親が重い病にかかり、その病気を治す薬を買うお金を捻出するために自ら奴隷になったらしい。この人良い人過ぎる..親のために奴隷になるなんて中々出来ないぞ..


それから奴隷になった後本人は争い事は得意でないのにガタイが良いせいで戦えると勝手に思い込まれていて大変だったらしい。か、可哀そう..

心の中ヴァーレの境遇に一人涙していると俺がどうして奴隷になったのかについて聞かれる。

出ました答えにくい質問。自分気づいたら奴隷になってたんですよねぇ..

口減らしでもないしそもそもこの世界に親とか家族とかいないですし。

少し反応に困ったが特に嘘をつく必要もなく日本から転生したこと以外はガルフにも話していたためそれと同じ内容とガルフと出会ってからのことを軽く話す。


「ぼ、坊も結構つらい思いしてたんすね..すごいっす..」


とても同情されました。いやあなたの境遇もかなりひどかったですけどね。


「ヴァーレの方が辛かったでしょ。後ガルフ居ないから言うけど無理に下手に出なくてもいいんだよ?」


自分よりも遥かにつらい思いをしているのに俺のことを褒めるヴァーレに無理はしないでと伝える。また、ガルフの機嫌を損ねないように俺に敬語を使ったりしているならその必要はないことも話す。そんなことを言われると思っていなかったのかキョトンとした表情を見せる。が、数秒もしないうちに表情が変わり、笑いながら言う。


「旦那がいるからとかじゃないっすよ。昔から親に言われてたんすよ。人に助けられたらちゃんと返しなさいって。今回は命を助けらたんすからこれくらい当然ですよ。むしろ足りないくらいっす。」


「...」


まさか自分にまで恩義を感じているとは思っていなかったので思わず黙りこくってしまう。それと同時にヴァーレが良い人過ぎて疑っていたことに少し申し訳なさを感じてしまう。


「ど、どうしたんですか?いきなり黙って..俺なんか気に障る事でも言いましたか!?」


「あ!いや違う違う!ヴァーレがあまりにもいい人だから驚いてただけ。」


「いやいや、俺はそんな出来てる人間じゃないっすよ。まぁ褒められて悪い気はしないっすけど。」


ヴァーレは俺の言葉を聞き満更でもない表情をする。うん、すごいいい人だけどなんか素直にほめたくなくなるなこの人。なんでだろうね。


その後も軽く雑談をしながらガルフを待っていると何かが駆けてくる音が聞こえる。こちらへ近づいてくる早さと音的に人間のものではなく魔獣のものだと分かる。


「ヴァーレ魔獣来てるから隠れてて。」


「え!?あ、はい。了解っす!」


雑談に気を取られていたのか近づいてくる音が聞こえていなかったヴァーレに退避の指示を出してから戦闘態勢に入る。それから少しして血の匂いに釣られたのか3体のウルフが姿を現す。

おそらくこの3体以外にもウルフがいるだろうし仲間を呼ばれる前に仕留めたい。

そう考えた俺はその姿を目視した後すぐ地面を蹴り一気に距離を詰める。そしてそのまま一体ずつ確実に仕留めていき仲間を呼ばれる前に仕留めきる。

ふぅと一息つきながらウルフの血が付いたナイフを眺める。


「魔獣相手ならこんなに楽に殺せるのになぁ..」


ガルフやヴァーレのおかげで少し気は紛れたもののやはり先ほどのことが尾を引く。魔獣の死体や血を見ても何も感じないのにどうして人の死体や返り血、ナイフにこびりついた血を見ると気持ち悪くなってしまうのだろう。考えても仕方がないと分かっていてもどうしても頭の中から消えていかない。


「す、すごいっすね坊..あっという間に倒しちゃうなんて..」


気持ちが下がり始めようとしたとき、草陰に隠れてこちらの様子を見ていたヴァーレが歩み寄りがながら声を掛ける。ヴァーレの方を見ると顔に自分は驚いていますと書いてあるほど分かりやすい表情をしてウルフの死体を眺めていた。


「いやいやウルフ3体だからそんなにすごくないよ。」


「いやウルフ3体を一人で相手するのはきついと思うんすけど..」


苦笑いしながら言うヴァーレに首をかしげる。そんなにきついかな?普通にこれくらいなら余裕だと思うんだけどなぁ..納得のいかない俺にヴァーレは表情を変えずに続けて口を動かす。


「ガルフの旦那基準で考えてません?詳しくは知らないっすけど多分あの人一般人の数倍は強いと思うっすよ。」


あぁ...なるほど..ヴァーレに言われて気づく。そういえば俺の判断基準ガルフだった。ガルフ以外の人がどのくらい戦えるのか、どのくらいの強さなのか全く知らなかった。


「だよね、やっぱガルフっておかしいよね。」


「いや..坊も大概っすよ。」


ヴァーレに共感を求めたが返ってきたのはあまりにも冷たい言葉だった(当社比)。そういえば俺少し前にウルフ3体は余裕的なこと言ってたわ。

うん?..あれ..俺もガルフみたいにちょっとやばい部類に属しているのでは..?俺チートみたいな魔力量してるし..

自分は普通だと思っていたのにそうではないことを認識させられ、その事実に頭を抱える。そうしていると少し離れたところから物音がしたのを察知する。


「あれ?なんか何か音しませんでした?」


どうやらヴァーレも物音に気づいたらしく不安げな声でこちらに確認してくる。


「したね。多分こっちに近づいてきてる。こいつらの仲間じゃないかな?」


「了解っす。じゃあ俺はまた隠れてるんで。」


ヴァーレは俺の返事を聞いてすぐ踵を返し先ほどまで隠れていたであろう場所へと歩いていく。戦闘の邪魔にならないからいいけどホントに逃げ隠れするときすごい早いね君。

ヴァーレが隠れ始めたのを見てこちらへ向かってくる音に意識を集中させる。そして気づく。

それは魔獣の足音ではなく人間のものだと。


聞こえてくる音からして近づいてきているのは一人だ。ガルフが戻ってきたのか?もしそうだとしたら早すぎる気がするけど。じゃあガルフじゃなかったら誰だ?奴隷の人?それとも..


こちらに近づいてきている人の候補を考え、3人目の候補者が思いついたとき脳裏に先ほどの光景がフラッシュバックする。3人目じゃないといいなと願いつつ強張った体でナイフを構え、荒くなった呼吸のまま相手の姿が見えるのを待つ。


それから数秒後、姿を現したのは息を荒げどこか慌てている様子の盗賊だった。

はぁ....今日は厄日だな..これ..


この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。

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