難易度上昇 上
皆が魔獣狩りに慣れ始めたある日、朝食を食べ、装備を身に着け、集合場所へ向かい奴隷全員が集まり切るといつも俺らを森へ連れていき迎えに来る兵士から一つのお達しが下る。
「これよりノルマの数を1日に50体とし、さらにノルマの50体のうちの30体はDランク以上の魔獣を狩り、魔石やその他の素材を持ってきてもらう。」
予想はしていたがついに来た。魔獣狩りのノルマ難易度の上昇だ。ただ数が増えるだけならまだましなのだが狩る魔獣のランク指定まで来るとは非常に厄介だ。周りの人も声に出して嫌がる人はいないが皆表情が沈んでいる。かく言う俺も森の深くまで進むことへの不安や未だ遭遇したことのない魔獣への恐怖で胸がいっぱいだ。今日はこれまでより気を引き締めなければと自分を奮い立たせる。
「クロ、今日からはこれまで以上に気を張れ。わかったな?」
いつもの優しさはどこへやら真剣な声音で俺に忠告をしてくる。ガルフのこんな声を聞くのは久しぶりだ。今までとは危険度が段違いなんだろうな。
「わかった、気を付ける。」
そうして普段よりも重い空気のなかガルフからある程度Dランクの魔物の種類や攻撃方法を教えてもらいながら森へと向かい、狩りを始める。俺は普段よりも周囲を警戒してガルフのすぐ後ろをついていく。不安感を紛らわすためか無意識のうちに腰に刺さっているナイフの柄を無意識のうちに握りながら進んでいく。いつもより緊張しながら森の奥へ進む道中Eランクの魔獣に遭遇したりもしたが難なく倒し、そのまま今まででは行かなかったであろう場所に足を踏み入れた。
「クロ、さっきも言ったが気を抜くな。ここからはDランクだけでなくCランクの魔獣が出る可能性がある。魔獣を倒すことより自分のことを優先しろ。無理だと思ったら逃げるんだ。いいな?」
「わかった。」
そう短く言葉を返し、警戒を強めながら進み続ける。
「ガサガサ、ガサガサ」木の上からだろうか葉擦れの音が聞こえる、それも複数の木からだ。
何かいる。その音を聞き明らかに風が原因のものではないと感じられた。そう感じたときにはガルフが剣を抜き戦闘態勢に入る。それを見て俺もすぐさまナイフを抜き、戦いやすいように位置を調整しながら周囲を見回す。
すると「キキッ」という鳴き声とともに猿が2体同時に木から落下し勢いそのままこちらに攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を回避し降ってきた猿の方に向き直るも上から大きな葉擦れの音が聞こえたため急いでその場を離れる。その直後もう一体の猿が先ほどまで立っていた場所に降ってくる。猿の攻撃を避けたために離れてしまったガルフも同様に2体の猿と対峙している。
動物園などでよく見るニホンザルよりガタイがよく、焦げ茶色の体毛を持つ猿は闘争心むき出しといった感じで鋭い牙をこちらに見せながらこちらを威嚇している。
この冬場でもお風呂に入らなくても大丈夫そうな猿の名前はウッデスモンキーといい、素早い動きで木に登ったり降ってきたりすることが出来る。攻撃方法は爪によるひっかきや鋭い牙を駆使した嚙みつきなどシンプルなもので一見あまり強そうな魔獣ではないがこのお猿さんは必ず4~10体ほどの小グループで動いている。そのため上からの同時攻撃や先ほどのような時間差による攻撃など大分厄介な動きをする魔獣なのだ。
今回は幸運にも4体しかいないらしくこれ以上木の上から降ってくることはなかった。
どうしたものかと相手の動きをうかがっていると2体のウッデスモンキーがこちらに接近してくる。俺は猿Aの攻撃を躱し猿Bに対しては相手が攻撃をする前にナイフを振り一度下がらせる、が先ほど攻撃してきた猿Aが続けざまに攻撃をしてくる。
回避はしたものの反応が少し遅れてしまい猿Aの爪が頬にかすってしまう。ちくりと痛みを感じるがその痛みを無視し猿Aへ反撃しようとするがそれをカバーするかのように猿Bがこちらへと攻撃をする。
攻撃をしようとしてもままならない状況が続くものの猿Aの攻撃後の隙をついて腹部に蹴りを入れることに成功する。相手はナイフに意識が行っていたため蹴りをもろに受ける。
子供の体とはいえ身体強化した蹴りは相当のダメージが入るはずだ。
すると猿A、Bは子供相手に手痛い反撃を喰らったからか一度手慣れた動きで木の上に登っていく。息を整えながらどこから来るか警戒し周囲を見る。数秒後葉が揺れる音とともに猿Aが右上から、Bが左上の方から挟み撃ちをするように攻撃を仕掛ける。
少し前ならこの挟み撃ちに慌てふためいていたかもしれないが森に、魔獣に慣れた今なら冷静に対処できる。俺は解体用のナイフを抜き腕に魔力を注ぎAに向かって投げる。いつもよりも魔力を込め身体強化した腕で投げるナイフはプロ野球選手が投げるボール並みの速さで飛んでいきそのまま猿Aの頭に深々と突き刺さる。挟み撃ちにされる心配がなくなった俺は降ってくる猿Bに対して回し蹴りの要領で頭部に脚を叩きつける。そして動けなくなったところで首元にナイフを突き刺す。
2体の猿は地に伏し動かなくなる。戦闘が終わり一息ついているとガルフがこちらに近づいてくる。
「お疲れさん。無事に倒したみたいだな。」
「ありがとう、ガルフもお疲れ。」
「おう、にしても数が少なくて良かったな。もし数が多かったら怪我してたかもしれんな。ってお前頬っぺから血出てるぞ、大丈夫か?」
頬を手で拭うと真っ赤な血が手についていた。想像以上に血が出ててびっくりしました。
「大丈夫、このくらいかすり傷だから。」
「そうか、だが後で水で洗っとけよ?こういうとき回復魔法が使えたら便利なんだが自然に治るの待つしかないな。」
「回復魔法?」
「あぁ、光属性の魔法だな。その名の通りに傷を治してくれる魔法だ。昔知り合いに回復魔法が得意な奴がいてそういう手合いの傷をすぐ治すんだよ。火の魔法が嫌ってわけじゃないがあれはさすがに羨ましいと思ったわ。」
これはいい情報を聞いた。光属性ってただ光を生み出したりする魔法だけじゃなくて回復魔法もあるのか。今すぐ練習したいけどどのくらい魔力がもってかれるか分からないから危険だな。ぐぬぬ
俺とガルフは死体から魔石等を回収し奥へ進んでいく。初戦闘は相手の数が少なかったため何とかなったが今後どうなるかはわからないしまだ今日の魔獣狩りは始まったばかりだ。
油断しているとあっさり死ぬなんてことにもなるし気を引き締めていかなきゃ。
この作品を見つけそして読んでくれた方に最大の感謝を。




