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第86話 今度は兄が尽くす番

「…兄様…。どうでしたか…? 気持ち良かったですか…?」


「…あ、ああ…凄く良かった…ツツジの背中磨き(テクニック)は最高だよ…」


「…良かった…」


 ツツジは頬を赤らめてはにかみながらも、嬉しそうに笑った。

 長い前髪から覗く綺麗な瞳が歓喜の眼差しに輝いている。


 …くっ、可愛すぎる。


 しかし、ここまで妹に尽くされたままでは兄としては申し訳が立たないだろう。

 そして兄である俺がこんな無様な姿を見せたままでは面目が立たないのだ。

 挽回のチャンスを与えて欲しいのである。

 …今度は俺が妹に尽くす番なのだ!


「なあツツジ、それじゃあ今度は俺が背中を洗ってあげるよ」


「…えっ、兄様…。でも、悪いです…」


「いいからいいから。さっ、後ろを向いて」


 俺はにっこり笑って彼女を促した。


「…わかりました兄様…。

それではどうぞお願いします…」


 ツツジは俺に背を向けてちょこんと椅子に座る。

 そして身体に巻いていたタオルを下ろし、そのか細い背中を俺に見せた。


 うああああああああ

 乙女の白い肌があああああ

 うああああああああ

 横乳いいいいいいい


 25歳童貞の俺にはその全てが眩しすぎた。

 …と言うか、他らなぬ俺が背中を洗うと言ったのだから、彼女がこういう姿になるのは至極当然なのである。

 それなのに何の気構えも出来ていなかった俺は只の大馬鹿者なのだ。

 …やはり俺はツツジ相手には心身ともに油断をし過ぎだろう。


 …このままではいけない。

 俺は心身を改めて、精神を集中させた。

 そして『地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・四の型、瞑想めいそう』を行使する。

 この技は、本来は心を静め、一切の雑念を無くし、高めた気を傷口に集中させて回復を図る技である。

 しかし俺はこの異世界エゾン・レイギスに来てからというもの、この技を行うに至っての”心を静め一切の雑念を無くす”という所を特に重宝している。

 つまりこの『瞑想』の技を行うことによって、女の子に対する雑念を静めるのである。

 今回の技の行使の目的はもちろん、ツツジへのやましい感情に対してである。

 …よし、高ぶった心が落ち着いて来たぞ。

 そして大きく心呼吸をする。

 もう大丈夫だ、問題ない。

 俺はハンドタオルを手に取るとツツジのか細い背中に()わせた。


「…あっ…兄様…」


 俺の動きに声を漏らすツツジ。

 俺はかまわず彼女の背中を優しく(こす)る。

 子供の頃の優羽花(ゆうか)静里菜(せりな)の背中をよく流していた俺は、女の子の背中の流し方もある程度は心得ているつもりだ。

お読み頂きありがとうございました。

良ろしければ

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