559話 支配者の立ち振る舞い
ディラムの見方を改めざると得ない…
そう思考していた俺に強い目線が向けられることに気付く。
視線の先を見れば、
我が愛しい妹、優羽花が目の座った”ジト目”で俺を見つめていた。
「ポーラさんに慕われて良かったねえ、お兄。
デレデレしちゃって、いやらし、いやらし。
…ま、別にあたしは何も気にしちゃいないんだからね!」
いやいやいや!
全然デレデレしていないんですけど!
俺は隣の魔族の騎士に対して考えていたからだけだからね。
全然いやらしくないよ?
というかここでいきなりツンデレですか!?
ここで優羽花のツンデレまで発動!
ああーもう滅茶苦茶だよー。
その時、会議室の壁に掛けられた柱時計がボーンボーンと鳴り響いた。
「皆様、時間です。
それでは会議を始めましょう。
姫様どうぞ」
ポーラ姫の左隣に座ったいたシノブさんが伏せていた顔を上げて、
静かかつも、はっきりした口調で言葉を紡いだ。
「ええ、シノブ。
よろしいですわ。
ディラム殿、
このポーラ、聖王国の代表として
あなたがた魔族型と記念すべき対話ができることを栄誉と感じますわ」
「いいえポーラ姫君、
我こそ貴女のような素晴らしい人の長と
会見まみえたことを終身の誉と思います」
先ほどとは全くうって変わった物言いに立ち振る舞いのポーラ姫。
まさに聖王国の長たる姿である。
何という切り替えっぷり。
流石は人の上に立つ王族という事か。
つまりディラムの言った
”ワザとこの様な立ち振る舞いをして場を和ませる”
というのはあながち間違いではないという事…なのか?
俺はいわゆる”支配者”という人種についてはそう詳しくはない。
せいぜい昔、師匠に付いて妖退治をしていた時に
何度か”やんごとなきお方”の姿を見る機会があっただけである。
あの方は常に表情を崩さない感じだったからなあ。
俺はポーラ姫を見つめながら
支配者についての思案を巡らせていると
彼女は俺の視線に気づいたのかちらりと俺に視線を向けると
頬を赤らめて軽くウィンクをした。
うあああああああ可愛いいい!!
はあはあ…今のは危なかった。
完全に油断していた。
あやうく死ぬところだった。
美少女巨乳金髪お姫様が
支配者の立ち振る舞い振りを俺に見せ付けた矢先に、
俺にだけ解るようにこっそりウィンクするとか…
何というギャップ差か!
26歳童貞である俺が耐えられる訳ないだろううああああああおんん!!
し、しかし彼女はこの異世界エゾン・レイギスにおくる俺の妹でもあるのだ。
兄が、妹に心奪われるとか、
性的な目で見るとか、
そういうことはあってならんのだ!
兄としての矜持、やらせはせん、やらせはせんぞおお!
俺は歯を食いしばって平常を装ってポーラ姫に抵抗した。




