529話 最善の修業方法
「あのう…
お兄…?
優しくは言ってはいるけど…
様はお兄たち男二人で、
あたしにケンカを仕掛けるってことなんじゃ…?」
「ケンカって…
人聞きが悪いぞ優羽花。
これは組手稽古って言ってなあ。
効果的に強くなる為の修業方法であって…」
「そういう事は聞いちゃいない!
お兄が何だか優しい感じで言うから、
もっとこう…
穏便な方法で、
あたしの不安が解消されると思ったのよ!
それなのに…
あたしとお兄たちとでケンカって!?
もの凄く乱暴ごとじゃないのよ!!」
「乱暴ごとってお前…
じゃあ聞くけどなあ優羽花?
この異世界エゾン・レイギスに来てからというもの、
俺たちはずっと戦い…
すなわち乱暴ごとばかりだっただろう?
このセカイは俺達が元居た日本とは違う。
常に戦いに溢れた、
死が隣り合わせの危険なセカイなんだ。
そんなセカイでお前の言う不安を払拭する何て方法は、
自分自身が相手よりも強くなるしかないんじゃないのか?
そして短期間で強くなる為に穏便な方法なんて存在しない。
乱暴ごと、すなわち戦い合うことでしか有り得ないんだぞ!」
「な、何よう!
まるで逆ギレじゃないのよ!
男二人で、か弱い女の子ひとりにケンカなんて…
恥ずかしいとか思わないの!」
「ああ…それは大丈夫だ、優羽花」
「何がよ!」
「さっき俺が言った通りだよ、
光の勇者である優羽花は相手の強さに合わせて自分も強くなる。
俺とディラム、二人合わせて戦闘力数値6000。
優羽花はそれ以上に強くなる、
魔力数値6000以上は確実だ。
それは…か弱い女の子とはとても言い難い存在だぞ?
そしてどちらかと言えば俺たちのほうが危険だな。
大魔王の時を思い出すに、
優羽花に俺達は逆に追い詰められる事になるんじゃ無いかな?」
「だがそれも止む無しと言う事だなケイガ?」
「そうだ、俺たちには時間が余り無い。
次に魔竜将と再会した時…戦いを断る術は無いだろう。
その時迄に少なくとも、俺は今の倍は強くならなければならない。
そして優羽花も心積もりが必要だ。
その全てを短い時間でこなす為にも、
優羽花と俺とディラムで組手稽古は最善の修業方法という事だ。
そういう訳だから…いくぞ優羽花!」
俺は魔力と気を全開放した。
「光の勇者ユウカよ、魔騎士ディラム…参る!」
続いてディラムも全魔力を解放した。
「ちょっ…
ふたりともいきなり…
きゃっ…何の光っ!?」
俺達の全力解放に呼応するかのように、
優羽花の光の魔力が増大した。
我が妹は凄まじい勢いの光の柱に包まれた。




