第87話 ちょっとだけ意地悪を
「…あっ…あっ…」
ツツジのか細い背中に添えられた俺の手が動くたび、彼女の気持ち良さげな声が漏れる。
愛しい妹が喜んでくれたのなら、俺は兄として何よりなのである。
俺は手の力をちょっとだけ力を強くした。
「…あ……あ……ああ…。
…ふ……ふぅ……ふぅん…」
ツツジは口を手で抑えて声が漏れないようにし始めた。
もしかして気持ち良くなった声を俺に聞かれるのが恥ずかしいのだろうか?
「…ツツジ?
気持ち良いなら別に声を出しても良いんだぞ?
俺は気にしないからさ?」
「…で、でも…兄様…。
私は…姫騎士団の『暗器騎士』…。
常に感情を殺し、気配を消すことが必要です…。
だから、ツツジは…声を出しちゃ…ダメなんです…」
「はははっ、戦闘中は確かにそうだろうけど、今はツツジと俺と二人だけなんだぞ?
別に声ぐらい出してもいいんじゃないか?」
「…で、でも…兄様…。
…わた…私は……ふぅう……んんぅ…」
ツツジは両手で口を抑えて我慢をしている。
常に姫騎士団の団員としての振る舞いを重んじる彼女。
その使命感の強さに俺は感心した。
でも俺は同時に、兄である俺の前ではもう少し気を緩めても…と思った。
まあ其処はまだまだ頼りない兄という事なのだろう。
もっと精進して妹が心置きなく出来るような頼れる兄に成らないとなあ。
…俺はツツジの背中に這わせていた手の動きを、力強さと優しさを織り交ぜて、緩急を付けた動きに変えた。
「…はぁ…はっ…ああ……あに…さま…」
「どうだツツジ、気持ち良いかい?」
「…駄目、兄様…ツツジの声が漏れちゃう……だから…それ以上は…ダメ…」
「大丈夫だよ…ツツジの恥ずかしい声…俺はちゃんと聞くからさ…」
「…い、いやぁ…兄様…聞いちゃダメ……はぁう…」
ツツジはそのか細い印象とは裏腹にその意思は強く、なかなか強情なのである。
俺はそんな彼女に対して、ちょっとだけ意地悪をしたくなってしまった。
彼女の白い肌に這わせたその手の緩急の動きを早める。
「…ツツジ…」
「…はふぅ…駄目ぇ……ツツジの声が…漏れちゃう…。
兄様に聞かれちゃう……ダメ…私…恥ずかしい…はぁん…」
「いいよ…ツツジ、いまは我慢しなくていいんだ。
ここの居るのは俺だけだからさ…。
だから、声上げても良いんだよ…」
「あっ…ああっ……ああああっ…!?
あにさまあああーー!
ダメええええええーーーー!!」
俺の動きに我慢出来なくなって漏れ出たツツジの声が浴場に響き渡った。
お読み頂きありがとうございました。
良ろしければ
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