560話 大魔王討伐作戦概要
エクスラント聖王国と反大魔王派魔族の会議が始まった。
会議の主題は共通の敵である大魔王の討伐である。
魔族側の出席者は魔竜将の副官である魔騎士ディラムのみだが
彼は先日に魔界に戻り、
魔界五軍将の魔竜将、魔騎士将、魔導将から意思を聞いており、
議会での代言を与えられている。
つまりディラムの耳への言葉は三人の魔将への言葉と同意義であり、
ディラムが口にする言葉は三人の魔将の言葉と同意義ということなのである。
聖王国のトップであるポーラ姫、ミリィ、
聖王国の戦力を纏めているシノブさん、
そして最前線で戦ってきた俺も交えて、
聖王国と魔族側の互いの戦力をどう展開していくか、
議論が重ねられた。
以下、決定した大魔王討伐作戦の大まかな概要を
復習を兼ねてノートに書き出すことにする。
よし、あとで優羽花にも見せてやろう。
地上の人間界から地下の魔界に入るには、
エクスラント聖王国の国境を越えた先にあるエゾンリア大陸中央、
通称『中央域』を通るしかない。
ここには遥か昔、空より落ちて来た”精霊の星”が突き刺さっている。
この星の中こそが地上と地下を繋ぐ唯一の道。
俺たちの目的は、
中央域を抜け、魔界に入り、
魔界の奥底で眠りに付いている大魔王を復活前に討つこと。
大魔王。
500年前の大戦では地上のほとんどを焼き尽くし、
当時の人間のほとんどを殺したという恐るべき存在。
その絶大な力の一端は俺が身を持って味わっている。
大魔王とは強大な闇の力を持つ存在。
いや…あの感じは無限と言っても過言でも無いのかも知れない。
俺はそれ程に底知れぬ力を感じたのである。
闇属性に対して特効のある属性は光属性のみ。
しかし光属性は希少、絶対数が少ない。
更に強い光の力を持つ者など皆無と言ってもいい。
故に強い光の戦闘力を持つ光の勇者のみが唯一、
大魔王を倒せるというのが
この世界エゾン・レイギスの云われである。
実際に俺は優羽花と大魔王の戦いを見て、
確信に至っている。
つまり俺たちは、
光の勇者である優羽花を消耗させることなく、
大魔王の元へと送らなければならない。
優羽花が大魔王と戦う前に
他の高位魔族や魔族軍とぶつかって疲弊してしまえば
大魔王に勝つことは難しくなるだろう。
光の勇者と言っても所詮は人間、その体力は有限なのだ。
よって、大魔王を倒すには光の勇者の援護は不可欠。
その為には俺たち人間側と魔竜将たち魔族側との戦力の
息の合った連携が求められるということである。




