第91話 攻防の末
「…あ…あっ…お兄…」
優羽花の健康的な背中に添えられたハンドタオルを握った俺の手が動くたび、彼女の気持ち良さげな声が漏れる。
愛しい妹が喜んでくれたのなら兄として感無量である。
そして優羽花のその反応に、愛しい妹をもっと喜ばせたい…と言う兄心がみなぎってくる。
俺の手にも更なる熱意が入るというものだ。
「ははっ、どうだ優羽花? 兄さんの背中磨きはなかなかのものだろ?」
「テ、背中磨きって!?
お兄…何か言い方やらしいわよ!
まるでスケベ親父キャラみたいじゃないの!?
…ああっ!?」
俺は手の動きを更に早くした。
優羽花の肌に這わせたその手の緩急の間隔を早めていく。
「…お、お兄…ちょっ…やっ…やあ…あ…」
「優羽花…気持ち良いか?」
俺は表情を赤らめて悶える優羽花のその耳に囁き掛けるように問いかけた。
「…き、気持ち良くない!
お兄の手なんか…気持ち良くないんだからね!」
優羽花は強い気勢で声を張り上げて俺の囁きを跳ね退けた。
この強情さは流石は優羽花といったところである。
…ならば俺もそんな彼女に答えて”本気”を出すしか無いだろう。
「そっか…それだったらもっとペースを上げても問題ないよな?
もっと速く動くぞ優羽花!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待ってお兄!」
俺は手の動きを更に速めた。
力強さと優しさを織り交ぜた、緩急の動きが高速で繰り出されて、優羽花の身体を捉えて離さない。
「…ああっ! お兄いっ!!」
俺の動きに堪らず声を上げる優羽花。
その表情が更に赤く染まっていく。
「ははっ、まだまだだぞ優羽花。
それじゃあこのペースで優羽花の気持ち良い所を集中的に攻めて見ようか?」
「…ああん! お兄い! そこはぁ! だめえ!」
「優羽花…」
「…だめっ…それ以上はだめえ…だめなんだからあ…」
「優羽花、ダメじゃないからな…大丈夫だ、俺に全てを預けろ」
「あん! ああ! ああん!
そんな…そんなのぉ……ダ、ダメ…ぜったいにダメなんだからあ…。
…あたしは…あたしは!
お兄なんかに!
気持ち良くならないんだからあー!
こ、このおっーー!!」
優羽花は突然俺の方向に振り向いて俺の手の動きを停めようとする。
こ、こら! 急にそんなことしたら!
優羽花は無理な態勢でバランスを崩して椅子から落下した。
そのショックで腰に巻いていたタオルも外れて床に落ちる。
俺の目の前には、愛しい妹の何ひとつ隠されていない生まれたままの姿が広がった。




