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562話 本気になれば

「早速行くのかディラム?」


会議が終わった俺はディラムと話している。

此処はホウリシア王城のバルコニー。

空は日が傾いて来て、まもなく夕日が近い。


「我は今回の会議の魔族側の代表。

我が主、ガルヴァーヴ様。

そしてガイファード様、アポクリファル様にも

今回の会議で決まった事柄を早急に報告する必要がある」


「しかしお前さんには

こう何度も地上と魔界を行き来させてしまって、

すまないと思っている。

今回も苦労を掛けてしまうなあ」


「今、地上と魔界を自在に行き来できるのは我のみ。

ガルヴァーヴ様の副官として、魔族の代表として、これは当然の義務。

全く気にするなことはないぞケイガよ」


「まあ何というか…

俺はお前さんの力を頼りにしている。

我が儘を言って済まないが、

なるべく早く戻ってきてくれると有難い」


「心得た」


ディラムはそう答えると

漆黒のマントを翻し宙に飛び上がった。

そして高速飛行魔法の光を纏う。

俺は瞬く間に空の彼方へ消えていく彼を見送った。


ディラムは俺たちにとっては、

今や外すことのできない強力な戦力である。

彼が居るかいないかでは戦術は大きく変わってくる。

いや…戦略すら影響するかもしれない。

それ程にディラムは強いのだ。

仮に五軍将クラスの高位魔族と戦うことになった場合、

勝つためにはディラムとの連携は不可欠と言ってもいい。


故に…仮に今、

強力な敵が現れると正直キツイものがある。

先ほど俺がディラムに言ったことは何の謙遜もない事実なのだ。


この地上へは強い魔力を持った高位魔族が入れない様に

精霊が作り出した結界が貼られている。

しかし実際は、

高位魔族である彼等が何度も、

”搦め手”で地上に現れていることを

俺は身をもって体験している。


結界の隙間を抜けられる中位以下の魔族を

合成して造り上げた仮初の肉体に、

自身の精神体が乗り移ることで強引に地上に顕現した…

魔族の長、大魔王。


元精霊ゆえに、

そもそも結界の効果がない魔精将リリンシア。


自身を細分化して結界の隙間を抜けられるまで

魔力を減少させた魔言将イルーラ。


そして俺たちと同盟しているガルヴァーヴ、

アポクリファルも召喚魔法、ホムンクルスの身体といった

各々の方法を用いて地上に現れている。


つまり高位魔族が本気になれば…

精霊の結界はどうとでもなるのである。

魔族封じの強力な聖なる陣が

都市区画そのものに組み込まれている

このホウリシア城でさえ、

高位魔族が攻め込んで来ないという確証は

全く無いと言う事だ。



俺は今後戦うことになる高位魔族について思考する。

存在が確実に解っている相手は3人。

まずは魔族の長、大魔王。

そして大魔王直属の五軍将の残り2人、

魔界魔精将リリンシアと魔言将イルーラ。


大魔王は配下の魔族を一切の情もなく使い捨てる凶悪振り、

底知れぬ強大な強さと容赦のない戦い方。

出来ることなら二度と戦いたくはない相手。


魔界魔精将リリンシア、

とにかく俺に取っては苦手な性格の女で…

こちらも出来ることなら会いたくはない相手である。


そして、魔言将イルーラ。

彼女とは短いながらも交流し

優しい彼女の性格に俺は良い印象を抱いている。

ディラム曰くイルーラは大魔王の忠実な僕であり代言。

故にその好印象も高位魔族の巧みな偽装でしかないと。

しかし、一度頭を冷やして考えてみると、

俺にはやはりイルーラが悪い奴だとは思えないのだ。

…べ、別にイルーラの魔性のおっぱいに篭絡されているとか

そういうことは全然無いんだからね!

大体おっぱいを押し付けられて動揺しない男なんている訳ないだろう!

そもそも俺は26歳童貞だぞ!

だから俺は悪くない!


まあとにかく…

可能であれば、俺は、

イルーラと戦う前に

もう一度会って、話したいと思っている。

本当に彼女は俺の敵なのか?

どうしても戦わななければ行けないのか?

そして、俺の妹のひとりであるヴィシルは

元々彼女の配下でもあるのだ。


出来ればイルーラとの戦いは回避したい。

これが俺のまごうことなき本心である。


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