537話 年長妹としての
「なら優羽花よ?
俺の最初の妹とすなわち、
年長妹として…
新米の妹たちに心の余裕を持ってなあ、
色々と譲るということは無いのか?」
気円斬撃で攻撃を止められて、
その場に停止させられた我が妹に俺は問い掛けた。
「そんなのある訳無いでしょ!
あたし大人じゃないもん!
大体…
この世界でのお兄の新妹の大半は、
あたしより年上じゃないのよ!!」
「うおッ!?
…た確かに」
「お兄!
今日という今日は、
言いたいこと全部言わせて貰うんだからね!
覚悟しなさいよ!」
優羽花は星剣を構えながら叫んだ。
…あれ?
いつの間にか俺と我がツンデレ妹の
二人対決になっているんですが??
ディラムはどうした?
俺は周囲を見渡し気配を探ってディラムを探す。
すると姫騎士団の稽古場から
大分離れた場所に立っている尖塔のてっぺんに
漆黒の鎧に身を包んだ魔族の騎士の姿を見とめた。
…えっ、
いつの間にあんな遠いところに!?
ナンデ?
俺の目線に気付いたディラムが口を開いた。
「ケイガよ、
妹君は貴様に何か言いたげと我は見た。
我は邪魔であろうから此処で待機しておこう。
兄妹ふたり、気が済むまで語り合うといい」
ええっーディラムサン!?
気を利かせすぎですよ!
そういうのは要らないですから!!
「それじゃあいくわよお兄!」
「うおおおおお!?」
ディラムの利かせすぎる気配ばせで
光の勇者、優羽花と一体一の戦いになってしまった俺。
だが勇者の特性は相手の力に合わせて自身の力も上がるもの。
ディラムが戦いから抜けた以上、
俺の単体の戦闘力数値よりは強い程度にまで
優羽花の魔力数値が落ちたはずである。
見通しの眼鏡に映し出された
優羽花の魔力数値は3600。
確かに強い数値だが、
これぐらいの数値ならば俺一人でも何とか対応出来る。
「やああああー!」
優羽花の繰り出す音速の剣舞をいなしながら、
俺は我が妹が随分と強くなったことを感じていた。
この異世界エゾン・レイギスに初めて飛ばされた頃は、
彼女は怯えていたものである。
俺は元の世界・日本でも、
地ノ宮流の気士として妖退治をしていたから
戦い自体には慣れていた。
だが優羽花は
そういった荒事には無縁の
普通の女子高生だったのだから、
当然と言えば当然であろう。
それが今やこんなにも戦う事に慣れて…
立派な戦士、
いや勇者になったものだなあと
俺はしみじみと思った。




