難易度上昇 下
「クロ!!」
ガルフに叫ばれ、俺は狼の魔獣にとどめを刺そうとしているガルフの動きを止めようと飛び掛かってきていた狼の魔獣、ウルフの頭にナイフを突き刺す。俺たちは今普通の狼のおよそ3倍ほど身体スペックが上昇した感じの魔獣のウルフの群れに襲われている。数は15体。こんな不利な状況になったのは少し前のことである。
初めて遭遇したDランクの魔獣であるウッデスモンキーを倒して少し休憩した後、さらに奥へと進むために歩を進めていた俺たちは道中3体のウルフに遭遇する。ナイフを抜き戦闘態勢に入るがその場で戦闘するのではなく視界の開けた戦いやすそうな場所まで移動するというガルフの指示が出たため急いでその場を離れる。移動中に理由を尋ねるとウルフはウッデスモンキー同様に群れて行動しているからと返ってきた。そして戦いやすそうな場所にたどり着き改めて戦闘態勢に入る。ガルフの情報通り群れで行動していたらしい。先ほどの3体はおそらく斥候的役割を担っていたのか、少し時間が経った後に12体のウルフが姿を現す。そしてそのまま2vs15という圧倒的に不利な戦いが始まったのだ。
これまでの戦いで経験したことのない数の魔獣に足がすくむ。この数相手に2人で勝てるのだろうか?いくらガルフでもこの数は厳しいのではないか?ここで俺は死ぬのだろうか?そんなネガティブな思考が頭を巡りそして体を支配していく。だが魔獣は俺を待つはずがない。ウルフたちは周りを囲むように移動し始め、さらにそれを妨害されないように3体のウルフがこちらに向かって近づいてくる。
ナイフを抜き戦う姿勢は取っているものの手に力が入らずまともに戦えそうにない。
「クロ、無理そうなら逃げろ。今なら多分逃げられる。戦うか逃げるか早く選べ。」
すでに戦うこと、ウルフを殺すことに意識を向けているガルフは少しきつい口調でそう告げる。確かに俺なら逃げられる。だがそうすればガルフはどうなる?この数相手に勝てるのか?今まで助けてくれたのに、いろんなことを教えてくれ親切にしてくれたのにここで見捨てることが出来るのか?
出来るはずない。死にたくはないけどガルフを見殺しにするのはもっとしたくない。
ナイフを握る力が、すくんでいた足がもとに戻る。
「逃げないよ、仲間を見殺しにして逃げるなんてできない。」
「...仲間ねぇ..子供がそんな偉そうなこと言うなよまったく。行くぞクロ、完全に囲まれる前に殺るぞ。」
あー...仲間とかやっぱり言い過ぎましたよね、なんかすみません。言い過ぎてしまったなぁと恐る恐るどんな表情をしているのだろうとガルフを見ると想像していた表情とは別に少し嬉しそうな表情をしていた。気に障ってなくてよかったです。
「うん、わかった。」
こちらに接近していたウルフに向かって距離を詰める。ガルフが剣を薙ぎ払い相手の動きを止める。その隙を逃すことなく俺が一気に距離を詰め斜め下からナイフを首に突き刺す。そして俺に噛みつこうとするウルフをガルフが切りつけとどめを刺そうと追撃する。
「クロ!!」
その声とほぼ同時に動きガルフに飛び掛かってきたウルフの頭にナイフを突き刺す。
こちらを囲むように位置しているウルフたちは3体のウルフがなんなく倒されたのを見てかこちらの様子を伺い中々動く様子がない。そんなときである突然ガルフが「はっはっは」という笑い声が隣から聞こえてくる。一体どうしたのだと隣を見ると不敵な笑みを浮かべ剣を肩に担ぎながら
「なんだ?来ないのか?ならこっちから行かせてもらうぞ!」
そう言ってウルフに向かって走り出す。
ってぇええええええ!?ガルフさんもっと冷静なキャラでしたよね!?何か変なものでも食べちゃいましたか!?こんな状況でこっちから行くぞじゃないわ!しかもそんな笑いながら前出るとか戦闘狂か!
身体強化をして結構な速度で移動したガルフに1体のウルフは反応しきれずに剣を頭に叩きつけられる。だがしかし近くにいたウルフ2体が背後から同時に襲い掛かる。
いやそりゃそうなりますよね!ってやばい、急がなきゃ!俺はガルフの背後まで一気に駆け抜け1体目のウルフの頭を蹴りつけそのままウルフを足場にして跳躍し空中で一回転してもう一体のウルフにかかと落としをお見舞いする。そして動けなくなったところでナイフでとどめを刺す。
「ガルフ!急に行かないでよ!びっくりしたじゃん!」
後ろを振り返り転生してから初めて出す大声で思ったことをそのままガルフにぶつける。今まで助けてくれたし守ってくれたし文句言えた立場ではないと思うけど命掛かってる状況で笑いながら突撃されたらこうなると思うの。
「いや悪い悪い。仲間だ言われて嬉しくなってな。つい冒険者やってたころみたいに突っ込んじまった。」
と笑いながら言うガルフ。全く反省している気がしない。今までの冷静さを返して!いつも冷静沈着だったあの頃のガルフを返して!
「良いけど、いや良くないけど!せめて前に出るならなんか言ってからにしてよ。」
「次からは気を付けるわ。ほれ、行くぞクロ。」
そう言って3体がやられたの見て完全に包囲することをあきらめ、こちらに接近してきていたウルフに向かい笑みを浮かべながら走っていく。いやだから早いですって!慌ててガルフのカバーが出来るようにウルフに向かって突っ込む。それからはガルフが戦闘を楽しみ、そのお楽しみの最中俺はガルフが対処できない背後からの攻撃や同時に攻撃してきたウルフの片方を倒したりとガルフのサポートをしてそのまま怪我無くウルフとの戦闘が終了した。
ウルフとの戦闘後改めて急に突っ込まないでほしいと言ったが悪い悪いと笑って流されその後もガルフの魔力が少なるまで同じ状況が続きDランクの魔獣など歯牙にもかけずそのまま難なく今日の魔獣狩りが終わった。最初のおれの不安とかウルフに囲まれた時のシリアスを返してほしい。
迎えが来る場所に行くときも文句を言ったがまた適当にあしらわれてしまう。軽い言い合いのようなことをしながら集合場所へ着いたとき一気に空気が重くなる。
全ての人がガルフのように強いわけではない。その現実を目の当たりにする。軽傷者が結構な数出ており1つのグループでは悲しいことに戦闘中1人魔獣に殺されてしまったらしい。その他にも重傷者が2人出ておりその人たちは今後魔獣狩りに参加することは絶望的とのことで森から家へと戻った後に兵士に連れていかれた。おそらく処分されるだろうなとその光景を見ながら頭の中で考える。そしてそれは連れていかれる人も今後どうなるかはなんとなく予想がついていたのだろう。まだ戦える、こんな傷すぐに回復すると必死に訴えていた、結局その訴えは無視され連れていかれてしまったが。
今夜は全体的に空気が重かった。普段は和やかに会話をしながら食事を取っているが誰も雑談めいた話はしない。お互いに励ましあったり、怪我の具合を心配したり、中にはもう戦いたくない、魔獣狩りに行きたくないと死への恐怖に怯えている人もいた。そんな光景を眺めガルフがいて本当に良かったなと思うと同時にもしガルフがいなかったら今日で死んでたか生き延びても同じように恐怖で震えていただろうなというifルートを考えながら鬱屈とした空気から逃れるため少し早いが自分の寝床へと向かった。
この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。




