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第61話 見苦しい足掻き

「ゴルザベス殿、バイアン殿、クリスト殿、もう逃げられません。我々に大人しく従ってもらいましょうか」


 姫騎士団プリンセスナイツのシノブ団長は3人に向けて静かに言葉を述べると、その手に犯罪者用の捕縛用の縄を握った。その縄には魔力封じの刻印が刻まれている。


「私はこの国の貴族派閥の筆頭にて大臣のゴルザベスなのだッ!

そんな高貴な血の私が!

その様な下賤な者を縛り付ける縄にくくられるなど有ってならんのだあッー!!」


 ゴルザベスは立ち上がると手をかざした。


ファイアボ…ぐがあッ!?」


 火球攻撃魔法を放とうとしたゴルザベス大臣に姫騎士団員のイチョウが凄まじい速さで突進、そのまま彼を地面に押さえつけてその喉元に剣を突き付けた。


「がああ…陛下のおままごとの騎士風情がこんなに速くッ!?」


「ふふふ…別にそのまま攻撃魔法を撃ってもよろしいのですよ?

”所詮は見てくれだけの女風情”ですから、その首から剣先を外してしまうかも知れませんわ」


「…貴様アッ!!」



「ぐ…うう…」


 謁見の間の床に背を付けられて悔恨の声を上げるゴルザベスの隣では、教会長のクリストが姫騎士団でいつも先駆けを務めるカエデにその首を喉輪のどわされて、動きを完全に封じられていた。


「教会のお爺さんー、何か嫌な魔法を使いそうな”感じ”がしたので”先に動いて”止めさせて貰いましたー」


(そ、そんなァ…我が教会の秘儀中の秘儀である極小声詠唱魔法を”勘”で察知したじゃとォ…)



「あわわ…こ、このままでは…」


 他の二人は攻撃魔法で抵抗しようとして瞬く間に制圧されてしまった。

 残された商会長のバイアンは思考する、二人は愚かにも攻撃するから駄目だったのだ。

 …ここは逃げに徹するべき!


脚駆素アシクス!」


 バイアンは脚力の強化の魔法を自身に掛けると高速で駆けて窓へと向かう、このまま窓を蹴り破って外へ。

 だが魔法で脚力を強化されている筈のバイアンに姫騎士団員のシダレは瞬く間に追いつくと足払いをかけた。

 そのまますっ転んで顔から地面に墜落するバイアン。


「商人のおじさん! 往生際が悪いよ!」


「ぐああ…魔法で俊足になった私にあっさり追い付くなんて…何という脚の速さ…」


 ゴルザベス、バイアン、クリストの三人は魔法が使える。

 エゾン・レイギスの一般人の大人の魔力数値は5、彼等はその数倍はあってこの世界では強いほうの人間に当たる。

 だが姫騎士団を結成したポーラニア殿下は魔力数値190というこの世界で屈指の魔力数値を持つ正真正銘の『聖王女』である。

 そんな彼女が選んだ姫騎士団員が、この三人程度の魔力の人間に負ける訳は無い。



「はあ、まったく、最後まで見苦しいんだね…」


「ゴルザベス、バイアン、クリスト。

わたくしポーラニアの名に於いて、あなた達をクロカワ一行に協力した重犯罪者として此処に逮捕します!

姫騎士団プリンセスナイツ! この者達を地下牢に連行なさい!」


「「「はっ、陛下!」」」


 三人は姫騎士団に捕縛されて謁見の間から連れ出されて行った。

お読み頂きありがとうございました。

良ろしければ

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