表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

人殺し

遅くなってしまいました..

ブクマ等々感謝です!大変励みになりますです!

「しかも一人はガキかよ。お前もついてないなそこの黒髪の奴。ま、可哀そうだし一撃で殺してやっから安心しな。」


斧を持った男が笑いながら距離を詰め、勢いそのまま斧を振りかぶる。俺とガルフは後ろに飛び退きそれを回避する。あ、そういえばさっきの人どうなったんだろう。ちらりと横目で見てみるとすでにどこかの草陰に隠れているようだった。早っ!いや邪魔にならないからいいけど。


スキンヘッドの安全を確認できたところで戦いに再び集中する。

斧を振った男(以後盗賊A)に反撃をしようとするもその左右から剣を持った男(ガルフに向かっていった男盗賊B、俺に向かってきた男盗賊C)がこちらに向かって剣を大きく振り下ろす。


俺は盗賊Cの剣を避けながらナイフで相手の左わき腹を斬りつけるがそれを見て盗賊Cは回避したため浅い傷をつけるだけで終わる。盗賊Cはこちらが反撃してくるとは思っていなかったのか先ほどの余裕そうな表情から一転して真剣な顔つきへと変わる。


「ガキが反撃してくるとは思わなかったぜ。お前は散々殴った後に殺させてもらうわ!」


そう言って先ほどの大振りとは異なり確実に仕留めにきていると感じさせる連撃を放つ。その攻撃を避け、あるいはナイフで受け流していき隙が出来たところで相手の腹部に蹴りをお見舞いする。


子供の体から繰り出されるはずのない威力の身体強化キックをもろに受け盗賊Cは体中を走る痛みのあまりその場で蹲る。


ここ。俺は盗賊Cに近づき首をナイフで切ろうとする。しかしその瞬間「人殺し」という言葉が頭をよぎり刃が肌に触れる瞬間ピタリと手が止まる。日本で生まれ育った俺にとってやはり殺人という行為は超えてはならない一線だったらしい。


「っ!..魔獣狩りで慣れてきたと思っていたのに..」


やらなきゃと強く念じるもののそれに反してナイフをもつ手はただ震えるだけだった。

殺さなきゃと思う気持ちと超えてはならない、してはいけないと言い聞かせているもう一つの気持ちに挟まれどうしたらいいのか頭の中がぐちゃぐちゃになる。


「クロ!!」


盗賊Bをひるませ余裕が出来たガルフは盗賊を前に中々動かない俺に警鐘を鳴らすべく名前を呼ぶ。


「このガキィ!!」


ガルフの声とほぼ同時に盗賊Aが殺されそうな仲間を助けるためにこちらに斧を振りかぶろうとする。

くそっ!気持ちの整理くらいさせてくれ!

下唇を噛んだまま俺は盗賊Bの肩を蹴り、すぐさまその場を転がりながら退避する。その直後先ほどまでいた場所に斧が叩きつけられその衝撃で地面がえぐられる。

それだけで攻撃は止まらず盗賊Aは斧を両手でしっかりと持ち、大きく薙ぎ払うように振り回す。しかし相手の攻撃は威力は高いが、その分大振りで隙が生まれるため反撃はしやすかった。

相手の横なぎと同時に跳躍し顔めがけて蹴りをお見舞いしその蹴りで相手はよろける。

今度こそ殺れると思い相手の首にナイフを突き刺そうとする。が、刃が触れる直前に軌道が逸れ、横を掠めるだけに終わってしまう。

まただ...


殺すという意思に反し体は命令を受け付けない。未だ命を奪うことに抵抗を覚える心の弱さに苛立ちを覚える。しかしそれと同時に心の底ではどこか安堵しているような気がする。

違う!!...俺は安心なんかしてない!早くこいつをやらなきゃいけないんだ!


「..この...くそがぁ!!」


「っ..!」


盗賊Aは大きく腕を振り払う。俺は違う違うと自己問答することに意識が割かれていたために回避が遅れてしまう。その結果盗賊Aの腕は俺の腹部にクリーンヒット、俺の体は吹き飛ばされてしまいそのまま木に叩きつけられる。


「っぐっ!!」


魔力装で体を覆っていたためダメージは抑えられたものの木にぶつかった衝撃で座り込む羽目になる。


「これで死ねやこのクソガキィ!!」


危うく殺されそうになったことへ怒りを全面に出し盗賊Aは斧を大きく振りかぶる。喰らったら間違いなく死ぬ。頭上から襲い掛かる斧をよそに俺は脳内で長々と葛藤を続けていた。


殺さないと。でも相手は人だぞ?魔獣とは違う。でも殺らなきゃこっちが殺られる。だが殺すのを二度もためらった。それに殺さなかったことに安心感さえ覚えている。そんな俺に出来るとでも思っているのか?じゃあここで大人しく死を待つのか?何もせず、座り込んで迫っている死を受け入れるのか?

...嫌だ、ここで死にたくない。俺はまだ生きていたい。まだやりたいこともあるし、ガルフに何か恩返しもしたい。それに今まで俺が頑張ってきたのは何のためだ?それはこの世界で生き残るためだ。

じゃあ俺が生き残るために今すべきことはなんだ?今すべきことは...

鋭い視線で敵を捉える。


「おらぁ!!」


「...うあああああ!!」


俺は地面を思い切り蹴り、身をそらし斧による攻撃を避けながら相手の懐に飛び込む。そしてそのまま胸あたりの高さまで跳躍し、盗賊Aの首をためらいなく切り裂く。鮮血をまき散らしながら盗賊Aは重力に身を預けるように倒れこむ。


「はぁ...はぁ...はぁ...うっ..おええええ」


初めて人を手にかけた感触と首を切った際に浴びた返り血の生暖かさに耐えきれずその場で嘔吐してしまう。魔獣を殺したときの何十倍もの気持ち悪さに心は悲鳴を上げ、それに伴い体からどんどん力が抜けていく。さらに呼吸は荒くなり、血が巡らないせいか眩暈までしてくる。


「てめぇよくも!お前だけはぜってぇに殺すぞこのクソガキがぁ!!」


先ほど仕留めそこなった盗賊Bは仲間を殺された怒りに駆られ、痛みをこらえながらも凄まじい形相こちらに近づき剣を構えながらこちらに急接近する。


あやばい、死ぬ。俺は悪い視界の中でこちらに接近する男を捕捉する。なんとか避けようと試みるも、手足に力が入らずその場を離れるどころかナイフを持つことすらままならない。

結局俺はここで死ぬのか..死にたくないから人殺しまでしたのに。

走馬灯を見るかのようにこれまでの数か月に渡る異世界での生活に想いを馳せる。

はぁ..結局魔獣を殺すために森を駆け回っただけかぁ。どうせならチート能力もちで美少女が周りにたくさんいて..そんなハーレム生活を送ってみたかったなぁ。あ、俺の魔力量は一応チートみたいなものか。

嫌だな....死にたくないなぁ..こういうとき普通の異世界ものだと女神が助けたりするんだろうけどそういうのは無さそうだなこれは..


だんだんと近づいてくる死の恐怖に耐えきれず俺は目をつむる。

数秒後には俺の体は真っ赤に染まっているのだろうと覚悟していたがその未来は訪れることなく、その代わりとして聞きなれた声が近くで大きく鳴り響く。


「うおおおおおおっ!」


その声に驚き、目を開く。


すると視界の先には右わき腹から左わき腹へと剣を生やした痛々しい姿の盗賊Bといつもよりもどこか緊迫した顔つきで盗賊Bを睨み、剣を突き刺しているガルフがいた。


「..ガル..フ..」


ガルフは盗賊Bから剣を引き抜きとどめを刺す。そして動かなくなったことを確認してからこちらへ駆け、そのまま俺と視線を合わせるようにしゃがみ込む。


「大丈夫か!?クロ!」


俺の肩を力強く掴み、今までに見たことないほどの心配そうな表情でこちらの安否を問うガルフ。


「大丈夫だよ、ガルフ。まぁ死んだなとは思ったけど。」


「勘弁してくれよホントに。援護に向かおうとしたら殺されかけてるんだぞ?すげぇ焦ったわ。でも間に合ってホントに良かった。」


自分はまだ生きているという事実に安心感やら嬉しさやら何とも言えない感情が渦巻く。

そして同時に優しく微笑みながら俺が生きていることに安心しているガルフにどこか申し訳ないという気持ちがふつふつと湧き出る。


「..ごめん、ガルフ..俺が何回もためらったせいでこんな...」


「いいんだ、クロ。それが普通だ。お前は何も間違っちゃいない。それと..」


ガルフは俯きながら謝る俺の言葉を遮り、頭に手を乗せる。


「よく頑張ったな、クロ。」


たった一言。その言葉を聞き、今まで張っていた緊張の糸が緩み自然と涙が溢れてしまう。

泣くはずじゃないのに、こんなはずじゃなかったのにと頭の中でそう思っても体は言うことを聞かず人を、同族を殺したことに対する辛さや苦しさを吐き出すように涙を流し続ける。

そんな俺をガルフは自分の子供のように優しく抱きしめよく頑張った、辛かったなと励ましの言葉を何度も投げかける。

先ほどまでの喧騒は風に吹かれていったのか辺りはすすり泣く音がただ響いていた。



この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ