531話 納得できるまで
「…どうだ優羽花?
俺とディラムに引っ張られて
お前の魔力数値は俺たち以上の値にまでに上昇した。
光の勇者が相手の強さに応じてさらに強くなることは、
これで明確に立証されただろう?
優羽花の不安もこれで解消されたと思うんだが?
だから、これでもう終わりにしないか…?」
俺は優羽花個人としては
これ以上組手稽古の必要は無いと判断し、
中止を提案した。
べ、別に…
実際に戦ってみたら
優羽花が予想以上に強過ぎて、
このままだと俺達の身が持たないとか…
そんなことは全然思ってはいないんだからね!
「うーん…
でもまだちょっと不安かなあ…?」
「ファッ?」
「あたしと戦い続けると、お兄たちは強くなるんだよね?
そして強くなったお兄たちに合わせてあたしも強くなるって。
だから、あたしがもうちょっと強くなって、
納得できる感じになるまで…
お兄たちの修業に付き合ってもいいよ?」
「お、おう…」
ええっー!?
あれだけ強いにも関わらず、
まだ不安で納得する強さでも無いのですか優羽花サンッ!?
しかしその様に仕向ける話をしたのも他らなぬ俺なのだ。
これは止む無しといった所であろう。
兄としては、愛する妹が気が済むまで付き合うことは当然であるのだから。
「…ディラム。
済まないが、もう少しこのまま修業に付き合ってくれるか?」
「構わないぞケイガ。
貴様の妹共々、
このまま地獄まで付き合おうでは無いか?」
「地獄か…
よしそれなら、とことん覚悟を決めるか!
はあああっ!」
俺は再度気と魔力を全開にした。
「…おにいちゃん?
ヒカリもしゅぎょうにさんかしたほうがいい?」
俺と魔力の契約をしている光の精霊ヒカリが、
ふいに俺の隣に姿を現して問いかけて来た。
「ああっー!
ヒカリちゃんだー!!」
優羽花は歓喜の声を上げると、
笑顔を浮かべながらヒカリのほうへとにじりよって来た。
お前が生粋の可愛い物好きだってことは知っているけど…
ちょっとその行動は不審過ぎやしませんか我が妹よ!?
「…ああ、
ヒカリが修業に加わるって言うのは
以前の大魔王との戦いの時と同じように
俺の分身となってくれるってことだよなあ?」
「んー」
髪の先から肌、
着ている服まで真っ白な姿の幼い少女は
こくりと頷いた。
「だったら今回は参加しなくて良いからな。
ヒカリはこのまま待機していてくれ」
「んー。
りょうかい、おにいちゃん」
何しろ…ヒカリが俺の分身体に成ったら、
俺達三人の総合戦闘力数値は9000、
対して優羽花の魔力数値は一万に近くなってしまうだろう。
つまり俺達と優羽花の力の差が更に大きく開いてしまう…。
それは絶対に避けなくてはならない!
そうしなければ…俺達の身がまず持たないからである。




