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第83話 銭湯開始!

 俺はまず湯舟から(おけ)にお湯を汲んでかけ湯として全身を洗い流した。

 次は下半身を洗う。

 俺の分身は今日は色々と大変だったと思う。

 よく洗って労ってやらなければなるまい。

 俺は蛇口の上にある棚に合った石鹸を手に取った。

 日本の銭湯の仕組みがある文明レベルならば、当然石鹸も在るということであろう。

 その石鹸で手で擦り合わせて泡立てると自身の下半身を満遍(まんべん)なく洗った。

 下半身をすっきりさせた俺は浴槽に向かうと、その内にたっぷりと(たたえ)えらたお湯に全身を浸からせた。


「ふう…風呂は命の洗濯とは、誰が言ったか知らないが上手く言ったものだよなあ…」


 15分ぐらいは入っていただろうか。

 俺はのぼせない程度に身体を良い感じでふやけさせて浴槽から上がった。

 洗い場に戻った俺は蛇口からお湯と水を出して桶に汲んで丁度良い感じのお湯を作る。

 その桶に洗い用のタオルを浸からせた。

 そしてタオルに石鹸をこすり着けると全身を磨き始めた。

 首、肩、腕、胸、腹、腰、足と上から順に洗っていく。

 最後は背中である。

 タオルを伸ばして背中に這わせて両手で斜めに持って上下に動かして磨く。

 背中が自分では洗いにくいのは常である。

 誰かにいつも洗って貰えれば最高なのだが、俺は王様でも何でも無いので一生敵わないだろう。

 だが俺は日本の銭湯に心を許してしまい、その敵わない願いを思わず口に出してしまった。


「ああ…誰か俺の背中を洗ってくれないかなあ…?」


「…兄様…どう…? 気持ち良い…?」


「ああー、そうそう、そこだよそこ…その天使の羽の箇所って言うのかな?

そこが一番届きにくくて気持ち良いんだよなあ…

ってちょっと待ってえ!?」


 俺は驚いて後ろを振り向くとそこには、姫騎士団(プリンセスナイツ)の団員の一人であるメカクレ美少女、ツツジがハンドタオルを手に持って立っていた。

 いつもの鎧姿でなく素肌にバスタオルを一枚だけ身体に巻いた姿で…うわあ眩し過ぎる!


「…ツ、ツツジ! どうしてここにぃ!?」


 俺は日本式の銭湯に完全に油断して切っていたのである。

 故に完全に不意を突かれた感じになり、内心の動揺をそのままの言葉でツツジに問いかけてしまう。

 しかし俺はツツジの気配を全く感じることが出来なかった。

 彼女は気配を隠すことに優れているのかも知れない。


「…ツツジは兄様の警護に来ました…。

お風呂は人間に取って最も無防備になってしまう場所です…。

兄様は既にこの聖王国の大切なご要人です…。

暗殺の可能性も無いとは言い切れません…。

そこで姫騎士団である私が兄様と一緒にお風呂に入る様にとシノブ団長に言われました…」


 シ、シノブさあんっ!

 俺がポーラ姫の猛攻に危なかったあの時、あなたこう言いましたよね?


 『…申し訳ありませんケイガ兄様。私としたことが兄様が”男性”であられることをすっかり失念しておりました。

 これからはなるべくこうならない様に、姫様にはそれとなくおっしゃっておきます故、どうかご容赦下さい』


 それでこの有様ですか!?

 ポーラ姫じゃ無いなら何の問題もないという訳では無いんですよ!

 姫騎士団の団員は皆、見目麗(みめうるわ)しい美女、美少女揃いなんですよ!

 そんな彼女がタオル一枚羽織っただけの姿で、童貞歴に25年の俺と一緒にお風呂とか…おかしいですよ! シノブさん!


 俺は心の中で絶叫した。

お読み頂きありがとうございました。

良ろしければ

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