第97話 引継ぎ
「いやいやいや!
シノブさん!
何で俺と一緒に湯舟に浸かっているんですか!!」
「ケイガ兄様は既にこの聖王国の大切な要人。
暗殺の可能性も無いとは言い切れません。
そしてお風呂は人に取って最も無防備になってしまう場所。
我等、姫騎士団が兄様と一緒に入って警護するのは必然でしょう。
ですがツツジはトラブルで撤退することになってしまいました。
そこで私がツツジの引継ぎをして、
今此処に兄様と御一緒にお風呂に入っているという訳です」
「…え、ええ!
ツツジもそう言ってましたね!
警護の為…その物言いとしては筋が通っている様に見えますね!
ですけどね!
ツツジもタオルを身体に巻いていたんですよ!
何で素っ裸で俺の隣で湯舟に浸かっているんですかあ!!」
「何を言っているのですかケイガ兄様?
湯舟に浸かる際にタオルを付けるのは礼儀に反するのでは?」
シノブさんは小首を傾げてきょとんとした表情で俺に問いかけた。
前々から怪しいと思っていたけど!
このひと!
肝心な所が抜けているうううう!!
も、もしかして…漫画やアニメで言う所の、ポンコツ美人さんなのおおっ!?
俺は内心悶えながらシノブさんへ言葉を返した。
「…ああそうですね!
混浴じゃ無ければですけどね!
いや、根本的に問題はそこじゃないんですよ!
シノブさん!
俺が”男”であることを全然わかっていないじゃないですかあ!
大体何で女性である姫騎士団が、
男である俺と普通に風呂に入っているんですかっ!
あげくあなたに関しては、一糸纏わぬ姿ですよ!!
…俺がさっき、シノブさんが優羽花を寝室に送り届ける前に言った、
あなたに話したかった事ってコレなんです!
シノブさん!
あなたは俺が”男”であることを全然全くこれっぽっちも理解して無いんですよおお!!」
「しかしケイガ兄様。
姫様や公爵様から見れば、私たち姫騎士団などは取るに足らない存在でしょう。
路傍の石の如く見捨てて下されば問題ないと思いますが?」
「いやいやいやいや!
シノブさん何を言っているんですかあ!
あなたも姫騎士団のみんなも美人、美少女揃いなんですよ!
そんなみんなが俺なんかと一緒にお風呂に入っちゃダメでしょう!
俺はいちおう健康的なカラダの男なんですよ!
そんな俺が見れ麗しい女性と混浴しようものなら!
心身共に全然落ち着きませんからっ!!」
「…そんな。
それではまるで私如きのカラダでケイガ兄様が、
劣情を催しているみたいではないですか?
ケイガ兄様ともあろう御方がそんなことはあり得ないのでは?」
シノブさんはそう言うとその両手を胸の上に添えて、
その美しい肢体を俺の方へと向けた。
うああああ!
何してるのおおおお!
このポンコツ美人女騎士さあんん!!
こっちにカラダを向けないでええええ!!




