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第62話 お疲れ様。

ガチャンと音と立て、謁見の間の扉が閉じて、姫騎士団プリンセスナイツと彼女たちに連行されていく3人の足音が遠くなっていく。


「ふう…」


「はぁ…」


足音が居なくなったのを見届けたポーラ姫とミリィの二人は玉座に深く腰掛けると大きく息を吐いた。

大仕事が一段落して安堵の様相といった感じである。


…それにしても、俺は二人の王族としての振る舞いに圧倒された。

この国の重役であろう、大の大人三人に対して一歩も引かず、いや圧倒して見せたのである。

何という胆力たんりょくであろうか。

元の世界ではかつて会社員だった俺だが、果たして彼女達の様に振る舞えるかと言えばそれはとても難しいだろう。

俺は彼女たちと出会ってから幾ばくの時しか過ごしていない。

そんな俺が知る限りは、二人はお姫様で、博識な女の子で、護るべき大切な妹たちだった。

だが、この王城での二人は今迄のイメージからは想像も付かなかった、政争にその身を投じるとても強い女性だったのだ。


しかし流石に疲れたのだろう、その様子からはあからさまに疲労が感じられる。

俺は二人を気遣うべく、労いの言葉をかけた。


「ポーラ姫、ミリィ、本当にお疲れ様。二人とも凄いよ、正直、俺は圧倒された」


「ふふっ、兄君様あにぎみさまからいたわりの言葉を貰えるなんて嬉しいなあ…。

ボクも頑張った甲斐があるってものだよ…」


「お兄様、御慰みのお言葉、ありがとうございます…」


「ボクとしては、あの三人がユウカとケイガ兄君様あにぎみさまについてが文句を付けて来るのは間違いないと予想はしていた。

そこを反撃のしどころにして、彼等を屈辱にまみれさせてその怒りを誘い、冷静さを奪わせることも考えて、その道筋通りに事が運んで良かった。

幾つか考えていた策の中に彼等が上手く乗ってくれて本当に良かったよ。

でもボクは今日にいたるまでは王城内の争いには不干渉のスタンスだったし、そもそも自身は学者肌だと思っている。

政争は性に合わないんだよ、だから内心は冷や汗ものだったよ…。

その点ではやっぱりポーラは凄いよね。

ボクよりも全然肝が据わっていたよ。

その王の代理としての振る舞いは常に堂々たるものだった。

第一王位継承者の殿下としてずっと矢面に立ち続けていたのは伊達では無いってことだね」


「そんなことはありませんわミリィお姉様。

わたくしも、もういっぱいいっぱいですの…。

はあ…わたくしは自らが王に成るというよりは、やはり頼れる殿方の妻になって、その心身を支えるほうが性分に合っていると思いますわ。

…ねえ? お兄様?」


「…えっ?」


お姫様、何で熱いまなざしを向けながら俺に問いかけたんです…?



「あっ…はあ、はあ、…ポーラ、ちょっとくたくたですの…」


「ポーラ!? 大丈夫か?」


俺は王座の上でふらっとして、背もたれに深くその身を沈めたポーラに駆け寄って、心配の余りその手を握った。

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